初代編集長ブログ―安田英久

日本のネット広告費はメディア接触時間に比べればまだ少ない

Web担のなかの人

今日はネット広告に関するお話を。

まず、日本人は各メディアをどれくらい利用しているのか(メディア接触時間)と、日本の企業は各メディアにどれくらい広告費を使っているのかを見てみましょう。

図1 メディア接触時間(週平均・1日あたりの分数、東京エリア)
2005年 (全体比)2007年 (全体比)05→07増減
テレビ162.5 (52.0%)163.7 (50.4%)100.7%
ラジオ35.2 (11.3%)39.3 (12.1%)111.6%
新聞30.7 ( 9.8%)28.2 ( 8.7%)91.9%
雑誌18.4 ( 5.9%)17.8 ( 5.5%)96.7%
インターネット65.6 (21.0%)75.9 (23.4%)115.7%

※博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査」より
※調査対象は対象エリアに住む15~69歳の男女個人

図2 日本の広告費(億円)
2005年 (全体比)2007年 (全体比)05→07増減
テレビ20,411 (49.6%)19,981 (47.9%)97.9%
ラジオ1,778 ( 4.3%)1,671 ( 4.0%)94.0%
新聞10,377 (25.2%)9,462 (22.7%)91.2%
雑誌4,842 (11.8%)4,585 (11.0%)94.7%
インターネット3,777 ( 9.2%)6,003 (14.4%)158.9%

※電通「日本の広告費」より、広告費と制作費の合計

2005年と2007年のデータですが、4マス媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の動きと比べると、インターネット(PCとモバイルの両方を含む)に関しては利用時間も広告費も増えているのがわかります。

広告費のデータが全国を対象としているのに対して、メディア接触時間は東京エリアのものであるため、少し乱暴なデータの扱いになりますが、各メディアの接触時間と広告費について、それぞれ全体比(4マス+インターネットを全体として計算)をみてみましょう(図1・図2の「全体比」欄)。

テレビがほぼ同じ程度で、接触時間の全体比に対して広告費の全体比が高いのが新聞と雑誌、逆に低いのがラジオとインターネットとなります。

もちろん、媒体の信頼度や、媒体への接触態度(受け身か能動的か)、リーチしたい対象のセグメント、確保したいフリーケンシー(広告接触頻度)など、メディアの特性が異なりますし、各メディアに広告を出す目的も異なるため、単純に比較はできないのですが、インターネットへの広告費の投資は、まだまだ少ないように思われます。

さらに乱暴ではありますが、この2つのデータから、各メディアについての接触時間1分あたりに使われた広告費を参考概算として計算してみましょう。

図3 平均メディア接触時間1分あたりの広告費(億円)
2005年2007年
テレビ125.6122.1
ラジオ50.542.5
新聞338.0335.5
雑誌263.2257.6
インターネット57.679.1

ここで示した広告費のデータは制作費と広告料の両方を含んでいます。にもかかわらず、テレビCMほど制作費が高くないはずの新聞や雑誌のほうが、メディア接触1分あたりの広告費が高めになっています。

この原因としては業界の構造もありますが、それぞれメディアがターゲット化されていることが考えられます。そもそも新聞を読むというだけで人物像がターゲット化されますし、「経済新聞を読む人」「30代女性向けファッション誌を読む人」「グルメ雑誌を読む人」のように特定のターゲットに対して広告を提示できるため、広告の費用対効果が比較的高くなることが考えられます。

では、インターネット広告の「広告を表示する対象をターゲット化」度合いはどうでしょうか。

これまでは、ターゲット化の強い広告としては、検索キーワードに対応して広告を表示する検索連動型広告が中心でした。しかし、前回のコラムで触れた「ヤフー&オーバーチュアのインタレストマッチ」などにより、検索以外のコンテンツ閲覧行動に対しても、ターゲット化された広告配信のシステムが出てきています。

そういった点を考慮すると、企業のインターネットへの投資は、これまでの伸びに加えて、今後さらに増えるものと考えられます。広告費の絶対額はともかくとして、メディア接触時間あたりの広告費レベルにおいてインターネット広告がテレビ広告よりも高くなるのは、もしかしたら2011年よりも早いかもしれません。

みなさんも、ぜひ、既存のマス広告とネット広告の特性の違いや費用対効果などを改めて理解したうえで、今後の広告費の配分を検討していただきたいと思います。

参考リンク

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト上に再掲したものです。

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