企業ホームページ運営の心得

アウェイ突撃記念(笑)。リアルネットワークの話し

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の九十

ネットの恩恵を受けたからこそ

おもしろそうだと熟考することなく飛びついてしまう悪弊があります。(社)電子情報技術産業協会(JEITA)が主催するシンポジウムで、「先端Web技術は企業を変えるか」と題した討論のパネリストとしてお誘いを受けました。内容は「Web2.0の可能性について」とのことで、依頼理由を訊ねると拙著「Web2.0が殺すもの」を読み「違う見方の人も入った方が盛り上がる」といいます。それもそうだと受託したものの、すっかり忘れていた1か月後、告知のためのページにアクセスして思わず口をついたのがこの言葉です。

「アウェイじゃん」

他のパネリストの皆さんはきら星の如き著名人ばかりで「肯定派」。早まったかなぁと呟きます。私自身、多大な恩恵をうけているネットの可能性については否定していませんが、「リアル」にはそれ以上の価値があるという立場で……参加します。

今回は「アウェイ突撃記念」として、現実社会のネットワークについて。

Web担当者は船頭としての役割も

何度も繰り返していますがネットとリアルは地続きです。梅田望夫さんのベストセラー「ウェブ進化論」以降、ネットの中を「あちら側」、リアルを「こちら」と別世界のような表現も多くなりましたが、両者の違いは受話器を通して響く声と肉声の違いでしかありません。しかし、長くネットに接していると、リアル社会の煩わしさがない快適さに依存していき、世界がウェブで完結するかの錯覚に襲われてしまいます。相手が通話できる状況か確認しなければならない電話よりも電子メールを選び、書棚から辞書をとりページをめくるよりも「検索」という具合です。

趣味ならばそれでも結構ですが、Web担当者にはネットとリアルの間の橋渡しをする船頭の役割も求められ、どちらの状況も把握しておかなければなりません。「検索」や「RSS」などを活用できるネットと違い、リアルでの情報収集は手間がかかります。そこで「リアルネットワーク(人脈)」が役立つのです。

社長ネットワークの実際

LOHASな更新術」で「ライフサポート・エガワ」の江川社長のコメントを紹介すると、知人から「見たよ」と連絡が入ったといいます。また、近所に住むヤスリ屋の三代目は会う度に鋼材価格の動向といった業界最新情報を教えてくれ、とある社長に上場企業の業務提携を報じた新聞記事を伝えると、発表の前日に創業者が遊びに来て語った舞台裏を話してくれます。

高度情報化社会といっても、私たち個人が処理できる情報には限界があります。これを「リアルネットワーク」で補い、優秀な経営者達は活用します。友人知人というフィルタを通して、取捨選択された情報を得られるからです。それは立ち食いそば屋に半導体価格のトレンドを語らないように、話す相手にとって「有益」だと判断した情報だけを提供してくれるということです。また「経営者同士」の視点から提供される情報は「検索」では絶対に見つからない「オフレコ」も多分に含んでいます。

ゼロから人脈を作る方法

リアルの人脈が弱いとネットに依存する傾向があります。しかし、諦める必要はありません。経験則ですがリアルネットワークを作るのは簡単です。コネも知名度も金もない私が辿った「リアルけものみち」の話です。

  1. セミナーで作る
    受講後、名刺交換をお願いします。そこで簡単に感想を述べ、著作があればあらかじめ読んでおきその感想も伝えます。そして事務所に戻ってから翌日に届くように、名刺交換への「お礼状」をだします。相手にもよりますが、ベストセラー「起業バカ」の著者、渡辺仁先生は新刊を送ってくれ、以来、年賀状のやり取りをさせていただいております。

  2. 会いに行く
    廃油から石けんを作る「エコ・ソープ」という商品を新聞記事に見つけました。開発した日新油脂株式会社は我が町足立区北千住にあり、俄然興味が湧き会いに行くことにしました。電話をかけ「お話を伺いたいのですか」と伝え出向きます。「エコ・ソープ」の話しもそこそこに気が付けば雑談となり、今でもおりにふれ情報交換をしております。

  3. 電子メールで提案をする
    政治に関心はあるものの政治家になるつもりはなく、第一なろうにも政治用語でいう「3バン」がありません。3バンとは「人脈=地盤」「知名度=看板」「金=カバン(お金をいれる)」です。そこで「提案」をすることにしました。しかし、いきなり訊ねて不審がられるのも「面倒」なので、地方議員の「メールアドレス」を「ネットで検索」して一斉送信しました。すると1人の地方議員から「会いたい」と返信が届き、今もお付き合いしております。

ゆるいネットワークが肝心

人脈というと粘着質な暗い連想をするかもしれませんが、卑屈になり尻尾を振ることや四六時中べったりと「つるむ」ことを薦めているのではありません。たまに思い出して電話する親戚や旧友といったイメージです。年賀状だけのやり取りでも十分で、これを「ゆるやかなネットワーク」と呼んでいます。いざというときに電話一本、メールで話を聞け、互いの都合が合えば会えるぐらいの関係です。もちろん、先方から望まれればこちらもそれに答える「ギブ&テイク」ですが、「作る」ときは、まず「与える」ことからはじめます。

与えることで人脈は簡単に作れます。私に与えることができたのはみすぼらしい贈り物だったかもしれませんが、そのときにできる最大のもので金銭ではありません。自己啓発コラムではないので割愛しますが、与えるだけで「リアル」は「お礼」を開始するものです。それは隣の家のおばちゃんに旅行のお土産を渡すと、田舎から送られてきたみかんを分けてくれるようにです。この「与えれば得る」は拙著で礼賛した「21世紀のビジネス原則」です。

ネットコミュニティも大切ですが、リアルはその何倍も刺激を与えてくれます。ネットを否定するものではありません。「ツール(道具)」を盲信しないだけです。

♪今回のポイント

リアルネットワークからの情報収集。

ゆるやかな人脈は簡単に作れる最強のブレーン。

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