企業ホームページ運営の心得

記念日商法という秘術。ニーズではなく特別というエクスキューズ

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の参十四

私事ですが結婚記念日です

「今日は何の日だ」という彼女からのクイズの出題に背筋が凍った男性は多いのではないでしょうか。女性は「告白記念日」「交際1周年」などと記念日が好きで、その期待を裏切る男もまた多いと聞きます。

これは社会的評価を優先する男性には「パーソナル記念日」の価値がわからないからです。一方の女性は自分の価値・世界観を重視します(「女性」「男性」は性質的価値観のことで、戸籍上の性別とは異なります)。

ところでパーソナルな記念日が、商売に活用できることをご存じでしょうか。もちろんホームページにも。

恐縮ですが、本日8月8日は私たち夫婦の10回目の結婚記念日。勝手に「記念日号」をお届けします。

ニワトリ、肉、味噌の記念日商法

28日はニワトリ、29日はお肉、30日は味噌。毎月その日が記念日です。28日にはケンタッキーフライドチキンにのぼりが立ち、29日には精肉店や焼き肉店がイベントを催します。「ニワトリ」ならゼロを輪(ワ)と呼んで「20」のほうが語呂はいいのですが、「給料日25日の攻防」で紹介したように、財布のひもがゆるむ時期を選んでいるようです。

記念日には駄洒落や語呂合わせを起源とするものが多く、6月28日の「パフェの日」のように日本プロ野球史上初の完全時代(パーフェクトゲーム)達成の日とデザートのコラボレーションという強引なものまであります。

強引でも用意するのは「記念日商法」と呼べるほどの効果があるからです。

コンサルが死んでも口にできない、消費は何となくという真実

記念日商法の元祖は「土用の丑の日」です。

その始まりには諸説ありますが、平賀源内が「本日丑の日」と鰻屋に貼りだしたことが「商売用」の元祖と言えるでしょう。

現代では鰻に含まれるビタミンB1が夏バテ防止に効くとされていますが、希代の天才平賀源内とはいえ当時はビタミンという概念はなく、日本人の鈴木梅太郎博士が1910年に発見するまで待たなければなりません(オリザニンと命名したため“ビタミン”の名付け親ではありませんが)。

つまり「鰻食の日(土用の丑の日)」が制定された当時、「夏バテに効く」という合理的な理由はなかったのです。

消費活動は合理的・論理的な理由が必ずともなうわけではありません。何となくなのです。

ボックスティッシュは「ニーズ」で売れるのか

ボックスのティッシュペーパーを買いだめをする人は合理的な理由で購入しているでしょうか。

十分に在庫があるのに、特売されている「ボックスティッシュペーパー」を見つけると買い「安かったし、いずれ使うから」と説明します。倹約家のしっかり者のようですが、「電球」やトイレ用洗剤の「サンポール」で同じ話は耳にすることはあまりありません。

安いというのも購入後に値上がりと同じ程度の値下がりするリスクがあり、次回の底値(特売の下限価格)までの在庫ならまだわかりますが、過剰な在庫はティッシュ分の家賃を払っていることになり「経済合理性」から考えると説明が難しいのです。

その点を指摘してみると「ボックスが並んでいると安心する」といいます。「必要性(ニーズ)」ではなく、「自己満足(サティスファクション)」です。

「必要だから」というのは「言い訳(エクスキューズ)」なのです。

ニーズという遊び道具

会議室でコンサルタントが「ニーズ」を叫びます。

まだ存在しない商品やサービスにとって、市場規模という金脈の大きさを知ることができるので「ニーズ」は重要な意味を持ちます。

しかし、既に市場にあるもの(サービス)を売るなら、ニーズには慎重になるべきです。それは一定のニーズがもう満たされてしまっているからです。

あるものとの比較はわかりやすく、誰もが頷きやすいことから「ニーズ」は会議室での遊び道具に成り下がっていきます。会議室で「お偉いさん」は頷きたいものなのです。偉そうに。そこがニーズのニーズで、コンサルが声高に叫ぶ理由です。

ニーズが不要だというのではありません。ただ、消費は……特に買い回り品は「何となく」という要素を忘れてはならないということです。

エクスキューズという口説き方

記念日商法とは「言い訳(エクスキューズ)商法」といっても良いでしょう。

ダイエットをしていてもニワトリの日だからケンタッキー。住宅ローンで節約していても肉の日だから焼き肉といった「言い訳」です。

また、2割3割の値引きが本当に当たり前となり、安いだけに魅力を感じないどころか「もっと安くなるんじゃないの」といった邪推がまかり通るようになりました。

そこで「記念日」の出番です。生ビール半額、食べ放題プラン、29%割引はすべて「肉の日」だから。「記念日」という(店側の)エクスキューズがあれば素直に受け入れて貰えるのです。

「何となく」の背中を押すということです。

毎日がスペシャル

神話も民話も伝説もない「スイート10ダイヤモンド」や「給料の3か月分の婚約指輪」が受け入れらたのも、記念日を巧みに利用したからで、「バレンタインにチョコレート」も同じです。

そして何より「商売用」として「勝手に決められる」ことは魅力です。認可も申請もいらず「勝手にお店記念日」を作ってキャンペーンが打てるのです。

繁盛店を見て訳のわからないキャンペーンに出くわすことはありませんか? 繁盛店は活用しています。

言い訳は何でも良いのです。「記念キャンペーン開始記念日フェア」と今日から始めて見てください。

今回の記事だって「勝手に結婚記念日号」です。

※おまけ
ネットで肉の日は「社団法人 日本食肉協議会」が制定したと散見するので問い合わせてみると、詳しいものが不在と断った上で「知りません」とのこと。ネットのネタ元はなんでしょうか。そして、農水省御用達の団体ですが、ホームページはなく、予定もないとのこと。e-japanはどこへやら。

♪今回のポイント

記念日というエクスキューズ(言い訳)が消費の背中を押す。

既にある商品を買うのはニーズではなくサティスファクション。

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