CMS導入活用ガイド

注目企業のネットビジネス戦略
CMSならぬ「コンテンツマネージメント」界の世界的リーダー ボブ・ボイコ氏インタビュー

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企業戦略なくしてCMSの導入は成り立たない
情報化時代の戦略を担うコンテンツマネージメントの源泉を語る

ウェブサイトが企業のビジネスチャネルとして重要な役割を担うようになった今、ウェブサイトの運用は企業の欠かせない事業の1つになっている。そして、昨今では企業の資産であるコンテンツをどのように活かすかという、より戦略的な運用が求められつつある。ここでは、情報化時代の企業戦略で鍵を握るコンテンツマネージメントとメタデータについて、DESIGN IT! Conference 2007の講演で来日したコンテンツマネージメント分野における世界的リーダーであるボブ・ボイコ氏に、先進国である米国の状況とともに語っていただいた。

ボブ・ボイコ氏のプロフィール

聞き手:篠原 稔和(ソシオメディア株式会社
PHOTO:津島 隆雄

情報化の新時代に求められるメタデータの編集者

ボブ・ボイコ氏

●篠原 まず普段どういった活動をしているか紹介していただけますか。

○ボブ 2つありまして、1つはワシントン大学の教授です。ワシントン大学では基本的にコンテンツマネージメント(コンテンツ管理)関係の教育課程を開発するところからずっとやってきました。情報マネージメントやデザインマネージメントなんかも教えています。ちょうど今、学校のクラスで教えているのは、デザインXMLというもので、XMLを使ってどのようにデザインマネージメントをするかということをやっています。それ以外に、ワシントン大学大学院の修士課程のプログラム全体の開発に携わりました。実践に基づいてもう一度学問の理論を学び直したいという、IT業界ですでに実践的に働いている人たちのためのコースです。

もう1つがコンサルタントとしての仕事で、メタトリアルサービスという会社を持っています。ここでは世界各地の企業向けに戦略とデザインのサービスを提供しています。たとえばクライアントの1つに国連の国際弾劾裁判所があって、裁判の結果をDVDで出す仕事なんかを手がけています。

●篠原 メタトリアルサービスという言葉にはどういった意味があるのでしょうか。メタデータと関係があるとは思うのですが。

※1:メタター(metator)

editorをもじったメタデータの編集者=metator

※2:メタトリアルスタイルガイド

メタデータの編集をもじったメタデータ編集=metatorialの様式に関するガイドライン

○ボブ もちろんメタデータに関係しています。情報化の新時代ととらえると、そこでは雑誌でいうエディターをもじった存在、メタター(metator)※1という人が情報に対して必要だと考えています。

雑誌などの媒体では通常、編集方針(エディトリアルスタイルガイド)というものがあって、エディターはスタイルガイドにしたがって文字情報のコンテンツを編集していきますが、メタターはそれと同じことをやります。つまり、メタトリアルスタイルガイド※2をもって、どういう風にタグを付けて、どういう風に情報を整理していくかというのを、エディターと同じような重要性を持って行う人で、情報化の新時代に必要であるという発想からきています。

●篠原 コンテンツマネージメントというテーマと初めて関わったときのことをぜひ聞かせてください。

○ボブ 1980年代から始まっているのですが、そもそも私はマイクロソフトの外部契約のテクニカルライターの仕事をしていました。私が当時やっていた仕事は、マイクロソフトが紙の状態で出版するMS-DOSのマニュアルを書くことでした。その後、マイクロソフトは紙のマニュアルをなくしてオンラインに移行してしまったので、それが最後の紙の状態ということになります。

その後、マイクロソフトはMS-DOSからWindowsに移っていって、同時に私も本に対する情報を書く仕事から、コンピュータで表示される情報を書く仕事へと移っていきました。当時私が感じたのは、これから20年後には、ほとんどの情報がオンラインに載せられるようになるということでした。それが自分の歴史の中でのターニングポイントでした。

ただ、当時はオンラインに向けて情報をどのようにまとめて書いていくのかということに関して、確立した理論や知識、ノウハウがどこにも存在しておらず、そのためのツールもまったくないという状態でした。ですから、コンピュータ向けの仕事に移ってから最初の10年間は、自分でやる仕事のツールは全部自分でプログラムしていました。そしてこれが非常におもしろい仕事で、システムに対してどのように情報を構成して、どのように管理していくかということに、コンテンツマネージメントに自分で取り組むようになっていったのです。

