初代編集長ブログ―安田英久

リンク購入でも何でも結果が出せればSEOってアリなの?

SEOmozの「有料リンクだとみなされることなくリンクを手に入れる8つの方法」の記事はヤバいのか?
Web担のなかの人

今日は、久しぶりにSEOのネタを。「ホワイトハットSEOとブラックハットSEO」という考え方がありますが、ビジネス目的のサイトでSEOをするときに、根底にもっておくべき思想や、越えてはいけない一線とはどんなものなのでしょうか?

SEOmozが掲載した「あれ?」という記事

イメージ画像:リンク購入

長らく翻訳記事を提供していて、そのコンテンツの方針を信頼しているSEOmozで、先週「有料リンクだとみなされることなくリンクを手に入れる8つの方法」という記事がありました。

内容は、SEOの記事としては比較的ふつうのもので、イベントのスポンサーになったり、コンテンツを買収したり、ブロガーを育てたりすると、リンクを増やすルートを作れるよね、というものでした。

この記事の背景にあるのは、以下のような流れ。

  • 検索エンジンが順位を決定する仕組みのなかで、ページに対して張られたリンクの数が考慮されていて、それなりに重要である。
  • だから、SEOを考える人は、なんとかして被リンク数を増やしたい
  • しかし、グーグルをはじめとする検索エンジンは、有料リンクやペイパーポストによるリンクは、適切な検索結果を乱すネガティブ要因だとみなし、取り締まる動きがある
  • リンクを獲得して順位が上がっても、その手法がNGでペナルティを受けると結果は悪くなってしまう
  • 検索エンジンがNGだとみなさない手法でリンクを獲得する方法はどれだろう?

個人的には、SEOmozの記事を見た最初の印象は「うわっ、この記事ヤバいんじゃないか?」でした。というのも、あまりにもタイトルがあからさまだったからです。

でも、この記事は思ったよりもブラックハットではなかったので、最終的には掲載することにしました。

解説されている内容は検索エンジンの順位のためだけに行うものではなかったからです。

そのアクションはSEO以外で意味があるのか? の問い

私のなかでは、SEOの定義とは、こういったものです。

SEOとは、検索エンジンを通じて発生する自社のメリットを最大化することにより、事業の全体的なパフォーマンスを向上ためのアクションである。

SEOを行う主目的はあくまでもビジネスメリットの向上であり、検索順位の向上でもなければ、検索エンジンからのトラフィックの向上でもないのです(もちろん、その実現の段階では個別の方法論は必要になりますが)。

これが意味することは、たとえ順位を向上させてトラフィックを獲得して売り上げが上がる手法があっても、それが他のビジネス領域を悪影響があったり、(特にステークホルダーに伝わる形で)悪評を呼んだり、他者の権利を侵害したりしていて、結果としてビジネス全体に対してネガティブ影響があるのならば適切でないということです。

となると、たとえばアクセスカウンターなどのブログパーツに隠しリンクを混ぜ込む手法や、他人のブログなどからコンテンツを収集してきてそのつぎはぎでブログ記事を自動生成するスパムブログなどは、とるべき手法ではないことになります。

しかし、SEOmozの記事で書かれていた手法は、検索エンジンの規約の隙をぬってリンクを増やす方法ではありません。イベントのスポンサーになるのも、サイトやコンテンツを買収するのも、ブロガーを組織するのも、どれもビジネスを拡大するための手法です。SEOmozは、そこに付随的に発生する「リンクも増えるよね」に着目して、「ばれずにリンク買う方法」という見せ方で記事にしているだけなのです。

私はSEOで「この手法ってOKかな?」という疑問が出たら、「SEOを考慮しないとしたら、このアクションを実行するかどうか」を考えることにしています。その原則でみると、SEOmozの記事はOKなんですよね。

先日、グーグルのマット・カッツのチームで表に出て発言する役割の1人であるアダム・ラズニック氏を取材させてもらったのですが、そこで改めて見えてきた「検索エンジンのなかの人の考え方」がありました。

というのも、検索エンジンにとっては、有料リンクをどうするとかブラックハットSEOをどう取り締まるとかいうことは重要ではないのです。

彼らにとって大切なのは、全体が進もうとしている「いかに検索ユーザーにとって有益な検索結果を出すか」であって、NG手法の取り締まりは、それを実現するための個別の方法論でしかないのです。

だから、すでにネットで繰り返し言われていることではありますが、SEOも主に「自社の0顧客にとって有益な状態を作り出す」ことを主目的に行うのが筋なんですよね。その原則を忘れて「被リンク数」「キーワード」といった方法論に夢中になると、気づかずNG手法を取り入れてしまう可能性が増えるのではないでしょうか。

ちなみに、アダムによると、「サイトを買う」「コンテンツを買う」という手法も、「コンテンツのテーマ性に関連があれば問題なし」ということでした。

◇◇◇

少し話題は違いますが、少し前に障害者団体の定期刊行物のための郵便割引制度を悪用してダイレクトメールを発送していた広告代理店の取締役が逮捕された事件がありました。

これは対象が法律だったから逮捕に至りましたが、本質的に同じような状況はネットでは多々見受けられるのではないでしょうか。一見すると仕組みをうまく利用しているビジネスに見えるものでも、割引郵便の事件と同様の構造になっているものも……。

さて、あなたがいま行っているSEOの手法や、SEO事業者さんがもってきた提案書を考えてみてください。

短期的には順位を上げる効果はあるものの、近い将来にあなたの会社に悪評をもたらす可能性のあるものはないでしょうか? 明日からSEOを考える必要がなくなったとしても自社のメリットのために役立つ施策となっているでしょうか?

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト 上に再掲したものです。

用語集
SEO / SEOスパム / アクセスカウンタ / ステークホルダー / リンク / 倫理 / 広告代理店 / 検索エンジン / 被リンク
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