ネットマーケティング業界の闇
SEO業者が使う“裏”の手口 ~ネットマーケティング業界の“闇”

田口 和裕 2008/2/8(金) 8:00 tweet13このエントリーをはてなブックマークに追加 印刷用
ネットマーケティング業界の“闇”

この記事では、業界関係者への取材で明らかになったネットマーケティング業界の「闇」についてレポートする。問題に巻き込まれないように心構えをしておいてほしい。

第1回は「SEO業界の闇」だ。

着手金はもらうが何もしない「成果報酬」のSEO業者

こんな話がある。

ある企業のWeb担当者が飛び込みのSEO業者から営業を受けた。業者はSEOの重要性を説き、プランを説明した。

弊社は成果報酬制となっております。ご希望のキーワードで御社のウェブサイトの表示順位が上がったときにだけ報酬をいただいております。

報酬金額も妥当なので契約し、着手金として3万円を支払う。しかし、その後、業者から検索結果の月次レポートは送付されてくるものの、肝心の検索順位はまったく上がらなかったそうだ。

勘のいい方はお気づきかもしれないが、悪質なSEO業者の典型的な手口だ。この業者は実際には契約後何も作業を行わず、たまたま順位が上がったときにだけ報酬を請求し、そうでなくても着手金はしっかりと得ているのだ。どちらに転んでも業者にはリスクはない。

ある業界関係者が筆者に教えてくれたこの事例はひどすぎるにしても、SEOを謳う業者の中には、適切だとはいえない手法を使っている例が少なくないという。

SEOの3つの手法

SEOの基本を今一度おさらいしてみよう。一般的にSEOは大きく分けて、次の3つの手法で進める。

まずはページの最適化。これは各ページに記述する文章やページのHTMLを、検索エンジンが理解しやすいように調整する手法だ。具体的には、フレーム構造を避け、検索エンジンが重視するタグ(title、h1、strong、meta、altなど)の中に目的のキーワードを含めるなどを行う。

次はサイト内リンクの最適化だ。検索エンジンのロボットがすべてのページに辿り着けるように適切にリンクを貼ると同時に、適切なキーワードを伴ったリンクをサイト内のページ間で可能な限り増やすのだ。サイトマップやパンくずリスト、タグ、記事ランキングなどを利用することが多い。

3つ目はサイト外からのリンク(被リンク)の獲得だ。検索エンジンは「質の高いリンクを多く得ているサイトは良いサイトだ」という考え方のもと、外部からの参照数が多いサイトを評価するといわれている。最近のSEOでは非常に重要な部分だ。

さて、自社で直接コントロールできる最初の2つの手法とは異なり、サイト外からの被リンクは、基本的に自分ではコントロールできないはずのものだ。そのため、まっとうなSEO業者は、まずページやサイト内の最適化を行うようにアドバイスする。なぜなら、サイト外リンクを増やすには、他サイトの管理者にとってリンクする価値があるコンテンツを充実させ、知ってもらうという地道な手法が基本となるからだ(相互リンクや登録制のリンク集サイトを利用するといった手段は別だが)。

にもかかわらず、ページやサイト内リンクは最適化しなくても顧客のサイトの順位を上げられるSEO業者も存在する。これはいったいどういうことだろうか?

被リンク数を増やすあの手この手

SEO業者が使っている「被リンク数を増やす手法」をいくつか見ていこう。

まず思いつくのは、SEO業者が自らさまざまなサイトを運営し、そこから顧客のサイトに対してリンクを貼るという手法だ。SEO業者が運営するサイトにはさまざまな種類があるが、カテゴリごとのちょっとしたリンク集が多い。しかし、中には、有用な情報を掲載しているサイトをジャンルごとに保有しているメディア企業のようなSEO業者もいる。

だが、無関係なサイトへのリンクを集めただけのサイトもある(料金を取ってリンクを貼るところもある)。さらにひどい場合には、ネットから適当に取得してきたRSSのコンテンツを単語に分解して機械的に組み合わせることで、意味を成さない“コンテンツ”を大量に生成するスプログ(スパムログ)と呼ばれるサイトを作成しているケースもあるという。これらのサイトも、そしてそこからのリンクも、ネットユーザーにとって有用なものだとは決していえず、明らかに「検索エンジンでの順位を操作する」ことが目的だ。