●篠原 今の私たちがとらえている、いわゆるCMSツールとの最初の出会いというのはいつだったのでしょうか。

○ボブ コンピュータ向けの仕事に移った当時は、コンテンツマネージメントシステムという考え方ではなくて、「必要な仕事をやるためのソフトウェアが必要だ」というところから始まりました。その頃は周りのチームと一緒に、オンラインに載せるための情報をどういう風にフォーマット化するかというシステムを作っていたのですが、そのときCD-ROMが出てきて大量の情報を一気にCD-ROMに入れられるようになり、CD-ROMに入れる情報のフォーマットをどのように整えて、タグを付けてナビゲーションするかが非常に大きな課題になりました。当時はブラウザもまだなかったので、ブラウザとデータベースの部分もすべて自分たちでソフトウェアを開発していましたね。

そしてウェブが出てくるのですが、ウェブの中で必要なこともCD-ROMで自分たちがやっていた情報の整理ということに非常によく似ていたのです。また、ウェブが出てきたことで、ウェブ上の情報を管理するシステムが必要になるとも感じていました。当初はカスタムメイドのデータベースシステムを作っているという意識で、情報をどのように整理するかというプロセスを管理するためにソフトウェアを作ったりしていました。まだ90年代の半ばで、当時のウェブはまだ非常に若い黎明期だったのですが、会社によっては非常に大きなウェブサイトをつくっているところもありました。

そしてCMSというシステムとの初めての出会いですね。私たちはCMSの分野で数年仕事をしていますが、初めての出会いは仕事のパートナーがそういう製品を見つけて持ってきたときです。それを見てみると、今まで自分たちがクライアントのために何度も何度もやってきたことが製品化されているものでした。今はもう存在していない製品もたくさんあるのですが、そのバックグラウンドは私たちととてもよく似ていました。私たちもマイクロソフトのOfficeオンラインに向けて、同じようなディレクトリのシステムなどを作っていたのですが、これを製品化して売っていくということよりも、サービス業にしようと考えました。

企業戦略が大きな鍵になる
コンテンツマネージメントの新フェーズ

●篠原 ボブさんの携わられているCMSというと、「コンサルティング」「教育」「専門家のコミュニティを作る」があると思います。これらに関してお聞かせください。まず、コンテンツマネージメントのコンサルティングですが、日本ではCMSを導入するとかデータを移行するとかはあるのですが、まだなかなか「コンテンツマネージメントのコンサルティング」というビジネスイメージがありません。具体的にどういうことをしているのですか。

○ボブ 米国におけるCMSの歴史的背景をいうと、もともとカスタムメイドのソフトウェア開発から始まりました(第1段階)。そのため、当時のソフトウェアは他のソフトウェアと一緒にはうまく機能しなかったので、インテグレーションサービスのようなものをコンサルティング会社が手がけるようになりました。その過程で付加的・補足的なサービスやソフトウェアの開発や、データの移行をコンサルティング会社がサービスとして提供していました。これが第2段階です。

現在、北米では第3段階にきていて、もう少し戦略的なアーキテクチャの構造をコンサルティングしています。具体的にいうと、たとえば、会社の事業に役立つためには、どんなシステムをどういう風に使えばいいのかということを教えたり、最適な製品選びを助けたりします。もちろんインテグレーションサービスも提供するのですが、それは専門会社に頼むこともあって、その会社をどのように選ぶかというのを手伝ったりもします。もちろん、昔のウェブサイトから新しいシステムにデータを移行することもやっています。

それ以上に最近出てきたのは、デザインとアーキテクチャの部分で、そもそも会社のウェブサイトをどのように構成していくのが正しいのか、お客様のナビゲーションシステムをどのように作ったらいいのかといったところに対して、コンサルティングを提供していくという仕事が入りつつあります。北米でフルサービスといっている会社であれば、これらのサービスをすべて提供しているということになります。

●篠原 アーキテクチャを作る人というと、専門家である情報アーキテクトがコンサルティングサービスに加わっているということでしょうか。

○ボブ 情報アーキテクチャに関わる人たちがCMSの専門家と交わるメジャーなポイントが2つあります。1つ目はウェブサイトをどういう風にデザインするのが正しいかという部分で、これはナビゲーションのスキームをどのように作っていくかとかいうことになります。2つ目は、CMSのコンテンツを入れておくリポジトリ(データ貯蔵庫)とかデータベースをどのように構造化するのかという部分です。

