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ソーシャルメディアがネットの質を下げてるってホント?

検索エンジンに嫌われるため

「オンラインコンテンツの質がどんどん下がっている」という不満を最近よく耳にする。特にソーシャルメディアやソーシャルニュースサイトの関連で。

ただし、私は必ずしもこの意見に賛成ではない。1999年にはコンテンツがそんなに魅力的だっただろうか? 私に思い出せる限り、LOLcatやRickroll、MySpaceなどが登場するずっと前は、ハムスターのダンスやダンシング・ベイビー、それから、GeoCitiesのページなんかがあった。たしかに、今はオンライン人口も10年前に比べると何百万人も何千万人も多いし、コンテンツのページ数も驚くほど増えている。でも私から見ると、コンテンツの種類や質はそれほど変わっていない。今でも、一方にニュース記事、リサーチペーパーや有用な情報があるかと思えば、他方にはポルノやミーム、フォトショップで加工した画像など各種のナンセンスなネタがあるのだから。

ではなぜ、それほど多くの人が、現在インターネットに蔓延している、おもしろみのなさそうなコンテンツを軽蔑し、過去に思い焦がれるのだろうか?

理由の1つは、いつの世も変わらない懐旧の情だろう。過ぎし日のことはいつだってすばらしく思えるものだ。誰もかれも、今の時代が常に最低で、10年前はすばらしかったと思うようだ。90年代に子供だった人は、「今の漫画はつまらない! 『Tiny Toon Adventures』と『Animaniacs』は最高だったよ」と言うだろうし、80年代に子供だった人は、もちろん意見が違っていて、「SMURF」と「He-Man」が最高だと反論するはず。モータウンサウンドが最高だと言う人もいれば、ディスコミュージックが良いという人もいる。でも、どちらの世代でも意見が一致するのは、「今の音楽はあの頃とはすっかり変わっちまった」という点。

もう1つの理由は、悪の元凶らしきものを名指しで非難しておけば話が簡単になるから。誰もがソーシャルメディアを槍玉に上げたがっているように見えるが、確かに、DiggやRedditのようなサイトを開いてトップページを見てみると、本物の「みんなに知ってもらう価値がある」投稿に交じって、おバカな写真や無意味なトップ10のリストが載ってたりすることがよくある。インターネット通気取りの人たちにとって、何かにつけて人気を集めるこういったコンテンツは、嘲笑しながら「こんな物のせいで、インターネットコンテンツがつまらなくなったんだ」と言って、批判の矛先を向けるのに恰好の的なんだ。

とはいえ、考えれば考えるほど思うのだが、ソーシャルメディアサイトとはすなわちピープルズ・チョイス賞のインターネット版なんだ。

ピープルズ・チョイス賞っていうのをご存じなければ、それはいいことだ。あんなものは最低だからね(おかげで、私はオンラインコンテンツの質に不満を抱いている人たちの気持ちがよくわかるんだけど)。この賞は、映画批評家や映画業界の組合員、あるいはちゃんとした専門家の投票で決めるんじゃなくて、何百万人というごく普通の米国人が、自分の好き嫌いに基づいて投票した結果を反映するものだ。だから、毎年質の高い映画や番組が山とあるのに、ピープルズ・チョイス賞の受賞作品が幅を利かせて、大衆受けする作品になることがよくあるってわけだ。

1つ例を挙げてみよう。2007年には優れた映画作品がいくつか封切られた。

  • 「The Lives of Others」(邦題:善き人のためのソナタ)
  • 「Away From Her」(邦題:アウェイ・フロム・ハー 君を想う)
  • 「Atonement」(邦題:つぐない)
  • 「Michael Clayton」(邦題:フィクサー)
  • 「There Will Be Blood」(邦題:ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
  • 「No Country for Old Men」(邦題:ノーカントリー)

ここに挙げた映画は、映画評論家からも絶賛されたし、いくつかの賞にノミネートされたり、実際に受賞したりもした。でも、ピープルズ・チョイス賞で2007年の1位に輝いた作品は何かというと、「Harry Potter and the Order of the Phoenix」(邦題:ハリーポッターと不死鳥の騎士団)。そう、年間を通じてすばらしい映画が何作も公開されたのに、人々は魔法使いの少年の物語の続編を年間の最高作品に選んだんだ。

オーケー、これを読んでるあなたはハリーポッターのファンかもしれないし、だったらこの例には納得できないだろう。でも大丈夫、別の例を挙げてみよう。大衆は2007年、「お気に入りのおもしろい男性スター」にロビン・ウィリアムズを選んだんだ。ロビン・ウィリアムズだよ。2007年に。1987年じゃなくて、1997年ですらなく「にせんしちねん」にもなって、米国人はロビン・ウィリアムズが最もおもしろい俳優だと考えているらしい。

これで私が何を言おうとしてるか、わかってもらえただろうか?

