BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

世のダメなSEO指南に喝!/書評『SEOブランディング』

著者はSEOコンサルタント。SEOの本質的な価値やSEOによる企業ブランディングの重要性について持論を展開する。
ブックレビュー

BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

『SEOブランディング』

評者:山川 健(ジャーナリスト)

真のSEOはユーザーに有益な情報を提供すること
ブランドイメージ定着が結果的にSEO強化につながる

SEOブランディング
  • 影浦 誠士 著
  • ISBN:978-4-344-99660-1
  • 定価:1,300円+税
  • 幻冬舎メディアコンサルティング

たとえばこんなイメージか。ターミナル駅前の一等地にある食堂。店の雰囲気、出される料理の味、サービスの質、どれも他店並み。家賃の高さを反映して代金は高め。絶賛されるメニューは特にない。メリットは場所だけ。一度は食べに行っても二度は立ち寄らない。客の意識がこんな状態だと客足は伸びず、遅かれ早かれ閉店――。食べ物店は立地条件が重要とはいえ、この失敗は誰もが当たり前だと感じるはずだ。しかしWebサイトの話となると違ってくる。良い場所=検索エンジンでの上位表示さえ確保すればアクセスが多数あり、購買、資料請求、会員登録につながってリピーターも次々、と思い込みがち。今のSEO(検索エンジン最適化)を取り巻く現状は、この食堂のケースそのものだといえる。

著者はまず「あたかも短期間で手軽に検索結果の上位表示を達成できるかのような謳い文句を喧伝(けんでん)し、検索順位を故意に変動させようとするスパム行為にも平気で手を染める」とSEO会社を糾弾し「書店を回れば、SEOの小手先のテクニックに終始した書籍がズラリと棚を飾る」と嘆く。そして「SEOのいかさま情報に振り回されるな」と訴え、小手先のSEOテクニックを「ウェブ担当者の一時的な遊びに近い探究であり、自己満足の域を脱することができない場合が多い」とバッサリ。著者はSEOコンサルタント。SEO関連ビジネスを、祭りの見世物小屋の出し物と同様な詐欺的な行為だと批判し、SEOの本質的な価値やSEOによる企業ブランディングの重要性について持論を展開する。

今さら言うまでもないが、SEOは手段であって目的ではない。ところが、目的はSEOによる上位表示、と勘違いしているとしか思えないサイトも少なくないのが実情。内容があまりに希薄だったり、外部リンクを得ることだけを狙ったりしたサイトだ。著者が指摘するように書籍やネットにSEO関連情報があふれ、SEOの必要性をこれでもかこれでもかとアピールされれば、何はともあれSEOを優先させなければ、と強迫観念にも似た感情を植え付けられてしまうのも無理はない。冷静に考えれば、明らかに本末転倒であることに気づくはずなのだが。

SEOとは何なのか。検索エンジン最適化、と訳されるように、ユーザーはもちろん検索エンジンにも好まれるWebサイトを構築すること。テクニックを駆使して検索エンジンの上位表示を獲得することではない。著者は言う。「長期的なスパンでコンテンツを充実させ、少しずつ表示順位を上げていったウェブサイトは非常に盤石(ばんじゃく)で、検索サイトのアルゴリズムが多少変化しようともびくともしないことが多い」。コツコツと良質なコンテンツを積み上げ、ユーザーにとって有益な情報を提供し続けるサイトは検索エンジンに評価され、ランキングアップにつながる。「検索エンジンとユーザーにわかりやすいコンテンツづくり」。これが著者の考える真のSEOだ。

本書では、Webサイトはインターネット上の企業そのもの、とのスタンスで、企業サイトは事業戦略から導き出した明確な目的が必要、と説く。目的に沿ってタイトルを決定し、上位表示させたいターゲットキーワードを縦軸にすることがサイト設計のポイント。ニッチな分野でオンリーワンを目指し、このテーマならこのサイト、というブランドイメージを定着させるようコンテンツを整備することでブランドが確立し、結果的にSEO強化につながる、と強調する。そして、顧客と企業との長期間の信頼関係がブランドであり、SEOは検索エンジンと企業との長期の信頼に基づいた上位表示の実現、と締めくくる。

わかりやすく再度食堂の例に置き換えてみると、居心地の良い雰囲気を作り、日々味を研究しつつ丁寧な接客を心掛ければ、立地条件を最優先しなくても自然に常連客が付いて評判になり、ビジネスは成功する。SEOというキーワードに踊らされて策におぼれることなく、しっかりとした目的を持って地道にコンテンツ作りに励むことが何よりも大切、と改めて思い知らされる1冊。特に最近は、不自然なSEOに対する検索エンジン側のペナルティも取り沙汰されている。メッキはいずれはがれるもの、と心に刻んでおく必要がある。

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