情報アーキテクトの人たちは、こういった場で活躍するのです。情報アーキテクトの人たちは、もちろんCMSと関わらない部分で他にも仕事をしていると思います。特に情報アーキテクトの中でも、ユーザー中心デザインに関わる人というのは、CMSとはもっと別の部分、ユーザーがウェブサイトに来る以前の段階でどのように情報を整理するかということを専門的にやっているのです。

●篠原 交わる部分はあるけど、彼らは彼らなりにやることがたくさんあるということですね。

○ボブ 学際的にどのように分けるかとなると、それぞれ、どちらがどこをカバーしているかという領域は重なっている部分が多く、ボーダーラインを引き難いところがあります。ただ、個人的な部分でいえば、情報アーキテクトの人たちが専門性をおいているのは、どういう風に情報を構成・蓄積して、それらの間をどのようにリンクさせるかということです。一方、CMSの専門家は、情報の発信源から、情報が出力される目的地にどういう風に情報を動かすかということに専門性をおいています。

重なる部分が非常に多いのですが、あえていうならば、情報アーキテクトは情報の構造自体にフォーカスをおいていて、CMSの人たちはその流れであるプロセスの部分を専門としています。

●篠原 では企業で実際にCMSを導入していく人たち、ウェブマスターやITマネージャの役割はどこにありますか。

○ボブ ウェブマスターという言葉とITマネージャという2つの言葉が出てきましたが、その区別を先に明確にしておきましょう。

まず、初期のウェブマスターが何を意味したかというと、ウェブサイトに関することすべての責任者という意味で、サイト上で起こることはすべてこの人の管轄下とされていました。今は、ウェブの進化によって1人では管理しきれなくなりチームになっていますが、もともとウェブマスターというのはジェネラリストで、ウェブサイト上で起きていることすべてをわかっている人を指していました。これが今は各分野のスペシャリスト集団で行われています。

ウェブの進化の過程で、サイト上で起こっていることを1人のウェブマスターがすべて把握することは不可能になってきていますので、現在のウェブマスターとは、さまざまな情報がある中のコーディネータだとか、雑誌における編集長の立場のような人になっていると思います。

これに対してITマネージャというのは、もっといろんなチャネルを全体的に持っており、情報がどのように発信・管理されていくかのすべての可能性を把握している人だと考えています。その中には、たとえばRSSのようなウェブ上のものもあれば、印刷媒体で発信される情報もあります。最近だとiPhoneが出てきましたので、もしかしたらこれを使ってウェブに情報をアップしているかもしれませんが、これも新たなチャネルと考えています。そのいくつもあるチャネルをすべて管理するのがITマネージャであって、ウェブマスターはそのうちの1つのチャネルを管理している人にすぎない、ただそれも1人ではなくチームになっています。これが役割の違いになります。

CMSを使いこなせなのは組織的な戦略がないから

篠原 稔和氏

●篠原 CMSを扱うとか導入して運営していくという意味でいうと、ウェブマスター的な人とITマネージャ的な人とがコラボレーションするという理解なのでしょうか。それとも、ツールを使うのがウェブマスターというような状況なのでしょうか。

○ボブ たしかにそれも正しいと思います。ただ、コラボレーションよりももっと深い意味があるでしょう。

ウェブマスターとITマネージャが企業を代表して2人でやるということではなくて、少人数のグループがそれに関わっていくことになると思います。最終的にはウェブサイトにおかれる情報だけではなくて、エンタープライズとして発信していく情報全部を管理していくようなことになるので、IT部門すべてに関わってくる仕事になります。

このような仕事に関わっていて感じるのは、ウェブサイトを作っている人とコンテンツを作っている人、そしてウェブサイトのコンテンツから何か価値を得ようとしているビジネスサイドの人、そしてウェブマスターのようなテクニシャン的な人たちを分ける明確な境界線はないということです。

CMSはタコのようなもので、組織の真ん中にあるCMSから四方八方に伸ばされたその足は、組織のすべての部分に到達しています。そして組織のいろいろな部分を統合するのがCMSの役割だと感じます。ですから、CMSを導入しようとしても、そもそも組織が統合的に動いていないとCMSの導入は失敗してしまう。それもあって、CMSの戦略という考え方が出てきています。

