企業ホームページ運営の心得
地図から学べる客心理。グーグルマップで本当にいいのか

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百十参

西口と東口で口論

先日、我が社の専務と口論となりました。漫画「三ノ宮純二」の打ち合わせ場所についてです。JR武蔵野線 南浦和駅そばの喫茶店でしたので「東浦和」にあるクライアントに立ち寄り、そこから向かうので「こちら側」というと専務は「向こう側」と譲りません。議論が平行線を辿るときはボタンの掛け違いが多くスタートに戻ることが大切です。喫茶店のホームページにある地図を見ます。結論は私の負け、ごめんなさいとともこのコラムのネタが見つかったことに感謝します。

私が「地図」を大切にするのはチラシを制作していた会社員時代に遡ります。ある店のチラシの地図を作り直したところ、初めて訪れたというお客さんがこういいました。「今までどこにあるかわからなかった」。以前の地図は正確な道路の本数が描かれており、私の作った地図は道路を何本も削っています。後述しますがこれがポイントです。

上が北でなければならない理由は

喫茶店の地図には、東口、東浦和の表示がないので、地図の上=北だと思い込んでいると喫茶店は東浦和側にあることになる。

待ち合わせ場所は南浦和駅西口を出てすぐにある「珈琲専門喫茶店 待以夢(たいむ)」。ホームページにあった地図は垂直方向にJR線の表記があり、南となる「東京」が上で、下方向を指す矢印が示すのは北の「大宮」です。「西口」とも記されているのですが、地図上のお約束である「上方向が北」と勝手に判断して“あちら”と“こちら”を間違えていたのです。

今は亡き営業の師匠を思い出します。彼に地図を書かせると必ず東京方面が上になりました。東京から見て北側に位置する埼玉県越谷市に生まれ育った彼にとっては東京都へ向かうことは「上京」であり、なんとなく「上」に描いてしまうといいます。さらに自宅周辺の地図を書かせてみると最寄り駅の「大袋駅」を上にします。「ロードマップ」としては間違いですが、師匠にとっての正しい地図です。

中間点が浦和だった

不案内な場所を知るために地図があります。日本では時代と目的により様々な地図が使われていましたが、ざんぎり頭の明治以降、西洋流の「北が上」で統一されました。しかし、店舗案内用の地図なら必ずしも「北が上」でなくてもよく、東京が上、最寄り駅が上でもよいのです。学校の地図のテストではありませんし、答えを出すのは「お客さん」です。

今回の「待ち合わせ場所」の話は、目的により地図の定義は1つではないというケーススタディの1つです。漫画家の牧岡ちかひで先生と担当編集者は城西方面(都心から見て西側)を活動拠点としており私は城北エリアの北限です。そこで互いの中間地点を「駅前探検クラブ」でチェックすると「武蔵野線」を利用するルートが見つかりました。「距離」ではありません。「移動時間」で双方の中間点を探してみると「南浦和」だったのです。

正確な地図を再現できない不正確さ

互いの出発点から待ち合わせ場所までを「グーグルマップ」で表すと東京北西部の広大なエリアを表示させなければなりません。しかし、南浦和の「待以夢」までの案内ならば東京の外周を走る「武蔵野線」を軸に乗換駅を添えれば完成です。店舗案内地図は不用な情報を削除するのがポイントです。バイパス沿いのロードサイド店なら細かな市道や農道を削除します。逆に「徒歩圏」ならば矢印で「○○大通りはこちら」と位置だけわかれば十分です。

詳細な地図を描くことが必ずしも親切ではありません。はじめに述べた、会社員時代に作った、迷子になっていたお客さんが辿り着いた地図は道路を何本も削っています。削除されずに残った「道」が「道順」となり導きました。グーグルマップのような「正確」な地図は様々なルートを見つけることができます。しかし道順を選ぶのが苦手な人もいます。「麺硬め、脂多めで辛みちょい入れのネギともやしをトッピング」と好みを注文できるラーメン屋で初めて注文するシーンを想像してみてください。あまりの選択肢の多さに「普通のラーメン」と尻込みする日本人は多いのではないでしょうか。

改めてグーグルマップの是非を問う

2年前にも「地図」について書きました。時を経てグーグルマップを店舗案内地図にするホームページがさらに増加しました。利用自体を否定も肯定もしませんがこう問います。「お客さんを見ていますか?」。「待以夢」のお客さんは駅を利用する地元の常連さんで、私の師匠のように東京が上にあるほうがピンと来るのかもしれません。ならばそれが正解ですし、北が上にないと迷子になるという客を相手にするならそちらが正解です。

SaaSについて「所有から利用へ」と喧伝されています。カーシェアリング、レンタルブック、レンタルブティックと所有するより利用するという形態は時流かもしれません。社会問題となった「派遣労働」は企業側から見た労働力のそれです。「グーグルマップ」も同じ系譜でしょうか。20世紀の地図ソフトは高価で「所有」できなかったことを思い出します。

地図とはなんだったのか

店舗案内地図は「社員教育」にも使えます。スタッフが「近所」を知らないことは珍しくありません。それは彼ら彼女らにとって店舗とは勤務地で通勤路だからです。可能な限り少ない労力で移動したいと考え、遠回りしてまで道草を食う人は希です。そこでこう問います。

「あなたたちがお金を貰いに来る道を、お客さんはお金を払いに来るのです。そのお客様がどこから来ても案内できますか?」

客は駅や幹線道路から来るとは限りません。「近くまで来ている」という客からの電話に近所を知らずにどうやって案内するのでしょうか。地図に神経を払うことで「客の気持ち」を少しだけ知ることができます。

地図だけで劇的に売り上げが伸びることはありません。しかし、地図とはお客様に差しだす「案内状」の1つです。グーグルマップだけでいいのでしょうか。紙媒体と違いネットには「無制限」に情報を掲載できます。ならば「両論併記」という選択肢だってあります。

地図とは誰のためにあるのか、誰にとっての便利なのか。哲学論争ではなくリアルなビジネスの話です。

♪今回のポイント

利用者により「世界観」は異なるもの。

不用な道路を削ると道順になる。

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