企業ホームページ運営の心得
最新情報で稼がない矜持。春の新色を追いかけるな

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百七

千疋屋とみのり屋のメロン

メロンの画像

同じ商品が違う値段で売られていることは珍しくありません。スーパーと自販機のジュースの値段を並べるまでもないでしょう。しかし、3倍違うとしたらどうでしょうか? 高級果物店の代名詞といえる銀座「千疋屋」と、東武伊勢崎線竹ノ塚駅前で義父が営む「みのり屋」とのメロンの価格差です。前者が高価です。「土地代」などの違いもありますが、千疋屋が築き上げてきた「ブランド」の果実で暴利だという批判は的外れです。一方の義父が儲かっていないわけではありません。この答えは最後に。

土俵によって戦い方は異なります。そして「最新情報」を必要としない土俵は「青い海」です。

ネコを追いかけ帰ってこない日雇い労働者

専門用語は専門家が用いる「符丁」で、業界で異なります。際立った個性や持ち味を「特色」といいますが、印刷業界ではCMYKのプロセスインキ4色では再現できない「色の指定」を指します。「セル」はアニメファンなら動画、パチンコ店ならゴト師を連想することでしょう。

ある建築現場で、親方に指示を受けた日雇い労働者が行方不明になりました。夕方になり戻ってきて憔悴した顔でこういいました。「ネコが捕まえられません」。建築現場で「ネコ」とは一輪車のことで、親方は「ネコ(一輪車)を持ってこい」と指示したのです。

道を外した人の専門用語だった「ヤバイ」のように、巷で認知されれば一般用語です。最近、IT関係では「ブログ」ではなく「CMS」と呼ぶことが増えてきました。ところが私の周辺で訪ねてみると「CMS」を知っていた一般人(非IT系)は皆無。当然認知されていなければ使うのはヤバイので、今でも「ブログ」で通しています。

新語の増えるメカニズム

SaaS、PaaS、HaaS、ICT、NGN、LPO、クラウドコンピューティング……。実体があるものからパッケージを変えて「新装開店」したものまで、IT業界では新語が次々と生まれては消えていきます。「水玉模様」を「ドット柄」とリニューアルしたアパレル業界のように、新語で新味をだすのはマーケティングの常套手段ですが、ローリスク・ハイリターンな構造が「新語」の粗製濫造の背景にあります。

「これからはこれが流行る」という予言のご神体として「新語」を用意します。ご託宣が当たれば「トレンドリーダー」となり、メディアや企業からお声がかかりハイリターンが約束されます。Web 2.0をネタにスマッシュヒットを飛ばしたコンサルが「勉強会」を開いている新聞社があると聞きます。「これからは仮想空間だ」という予言の「責任の所在」の曖昧さを思い出せば、そのリスクの低さはとても魅力的です。

もちろん「新語」は「専門用語」の範疇です。来春には大多数が消えていることが多く、アパレル業界の「春の新色」と重なります。

35歳定年説を越えて

歳を重ねると柔軟な発想ができなくなり、次々に生まれる新技術について行けなくなるというのが「35歳定年説」で、平成元年当時からいわれていました。平成も21年となり思うことは2点。「人それぞれ」と「進化の変化」ということです。

能力は個人差ですから一律に線を引くのは暴論です。そして「進化の変化」とは「新しいものが必ず正しい」とは限らなくなったことです。テクノロジーは昨日より今日、そして明日と一方向に進化し、それは必ず良い結果をもたらすと信じられていました。ところが、枯れた技術といわれる一昨日の技術を組み合わせることで「新しい」が生まれるようになりました。逆に最新の発明でも使われずに埋もれていくものは数知れません。「Ajax」や「ブログ」などが前者で、後者が「セカンドライフ」です。最新にアジャストすることが至上命題だったのは前世紀の話になったと感慨に浸ります。

最新情報や技術を否定するものではありませんが、それがすべてではないということで、春の新色をチェックしても、買い揃えるのは少し待った方がいいと20年を振り返り思うのです。

客で実験をする傲慢

最新情報に首をひねりはじめたのは次の事実を知ってからのことでした。

「自分たちは取り組んでいない」

眞鍋かをりさんがブログの女王と呼ばれる前の話です。ITコンサルタントがセミナーでブログを「これからのホームページには必須」と推奨していました。コンサルのサイトをチェックすると、ブログどころから「日記型掲示板」すらありません。最近の例ではブログ(もちろんCMSも含めて)設置を謳う制作業者のサイトにブログがないこともあります。出稿語句からキャッチコピーまで考えてくれる、オーバーチュアの検索連動型広告の有料サービス「アシストプラン」に丸投げするITコンサルタントも実在します。

私はこう考えます。金を生む「最新情報」なら、まず自分の会社に導入するのが経営ではないかと。ブログ、SNS、Wiki、SEO、検索連動型広告、SaaS、UGM、CGM。「最新」を薦める人にはその人自身の実例を問うてみることをオススメします。

キュウリを売るブルーオーシャン戦略

弊社のお客さんは焼き肉屋、メガネ屋、物流業者にヤスリ屋さんなど、さまざまです。「最新」は適宜投入していますが、細かな説明をすることは希です。「ネットは任せた」という信頼を得ていれば「最新情報」を逐一説明する必要がないからです。

義父の店の儲けのツボは「キュウリ」や「小松菜」といった日常に欠かせないもので、滅多に売れない桐箱に入ったメロンではありません。そして私もキュウリ……もとい、商売上の「欠かせない」サポートに重きを置いており、これはなかなかの美味です。

「最新情報」の金脈はニートから専門家までのガリンペイロ(採掘家)が集まり血みどろの争いが繰り広げられる「レッドオーシャン」です。一方、キュウリを売るという切り口の「IT業」にライバルは少なく、じっくりと取り組めることが「顧客サイト」の成功確率を上げてくれます。これが弊社の青い海=ブルーオーシャン戦略です。

最新情報を説いて「悦」に浸るのをやめてから義父の(街角の)商売の強さを知りました。

♪今回のポイント

自社の客はIT業界なのか否か。

ダサイ世界のほうがノンビリと稼げる。

※お知らせ

以前からコラムをお読みいただいている方はご存知かもしれませんが、通販事業者向け情報サイトの「通販支援ブログ」にて、新たに連載を始めることになりました。

今回は、誰も語らない現場の経営論、ビジネス書やコンサルタントが教えてくれない「本当」を「社長の裏マニュアル」として、「経営」に軸足を置いて連載でお伝えする予定です。初回は「世襲」についてお伝えしています。

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