CMSを導入して統合するのに必要なのは、そういうことが実現できる組織になっていることです。つまり全体的な戦略が必要になってくるのです。CMSプロジェクトに失敗してしまうのは、テクノロジーのせいではなく、会社としてそういう戦略がないからだと感じています。また、その辺りの現状によって最適なコンサルティングの形も変わってくると思います。

※3:CM Pros(Content Management Professinals)

米国を中心にCMSの専門家で構築された、コンテンツマネージメント全般の情報を扱う非営利のコミュニティ。http://www.cmprofessionals.org/

●篠原 用語的なことを聞いておきたいのですが、CM Pros※3は「CMS Pros」とはいっていませんよね。“企業側が戦略を持つ”というところはCM(コンテンツマネージメント)ととらえて、導入するときのツールとしてCMSがあるということでしょうか。

○ボブ システム(CMS)とコンテンツマネージメント(CM)との間には違いがあって、現在、私自身のやっているコンサルティングサービスもコンテンツマネージメントの方向へ流れてきています。

CMSというのは、目的地に向けてどのようにコンテンツを流すかを助けるシステムになります。この流れはシステムがなくても手作業などで実現できますし、CMSを導入する場合でも、プロセスの一部を手がけるか、全部を手がけるかという両方がありえます。

始めに話しましたが、業界自体はシステムやツールを技術的に作るというところから始まっているので、そもそもシステムがあることによってコンテンツマネージメントが起こったと思います。ですからCMSはコンテンツマネージメントがどうあるべきかに着目して作られたシステムではありませんでした。CMSを使う会社も、どのようにコンテンツマネージメントを行っていくかというアイデアがないまま、先に技術ありきで始まったのだと思います。それが今、システムからマネージメントへと概念が移りつつあるのです。

ある会社の笑い話で、1つおもしろい例があります。ある会社のCEOが自分の家で娘がいろんなウェブサイトを見ているのを見て、ウェブというのはすばらしいと思い、会社に行ってCTOに「わが社にもウェブサイトが必要だ、ウェブサイトを作れ」と言いました。CTOはそこで、ウェブサイトを作る予算やデータベースを作る予算を取ったり、ITマネージャに指示を出したりしました。ITマネージャはお金をかけられる限りかけて、この業界でベストなシステムを作りました。そしてITマネージャがCTOに成果を知らせるとCTOもできたものに非常に満足しました。そして、CEOが期待してURLを入力すると、1ページ出てきて、「入力したコンテンツがここに表示されます」と書いてあったのです。

つまり、システムだけ組み上げて中身が空だったんです。確かに、システムを作る人たちがいればすばらしいシステムを作ることができますが、実際の仕事はそこから先、つまり、どんなコンテンツを入れるかから始まるという考え方ができると思います。

●篠原 ボブさんは、コンテンツマネージメントの専門家コミュニティCM Prosの創設から携わっている大事なキーマンだと思います。日本にはこうした専門家コミュニティはないのですが、CM Prosが業界でどういったことをサポートをしていこうとしているのかと、そこに携わっているのはどういう方たちなのか。そして、今のような変化にともなって関わる人たちも変わってきているのか教えてください。

○ボブ 篠原さんがおっしゃっていた教育の部分と、コミュニティ構築の部分の両方をまとめてお話できると思います。

というのは、10年前であればコンテンツマネージメントというのは存在していなかったけれども、私は今後30年、40年の間にはこれが学際的テーマとして確立して、大学に行けばコンテンツマネージメントを学べるし、社会に出れば業界団体があるという状況になっていると思うのです。ですから、啓発活動とコミュニティ構築とは表裏一体のところがあります。

今から約5年前に業界団体が始まったのですが、そもそも誰か1人が自分の考えの中だけでやっていることではなくて、業界や周りから認められてやっていきたいという考えがあったので、コンテンツマネージメントをビジネスの中心にしている人たちが、そういった意識を一致させて立ち上がったことがきっかけでした。

当時は名刺に「コンテンツマネージメント」とかそういったことが書かれていなくて、みんなそれぞれの肩書があるんだけど、同じような仕事をしている人たちのグループがあって、なんとなく自分の仕事にぴったりはまるものがなく、空白の部分があるように感じていました。