私はちょっとばかり映画にはうるさいので言わせてもらうけれども、ピープルズ・チョイス賞なんてマジで最低最悪の「ご冗談で賞」だ。誤解しないでね。オスカーをはじめ、数々の権威ある賞にだって、なんだかんだと賛否両論がある。だけど、そうした賞は概して、映画としての質の高さを正しく評価しているし、真に優れた俳優を認めている。にもかかわらず、ピープルズ・チョイス賞なんてものが存在していて、平均的な米国人に、その年自分の一番気に入った映画に投票させている。それに、当たり前のことだけど、米国人は誰もが映画ファンというわけではないし、映画の批評家でもない。みんながみんな、1年間に劇場で映画を80本以上見るわけじゃない。大衆は自分が見たことのあるものや、自分がよく知っているもの、そして自分が好きなものに投票する。だから、メジャーで大衆に人気のある、有名なものが選ばれることが多いし、ときにはとんでもなく愚かな(ロビン・ウィリアムズ?!)決定がなされることだってあるんだ。

これは、ソーシャルメディアサイトについても同じことが言える。種類は何でもいいけれども、ウェブ上のコンテンツについて、投稿するとか、投票する、推薦するなんていう権利を大衆に与えたら、どうなると思う? たしかに、中東で起こっている最新ニュースを知りたいっていう人もいるだろうし、オバマ氏に関心があるっていう人もいるだろう。最近の医学の進歩や、文学者の学位論文、あるいは検索エンジンの特許、経済、そのほか「質の高い」価値ある情報に興味があるっていう人も多いんじゃないかな。そしてもちろん、ニッチなソーシャルメディアやソーシャルニュースサイトも注目を集めるでしょう(Diggはテクノロジー寄りだし、BallHypeはスポーツが中心)。でも、誰でも参加できる非常に一般的なソーシャルメディアサイトに話を限れば、一般大衆が好む主流のものがたくさん浮かび上がってくるはずなんだ。気楽に見られて大笑いできる写真とか、「子供のころ好きだった思い出の面白ネタ**選」みたいなリストとかね。特に意味もなく、大忙しの日常の中で5分間だけ笑顔になったり大笑いしたりできるという以外は、なんらプラスの影響をもたらさない、くだらない“たわ言”だよね。

私はかなりの映画ファンかって? もちろん。それじゃ私は、ピープルズ・チョイス賞を見て、「米国がこれに投票したんだから、これが今作られているものを正しく表しているに違いない」なんて考えて、映画やテレビ番組の質が地に落ちた、なんて思うかな? いいえ、とんでもない。すばらしい映画やテレビ番組は存在する。そして、私のような人間なら、そうした作品を見つけて、正しく評価するのも簡単だ。それと同じように、今だってこれまでと変わらずすばらしいコンテンツはちゃんとウェブに存在するし、どこを探せばいいかがわかっていれば、それを見つけるのは容易なはず。ソーシャルメディアの上っ面だけを見てはいけない。巨大なインターネット全体には価値あるコンテンツが存在する。DiggやReddit、Facebook、あるいはMySpaceのプロフィールなどで見かけるものがすべてだなんて思わないでほしいね。

今「くだらない」ものがやたら目につくからといって、以前はそういったものが存在しなかったというわけではないし、「良い」ものが大幅に減っているというわけでもない。それがインターネットのすばらしさなんだ。そう、民衆による、民衆のための広範なリソースってわけだ。インターネットは、エリート主義者からうるさ型の人、おつむの軽い人、若年層、女性、男性、天才、リベラル派、保守派の人など、あらゆるタイプの人のためにある。そして、それこそがインターネットのあるべき姿なんだ。

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