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人間の不条理な心理や行動をWebマーケに応用する10の方法(後編)

前後編の後編。前編に続いて、あなたも「なるほど」と納得する心理学とWebマーケの融合を紹介する。

この記事は2回に分けてお届けしている。前回に引き続き、人間の不条理な行動とWebマーケティングへの応用についてお伝えする。

6:先延ばしの問題と自己管理

アリエリー氏は自分のクラスで実験を行った。同氏は学生たちに3つの論文を書くように指示し、第1のグループに対しては、各論文の提出期日を自分で決めさせた。提出期日に遅れた論文には、1日あたり1%のペナルティが課せられる。期日よりも早く提出した論文にはペナルティはない。この場合、3つの論文提出日を授業の最終日に設定するのが合理的な反応だ。

第2のグループには締切日を設けなかった。3つの論文はすべて授業の最終日までに提出すればいい。

第3のグループは各論文を4週目、8週目、12週目に提出するよう指示された。

この結果はどうなっただろう? 第3のグループ(各論文の締切日が指定されていた)の成績が最も良かった。第2のグループ(締切日が指定されていない)の成績が最も低く、第1のグループ(自分で締切日を設定した)はその中間だった。学生たちに締切日をあらかじめ設定させておくと、成績の向上につながった。おのおのの締め切り日に間隔をあけた学生が良い成績を残し、合理的に考えて締切日を最終日に設定した学生と、締め切りがなかった学生は、成績が良くなかった。

「この結果が示しているのは、たいていの人が課題を先延ばしにするという問題を抱えているものの、自分の弱点をはっきり認識していれば、早めに対処するために利用できる手段は生かそうとする姿勢をとるので、その弱点を克服しやすいという事実だ」

Webマーケティングに応用できる教訓
  • やるべきことを先延ばしにするのは、人間にとってごく一般的な行動だ。ビジネスではこの点を考慮し、役に立つところでは活用しよう(たとえば、有料サービスにつながる体験版の提供など)。
  • 早めに手を打って、人々にこの弱点を認識させることで、その悪影響を減らすことができる。これは、請負業者、従業員、ベンダーなどに対して適用できる。

7:自分のものは高く評価する

「授かり効果」(endowment effect)とは、自分が所有しているものは、他人よりも高く評価するようになるということだ。

アリエリー氏とカーモン氏はデューク大学の学生たちを対象に実験を行った。学生たちはバスケットボールのチケットを手に入れるために数週間外で泊まり込む。泊まり込みで並んでも最後にはくじ引きになるので、チケットを獲得できる学生とできない学生に分かれた。

チケットを入手できなかった学生は、チケットを買えるなら最高170ドルまでなら払ってもいいとアリエリー氏に話した。チケットを手に入れた学生は、チケットを売るなら2400ドルより安く売る気はないと言った。

人間の本性には奇妙な根本的傾向が3つ見られる。われわれは、すでに持っているものを熱愛する。そして、手に入れる可能性のあるものよりも、失うかもしれないもののほうを重く見る。さらに、他人も自分と同じ視点から取引を見るものと思いこむ。

Webマーケティングに応用できる教訓
  • 無料提供をしようという勧めとは逆に、製品やサービスを「ただ」で手に入れたユーザーは、それを得るために労力を費やしたり、自腹を切って購入したりした人よりも、価値を低く見ることに留意しよう。
  • 新たな顧客を呼びこむよりも、既存の顧客からより多くの支払いを引き出す方が簡単だ(このマーケティング上の知恵は常に言われてきたものだが、こういった人間心理を考えれば、一層ぴたりとあてはまる)。

8:ドアを常に開けておく

紀元前210年、項羽は秦朝に対抗する軍を率いていた。兵士たちが寝ている間に、項羽は自軍の船を燃やし、料理鍋をつぶした。そして兵士たちに、勝利するまで戦い抜くか死ぬかしかないと説いた。項羽の部隊は立て続けに9つの戦いに勝利した。選択肢が奪われたことによって、部隊の集中力が高まったのだ。