その人たちが集まって、最初は15人くらいで始めようということになりました。IT系のカンファレンスなどで出会ってはいたので、そのときは全員顔見知り同士でしたが、そのメンバーがさらに関係ある人たちを10人くらい招いて始めたのが発足でした。発足時のメンバーがどういう職業だったかというと、やはりコンテンツマネージメントに関係したサービスを、他の会社に提供しているコンサルタントのような人たちでした。

それから5年たって、今のCM Prosで増えているのは、会社のIT部門の管理者として仕事をしていて、さらに業務領域がコンテンツマネージメントだという人たちです。社内のIT部門にコンテンツマネージメントの担当者がいて、コンテンツマネージメントをちゃんと認識している人が増えてきているということが、この5年間での変遷といえるでしょう。

そういう意味では、今後コンテンツマネージメントという言葉自体もしかしたら変わっていくのではと感じています。用語自体は使われなくなるかもしないけれど、アイデアそのものはすでに確立したものになっていて、それが企業に浸透していくことになるでしょう。40年後、この業務をコンテンツマネージメントと呼んでいるかはわかりませんが、業務自体が存在していることは間違いないでしょう。

ウェブマスターに求められる情報を選別するスキル

●篠原 コンテンツという部分に関して、編集者(エディター)というのがウェブに必要かどうかを聞きたいです。日本でも昔から「ウェブに編集者は必要だ」といわれながら、実際にはそうなっていないんですが、米国には編集者という役割の人がいるのでしょうか。それともそういう仕事が細分化してCMプロとかIA(情報アーキテクト)になっているのでしょうか。

○ボブ 非常におもしろい質問だと思います。今、いろいろなトレンドが一時に起こっていて、ときどき混乱することがあるのですが、1つのトレンドとしては、流れる情報量が非常に増えていて、エディターがすべてを扱うのが不可能な状態にあります。もう1つはフォーマルなエディティングのプロセスの必要性が下がってきていると思います。たとえば私の本も1つの好例なのですが、3年前に『Content Management Bible』を書いたときと、つい最近にCIOの本を書いたときと、そこにかかったエディターの業務がぜんぜん違っていました。というのは、エディトリアルの必要水準、合格水準というのがすごく下がってきているのです。メールや、テキストメッセージングのコミュニケーションが増えてきていて、そういったものにわれわれが慣れ親しんできているために、編集水準が非常に下がってきていると思います。ですので、この2つのトレンド、1つが質に関することで1つが量に関することですが、これらをあわせると、エディターというのはいらないんじゃないかと考える組織も増えてきています。お金もかかるし必要性もないんだからと考えられているのは確かです。

それと並行して進んでいるもう1つのトレンドとして、信頼性の問題があります。たとえば、よく書けた原稿は信頼できますが、文法がめちゃくちゃな文章は信頼できません。すべての情報は平等でないと思われていて、ある片側の情報は重要性が高くて皆が注目するけど、そうではないもう片側には注目されない。こうした情報の信頼性の問題は消せないと思います。

こうしたいくつかのトレンドがある中で、最初にお話したエディトリアルとメタトリアルは両方重要だと思います。逆説的に聞こえるかもしれませんが、エディターのスキルはメタターのスキルを高めることができると考えています。エディターのスキルは、情報をうまく分析・整理するという部分で貢献できると思いますから。将来的にはエディターのスキルを持った人の価値は見直されて、必要性は最終的には認められると思います。ただその過程では、一時的にエディターの重要性・必要性がないといわれて、失職するかもしれません。しかし、将来的には価値のあるポジションになると思います。

エディターの仕事は2種類あります。1つは文章を良くするという仕事、もう1つは媒体にふさわしい情報を判断する仕事です。特に後者の仕事は、今後さらに重要になってくるでしょう。もしかしたら、それがチーフエディターと呼ばれるかもしれないし、コンテンツマネージャと呼ばれるかもしれないけど、とにかく重要性は増していくと思います。

●篠原 最後に、Web担の読者であるウェブマスターに向けて、特にCMSに興味を持っている人たちにメッセージをお願いします。

○ボブ このメッセージが適切かどうかわからないですが、ウェブマスターがこの先も職を失わずにいきたいと思ったら、コンテンツマネージメントを取り入れないといけません。ウェブサイトは変化してきていて、今までは、何はともあれウェブサイトを「つくる」ことが目的だったかも知れませんが、今後は会社の欠かせない事業の1つとなると思います。

