連載居酒屋明日のモバイルほろ酔い語り
人類の歴史上もっとも成功したモバイルコンテンツとは? - shi3zの明日のモバイルほろ酔い語り
ここは、東京下町のとある居酒屋。板だけ載せた酒瓶ケースの上に、ずらりと焼鳥やもつ煮を並べ、路上で立ち飲みが基本の店だ。気さくなおかみさんが、手作りの肴を振る舞ってくれ、深夜までずっと賑わっている。
そんな気取らない店に、IT系勤務のホットなやつらが夜な夜なつどって業界の噂話に花を咲かせ、ときには激高しときには愚痴をこぼし、ときには成功を喜び合う……。店内では、聞き逃せないような最新情報、そしてモバイルの未来に関わるような貴重なアイデアが飛び交っているのだ。
今日も、おもしろそうな会話が耳に飛び込んできたようだ。
文、写真:清水亮(ユビキタスエンターテインメント)
今回は少し趣向を変えて出張先のロンドンから。国際的に活躍するイラストレーターA氏と筆者は、ひょんなことからロンドンに同行取材に来ていた。クラシカルで優美な街並みの中で、2人が思い描いたモバイルとは?
登場人物
A氏=国際的に活躍するイラストレーター兼漫画家。でも英語は苦手。今回、新作の取材のため筆者とロンドンで合流する。
ロンドンで考えた「聖書」と「マンガ」と「モバイルコンテンツ」
■持ち運べるコンテンツ=本という基本
A氏「うーん……なんでしょう?」
A氏「聖書ってあの、ホテルにある聖書ですか?」
A氏「確かに、本は持ち歩くものですからね」
A氏「なるほど。けど、ケータイのマンガって、マンガはマンガでも別物ですよね」
A氏「あれはあれで新しい表現としてはアリかもしれないけど、既存のマンガをああいう構成で見るのは書き手としてちょっと違和感がありますね」
A氏「びっくりしましたね。いまだにみんなスーパーヒーローものしか読んでない」
A氏「そうそう、出てきたのが『ウォッチマン』(笑)」
A氏「この勢いなら『アンパンマン』がバカ売れしかねない(笑)」
A氏「ああ、そういわれてみれば。それは気が付かなかったなあ」
A氏「クリプトン星ならぬベジータ星ですか(笑)」
A氏「あれはマンガというよりストーリー付きアート作品。値段も高いし。だから日本のマンガも受けてるのは理解できる気がしますね」
■マンガビジネスは今どうなっているのか
A氏「それが最近そうでもないらしいんですよ。週刊連載でも赤字のことは結構あるみたいで」
A氏「原稿料が、ページあたり1万円から2万円なんですね。それが18ページだから1か月に60〜120万円の収入です」
A氏「いやでもね、今どきのマンガなんてクオリティが高すぎてとても1人でなんて描けないですよ。画材、アシスタント代、仕事場の家賃とか賄うわけですからね。連載を掛け持ちできるくらい売れないと、儲かるところまでたどり着かない」
A氏「他の先生のアシスタントをやったりして食いつなぐんです」
A氏「手を抜くとすぐ人気に響きますからね。背景をCGにしたりといったことは行われていますが、やっぱりCGを多用すると台無しになってしまう作風もありますから……」
A氏「厳しいですね。DVDも売れなくなってきている」
A氏「多すぎるんですよ。パイは小さいのにプレイヤーは増え続ける……」
■エンタメの原点は宗教、原動力はエロ?
