企業ホームページ運営の心得
集合知の虚像ドコモ2.0。みんなの意見はそんなに正しくない

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の四十

惨敗ドコモがみんな大好き

豪華俳優陣では飽きたらず、KAT-TUNまで追加招集したNTTドコモの金満キャンペーン「ドコモ2.0」。

企業体力にものを言わせた広告展開も追い風とはならず、8月のドコモの契約者数は9か月ぶりの「純減」となり、4か月連続首位のソフトバンクと、王者の風格が漂い始めたauと較べて「1人負け」となりました。

そんなドコモですが「ドコモ2.0」のCMは、CM好感度調査では高評価を得ており、CM総合研究所の発表で総合1位、オリコンのCM好感度ランキングでは7~8月と首位となっています。

CM好感度も契約者数もどちらも「みんなの意見」で、Web 2.0的にいうなら「集合知」です。

後述しますが、正しい答えを出すはずの「みんなの意見」がそれぞれ正反対の評価を下しています。

金持ち勝つのテレビの世界

1人負けのドコモがCM好感度で首位。契約数は数字で明確に表せますが、好感度はどうやって調査するのでしょうか。

CM総合研究所の好感度調査で、首位に選ばれたことのあるENEOSの広報ページに「(モニターに)好きなCMを自由に記述してもらい」とあります。オリコンに訪ねると、「ネット調査の“フリーアンサー”による」との答えです。

つまり、「覚えているCMから選ぶ」ということです。

テレビの視聴時間は世代で異なり、番組の合間に流れるCMは見逃されることも多く覚えて貰うのは困難です。

そこでCMを大量に流します。湯水のごとくお金を使って。お金があるからできる戦術ですが、結果、「好感度」という「みんなの意見」をゲットできます。

みんなの意見は案外正しい。そう案外ね

仮説の提起としておもしろい、書籍『「みんなの意見」は案外正しい』は、梅田望夫さんの『ウェブ進化論』でも紹介され、集合知や群衆の叡智といったWeb 2.0のもたらす果実の論拠とされました。

ただ、『「みんなの意見」は案外正しい』の邦訳版では「集団は極めて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中でいちばん優秀な個人の知力よりも優れている(9頁)」とあるのですが、『ウェブ進化論』はそこから踏み込み「人々の集団こそが、世の中で最も優れた個人よりも優れた判断を下すことがある(205頁)」と微妙に違います。前者は集団の中の優秀さですが、後者は「世の中」と風呂敷が大きくなっていることには注意が必要です。

実は前者には「正しい状況下」、後者には「適切な状況の下では」と前置きがあります。

どちらも、集団の出す答えが優れた個人を凌駕するためには「状況」が必要だといっているのです。

もっとも難しいものがなおざりに

ところが「適切な状況」というのは難題です。いくつか条件を提示してみます。

まず利害関係の当事者は同数を配置しなければなりません。当事者でない方が適切だと思うかも知れませんが、無関係な人の判断を当事者が受け入れる訳がなく「外野は黙っていろ」となるからです。たとえば、裁判が当事者の加害者、被害者の主張を戦わせるようにです。また、専門知識がない人の判断は、もうすぐ始まる裁判員制度への危惧と重なります。

リアルな会議室では声が大きい人が強く、匿名ネットでは影響力のあるネット著名人や、いつでも書き込みができる暇な人がその役を担い、少数意見を消し去っていきます。

つまり、適切な状況の設定がもっとも難しいのです。

食い逃げされるならバイトは雇え

現実とのギャップの一例をベストセラー『食い逃げされてもバイトは雇うな』から紹介します。

誤解のないように記しておきますが、書籍の内容を棄損するつもりはありません。ウェブ担当者には読んで欲しいと推奨します。ただし、「商売用」ならば理論と現実のギャップは常に意識しなければならないということです。

表題の詳述はミステリー小説の犯人を明かすのと同じとなるので要約しますが、損失と経費を数字で判断しなさいというものです。

理論は「なるほど」と膝を打ちますが、「食い逃げ」を見逃すことで、普通の客の足を遠ざけてしまい、商売としては大変危険です。善良な市民は犯罪者の利用する店を嫌いますし、まともに金を払うことが「損」をすることと、タダ喰いの犯罪者が増え損失額は比例します。

机上の理論の危うさです。同書の指摘する「数字で捉える感性」は一読に値しますが。

記憶のメカニズムと人の習性

マーケティングの世界には「同じ日に同じ広告を3回以上見ると信じる」という説があります。広告に繰り返し触れることで、警戒心が解かれることによるのでしょう。

そして記憶に潜り込むことは大変重要で、人は不快なものを廃棄し、都合の良い記憶を貯蔵する習性があります。裏を返せば覚えているもの、つまり自分の脳の貯蔵庫にあるものには好印象を持ちやすいということです。「最近見た中で好感を持ったCM」と質問され、覚えていたものを挙げたとしても無理からぬことです。

みんなの意見という虚構

「ドコモ2.0CMが好感度首位に!」と、「みんなの意見」を広告に利用するのは広報として正しい選択です。大金を投じれば有利となるレースでも結果は結果ですし、日本人はランキング好きです。

一方の契約数は、ある意味本当の「みんなの意見」です。

どちらも事実ですが、「みんなの意見」とは、取り上げ方やものさしによって簡単に揺らぐものなのです。

ネットでも匿名掲示板と、登録制会員サイトで意見が異なることがありますし、朝日新聞と産経新聞は違う国の新聞のような「みんなの意見」が掲載されます。専門家の評は注意が必要で「ドコモ2.0」の予告CMを絶賛していたのは「CM業界誌」の編集長でした。これは大人の事情も見え非難するつもりはまったくありませんが。

誰もが一度はしたことがある「クラスのみんながもっている」というおねだりと、「みんなの意見」の礼賛が重なります。

1人負けでも好感度は首位。なんだか「いい人だけど恋人には無理」という感じでしょうか。

♪今回のポイント

「クラスのみんな」で挙げられるのは都合の良い友人。

みんなの意見は条件次第でどうにでもなる。

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