1つ具体的な話をすると、昔のウェブを作る人は、コーヒーを中毒のように常に飲んでいて、夜遅くまで仕事をしてウェブサイトを作っているような、すごくクリエイティブでエネルギッシュなんだけど、椅子に長く座っていられないある特定の人たちが集まっていたと思います。そういう人は今の変化をハッピーに思っていないと思います。というのは、ウェブをつくるということ自体が企業の通常業務の一部になってきているので、立ち上げ前に5日間徹夜するというタイプの仕事ではなく、もっと落ち着いた仕事になってきているからです。

雑誌も同じかもしれないのですが、創刊のときにもちろん徹夜はするのですが、いったん創刊すればルーチンのプロダクションサイクルがあると思います。プロセスとかフレームワークがあって、長期的なスケジュールや手順に則って、スケジュールとプロセスとを繰り返していくという仕事になってくると思います。そこを考える必要がありますね。もしかしたらウェブマスターの人たちにとってはうれしくないメッセージかもしれないですが(笑)

◇◇◇

ボブ・ボイコ(Bob Boiko)
Metatorial Services Inc.設立者/代表取締役

2004年に生まれたコンテンツマネージメントの専門家コミュニティ「CM Pros」の創設メンバーの1人で、コンテンツマネージメント分野における世界的リーダー。世界トップの技術企業(マイクロソフト、モトローラ、ボーイングを含む)のウェブ、ハイパーテキスト、マルチメディアシステムのツールのデザイン・設計では約20年のキャリアを持つ。ワシントン大学の情報学部教員も務め、情報システムデザイン、組織管理、コンテンツマネージメントについて講義を行う。自身が設立したMetatorial Services Inc.では、コンテンツマネージメント、情報マネージメント戦略・設計に特化したコンサルティングを行い、さまざまな規模の民間、政府、非営利のクライアントに対して、情報マネージメントのあらゆる面においてサービスを行う。
Metatorial Services Inc.
http://www.metatorial.com/

コンテンツとユーザーインターフェイスをマネージする

DESIGN IT! Conference 2007

DESIGN IT!は、デザインとITの力、そしてそれらの有機的な融合によって、時代に対応した組織や企業の変革を進めていくことを目指し、ソシオメディアによって2005年より開催されてきたカンファレンス。ITにかかわるすべての人が、ビジネス戦略に「デザイン」の力を取り入れることの重要性に気づき、デザインの価値を上げるための戦略やノウハウを学び、そして多様な知識や経験、期待などについてコミュニケーションをとるための場として活用できるイベントだ。

毎年、海外のITデザイン分野におけるリーダーたちをゲストに迎えた講演が行われ、最先端のITデザインコンセプトを吸収できる。2007年12月に開催されたカンファレンスでは、インタビューをしたボブ・ボイコ氏、米国Yahoo! シニアインタラクションデザイナーのルーカス・ペティナティ氏、インフィールドデザインの佐々木 仰氏、コンセントの長谷川 敦士氏ほか、各分野のエキスパートよる多数の講演や、海外ゲストと日本の講演者による豪華パネルディスカッションなどが行われた。 http://www.designit.jp/

講演は開場直後に満席となるほどの人気多くの人でにぎわう展示スペース
講演は開場直後に満席となるほどの人気(左)。多くの人でにぎわう展示スペース(右)。

コンテンツマネジメント パーフェクトガイド 基本・計画編
~コンテンツ管理の考え方からCMSの導入計画まで

コンテンツマネージメントの原典といえる『Content Management Bible , 2nd Edition』の日本語版。1000ページを越える原書のpart1~part3を基本・計画編とした本書では、そもそもコンテンツとは何か、コンテンツマネージメントとは何なのかを理解したうえで、ウェブサイトを介した情報の収集から配信までをトータルに管理する「コンテンツマネージメントシステム(CMS)」を実現するテクノロジーや、CMSの導入に向けて実践すべき具体的なやり方までを体系的に整理して習得する。後半であるデザイン・構築編は2008年3月上旬に発売の予定。

著者:Bob Boiko
監訳者:ソシオメディア株式会社
ISBN:978-4-8399-2088-3
価格:4,200円+税
毎日コミュニケーションズ

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