A氏「どういうことですか?」
A氏「いや、感じないでしょう(笑)。確かに綺麗ですが」
A氏「ミロのヴィーナスはいい女(笑)」
A氏「なるほど」
A氏「うーん。そこまではどうかな(笑)」
A氏「そうですね。意外と。物語があってね」
A氏「ああ、そうとも言えるかもしれないのは確かですね」
A氏「ええ、そうですね」
A氏「ああ、それはマンガやゲームが直面しつつある問題と似ていますね。過去のゲームでも十分おもしろいという」
■制約がマンガスタイルの進化を生み出した
A氏「そもそもマンガって、もともとは機能的制約によってああいう絵なんですよ。昔の印刷機の性能が悪くて、太くてハッキリした線で描かないと綺麗にならないっていうんで」
A氏「それからスクリーントーンが発明される。これにしても、多色刷りや濃淡が出せなかったから発明されたんです。印刷技術ありきですよ」
A氏「実際、アメコミではスクリーントーンを使っているものはほとんど見ませんよね」
A氏「うーん、それはそうかもしれない。ただ、やっぱりマンガの大家というのはマンガで十分食えてるわけだから、死ぬまでそれで食えるでしょうしやっぱり新しいことにチャレンジするというほどの動機は薄いかもしれません。たまにチャレンジも見るけど、わりと無残な結果になっている。マンガの文法から抜け出せていないんです」
A氏「それは人間の脳の構造と関係していると思います。そもそも輪郭を描いてそれをモノだと認識できるのって、人間が輪郭ベースでものを解釈しているからというだけに過ぎない。昆虫とか宇宙人とか、輪郭を認識しない生命がマンガを見ても、なんのことだかわからないはずですよ」
A氏「逆にマンガというものが日本で独自に発展してきて、かなり高度になってしまっているものもあります。たとえば頬を赤らめる表現に斜線を引いたりする。これは日本のマンガとしてはアリなんだけど、カラー全盛の海外のマンガ愛好家に見せると『なぜこの女の子は顔にこんなひどい傷があるんだ』と戸惑うわけです」
涙滴の形で汗=内心の焦り、頭部の湯気で熱=怒りを表すなど、漫画に特有な記号的表現。この表現自体は、以前からあったものの、明確な呼び方がなく、相原コージ・竹熊健太郎共著『サルでも描けるまんが教室』(略称『サルまん』)内で「漫符」という呼び方が提唱された。
A氏「『サルまん』的に言えばそういうことです。他にも、汗の記号とか、青ざめるとか、そういうものを見て伝わるかというと実はすごく難しい。ヨーロッパのコミックイベントで頭に涙滴型の汗を乗っけてる絵を見て『これはいったい何なんだ』と聞いてくることがありましたね。日本の漫画ではみんなこのアクセサリーを付けてるけど、意味がわからない、とか。ただ、そういうのもぜんぶ、やっぱり白黒印刷であの紙質の悪い状態でどこまで表現できるか挑戦していた部分はありますよね」
A氏「そう。そして新しいテクノロジーが新しい表現を可能にするんです。今我々の世代がしなければならないのは、もしかしたらコンピュータゲームやマンガ、アニメそれ自体を再発明するようなことかもしれませんよ」
A氏「マンガが生まれてそろそろ100年くらい。100年経てば新しいものが生まれてきてもおかしくない。かといって僕はCGで描くべき人とそうでない人がいると思いますが」
A氏「ペン画が上手い人が必ずしもCGが上手いわけではないんです。慣れの問題もあるでしょうけど」
■ケータイコンテンツとしてのマンガはどう進化するのか
A氏「でも画面が小さすぎますよ」
A氏「うーん、それはそうかもしれないなあ。ただ、そういう実験的な試みはコンテンツよりもまず仕組みとのマッチングだと思うんですね。たとえば絵と台詞がバシッと決まっていると、まさに『声が出ているように』見えるマンガ。いいマンガというのは、頭の中で声が響くんです。本当は聞こえないはずなのに」
A氏「そう」
A氏「そうですね。確かにケータイをいじるときって、リラックスしているときが多いですね」
A氏「テクノロジーが生活を変えるわけですね」
A氏「個体として未熟な人間が群体となることで進化するというやつですか」
A氏「そろそろまとめますか」
A氏「結局、遠大なんだか低俗なんだかわからない話ですね(笑)」
※写真はイメージです。
その四! モバイル業界人なら、モバイルコンテンツという視点でマンガを見直すべし!
※今回はありません。


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