また、アクセスカウンタなどの無料ブログパーツを提供して多くの人に使ってもらい、そのツールをサイトやブログに貼り付けるHTMLの中にリンクを仕込んでおくという手法もあり、2007年にその手法がネットで暴かれて話題となった(図1)。ブログパーツにリンクが含まれていることが利用条件に書かれていればまだ「利用者を欺いた」ことにはならないが、それでも数ピクセル×数ピクセルのごく小さなリンクが人間にとって有用かというと疑問は残り、検索エンジンを欺こうとしているといわざるを得ない。

図1
図1 SEO業者は、このような構造になっているアクセスカウンタなどのブログパーツを無料で広く配布することで、そのブログパーツを貼り付けたサイトから顧客のサイトへリンクが張られたことになる。

本誌でもおなじみの渡辺隆広氏によると、米Googleのアダム・ラズニク氏は、上記のような手法のリンクはGoogleのガイドラインに違反しているという認識を示している。

「アクセスカウンタへの隠しリンクはガイドライン違反」 - Google Adam Lasnik氏 :: SEM-R

さらに、ソーシャルブックマークを使い、目的のサイトをブックマークすることによって被リンク数を増やすという手法もある。特にはてなブックマークはリンクに「rel="nofollow"」を付けずにふつうのリンクとして扱っていることもあり、実際に、特定のサイトのさまざまなページだけをブックマークしている、リンク稼ぎのためのブックマークを複数のアカウントで作る手法が確認されている。また、はてなブックマーク、Yahoo!ブックマーク、FC2ブックマークなど、複数サービスに一斉に登録できるツールなども登場している(図2)。

図2
図2 複数のソーシャルブックマークサービスに簡単にブックマーク登録できるツールも存在している。自分が使うためならば1つのサービスをブックマークレットから使うほうが便利なはずだが、何のためのツールなのだろうか……。

グーグルは、有料リンクに対するペナルティを2007年に発動した。具体的には、有料リンクを設置しているサイトのページランクを下げたのだ。SEO業界を大きく揺るがした出来事だったが、これは、悪質なSEOスパムに対してグーグルが進めている対策の入り口でしかない。グーグルのマット・カッツ氏は、「グーグルは有料リンクとそうでないリンクを機械的に判断する仕組みをすでにもっている」と発言している。「ユーザーにとって意味を成さない、検索エンジンでの順位を操作することを目的とした手法やリンク」への対策を、検索エンジンが今後さらに進めていくのは明らかだ。前述のような手法が今後も有効かどうかは極めて怪しいといえよう。

悪徳SEO業者に依頼するリスク

このような手法を使っている業者にSEOを依頼すると、たしかに効果が出る場合もある。しかし、検索エンジンがそういった手法にペナルティを加えた場合、ある日突然、順位が大幅に下がってしまうこともあり得る。それならば問題となった手法をやめればいいのだが、最悪なのは、「SEOスパムをしているサイト」だとネットユーザーに暴露され、企業のブランドに大きな傷がつく可能性があることだろう。

このようなことにならないように、Web担当者はSEO業者と契約する前に、目的、手法、効果測定方法、料金体系などをしっかり確認しておく必要がある。

突き詰めるとSEOの目的は、自社のサイトが提供する「価値」を求めている人(潜在顧客)に対して、検索エンジンを使った動線を確保することだ。まずはこの事をしっかり理解する必要がある。

そのためには、その人が必要とする有用な情報をしっかりと用意したうえで、それを検索エンジンにわかってもらうように工夫するのが基本となる。そういったアクションをせずに検索エンジンで順位が上がるのならば、「何かがおかしい」と注意するべきだろう。

企業の担当者がSEOの具体的な手法を詳しく知っておくべきだとはいわない。しかし、外部にSEOを依頼するならば、SEOの考え方を理解して、ある程度の基本的な知識を身につけておくことで、「こんなはずでは」という事態に巻き込まれる可能性は減らせるはずだ。

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