多額の費用がかかったり、合理性を欠く場合でさえ、われわれは選択肢を残しておかずにはいられない。

Webマーケティングに応用できる教訓
  • 顧客が選択できる幅を狭めること。そうすれば成約の可能性はより高くなる。
  • ナビゲーションオプションを最も重要で望ましい行動だけに限定する。これは直感に反するように感じるかもしれないが、ユーザーにクリックさせたいなら、経路を制限することで、実際にユーザーとのやりとり(ページビュー、売上など)を増やせる可能性がある。

9:思い込みの効果

アリエリー氏、リー氏、フレデリック氏は、MITの学生を対象にもう1つ実験をしている。彼らは学生らに2種類のビールを味見させた上で、無料で1杯飲めるのでどちらかを選ぶようにと指示した。ビールAはバドワイザーで、ビールBはバドワイザーに1オンスあたり2滴のバルサミコ酢を加えたものだった。

学生たちは、ビールに何が入っているかについて知らされなければ、圧倒的多数がバルサミコ酢入りのビールを選んだ。ビールに入っているものを知らされると、圧倒的多数がただのバドワイザーのほうを選んだ。前もって変な味がするかもしれないと伝えれば、人々がそのとおりだと感じてしまう可能性は高い。思い込みが作用するからだ。

人々は自分以外の物や人に対する先入観によって反応が左右されるだけでなく、自分自身に関する先入観にも影響を受ける。シー氏、ピティンスキー氏、アンバディ氏は、アジア系米国人の女性を対象に実験を行った。最初のグループは自分たちの性別に関する質問に答え、その後計算のテストを受けた。2つ目のグループは自分たちの人種に関する質問に答えてから計算のテストを受けた。

※Web担編注 女性=計算に弱い、アジア系=計算に強い、との固定観念があるとのこと。

最初のグループ(性別を想起した)よりも2番目のグループ(人種を想起した)の方が計算のテストでよい成績を残した。「先入観を持たせずに」事実を提示する(事実を提示するが、どういう人たちがどういう行動を取ったかは明らかにしない)ことが、人々が真実をよりよく理解するのに役立つ可能性がある。

Webマーケティングに応用できる教訓
  • 思い込みを利用しよう。製品やサービスの販売において、その価値や楽しさに対する認識を高めることができれば、市場がそれに追随し、実際に価値や楽しさが高まることがある。
  • ブランド構築は、価値を創出する際に心強い味方となる。すばらしいものだと思われるようにブランドを位置づけよう。そうすれば、ユーザーは手に入れようとする。

10:価格の力

アリエリー氏、ウェイバー氏、シブ氏、カーモン氏は「Veladone-Rx」(VR)という偽の鎮痛剤を作った。そして、ビジネススーツを着た魅力的な女性が(かすかにロシア語のアクセントがある話し方で)被験者に対して、VRを服用した患者の92%は10分以内に痛みが大幅に緩和し、その効果が最大8時間まで持続したと話していると説明した。

この薬の価格は1回の服用分が2.50ドルだと告げられた被験者は、ほぼ全員が痛みが軽減したと答えた。1回服用分が0.10ドルだと言われた被験者の場合、痛みが軽減したと報告したのは半数だけだった。感じている痛みが強いほど、効果は顕著に示された。アイオワ大学で行われた同じような調査では、風邪薬を定価で購入した学生は、安売りの(だが臨床効果は同じ)薬を購入した学生よりも、より高い医学的効果を報告している。

Webマーケティングに応用できる教訓
  • 価格が高ければ、期待も大きいことを意味するが、満足度も高くなる。その製品の品質が実際には高くない場合でさえもだ! さあ、コンサルティング料を引き上げよう。
  • プラシーボ効果は強力だ。悪用はいけないが、自分が何かを購入したり資金を投じる場合に賢くなるために、それから、競合する製品やサービス、企業と比較する場合に役立つ価値あるツールとして、この知識を活用しよう。

こんどは、君たちの番だ。この概説記事の全文(英語)を読んで、オンラインマーケティングに応用できるすばらしいアドバイスや情報がないか探してほしい。僕はざっと上っ面を紹介しただけなので、この記事からはもっとたくさんの貴重な教えが見つかると思う。

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