企業ホームページ運営の心得

教祖に群がるビジネスモデル。インフォプレナーという甘い誘惑

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の十九

「年収8桁達成!」は本物か?

ネットの世界を歩いていると「3か月で年収が8桁に!」「金持ち●●の成功法則」「週末起業でプチリタイア」といったサイトに出会います。非合法なものはさておき、多くはインフォプレナー(情報起業家)という情報を元手に起業した、または目指す方のサイトです。関連書籍も多数出ており、簡単に成功するかのようなタイトルが目を惹きます。

果たして年収8桁達成は本当か? そんなに簡単に成功するなら・・・という誘惑に駆られたウェブ担当者も多いのではないでしょうか。

インフォプレナーはアメリカからやってきた「ビジネスモデル」です。「情報」だけで強烈に儲ける。嘘ではありませんが、全貌ではないのがポイントで、商売用ホームページを考える上で、重要なヒントが見えてきます。

そこで、2週に渡りインフォプレナーを紐解いてみます。

まじめに情報を扱うビジネスをしている人には腹立たしい内容もあるかもしれませんが、こういった商売をしている人もいるのだという話ですのでご了承ください。

一所懸命で感動させるテクニック

「商売は一所懸命やれば成功する。成功しない連中は一生懸命だからだ」

違いに気づいたでしょうか。「一所」「一生」の違いです。そこで続けます。「一生懸命。一つの生に命をかけるのは当たり前。だらだらと80年の人生で取り組むのではなく『一つの所(集中してビジネス)に命を懸ける』のなら成功するということだ」

これは当たり前の話。できる人は集中力が違うのです。

しかし、後述するようにインフォプレナーにとって大切なことは頷かせることですし、知っている人は客にはならないので問題ありません。「なるほど、一所懸命か」と感動する人がカモ・・・客なのですから。

信者は儲かると諭す教祖

インフォプレナーを目指す弟子が、師匠に「どうすれば商売は儲かるのでしょうか」と尋ねると、

「儲かるという漢字を分解してごらん」
「にんべんとごんべんで信。残るのが者、そうか信者だ!」

師匠はにっこりと笑って「それが商売の秘訣だよ」とほほえみます。

自分を教祖と信じる人を集めるのかが商売の秘訣ということです。老舗のそば屋のファンが信者化するように、一面の真実であるのが絶妙です。

インフォプレナーと詐欺の心理学的同一性

インフォプレナーは「心理学」を上手に利用します。

人は自分が同意したものを正しいと思う習性があるので、うなずかせることはとても重要です。「催眠商法」も頷かせるコトを悪用しています。

「健康になりたいですよね→同意(うなずく)」
「いいものは高いですよね→同意」
「商品の良さをわかりやすく説明→同意(サクラも含む)」
「法律で返品できることになっている→同意」
「損はしたくないですよね→同意」
「安く売れる理由を説明(嘘でも)→同意」

最期に「このチャンスを逃したくないですよね」と頷かせます。心理学者によると男性に向かって「あなたは男性ですね」といった「絶対に同意する質問」からはいると信用しやすいといいます。

インフォプレナーが「金持ちになりたいですよね」「成功したいですよね」というのは煽るためではなく頷かせるためのものです。

昭和型営業からのコペルニクス的転換

「私はそんなに単純じゃない」という方もいるでしょうが、実はそちらが多数派。

そして、インフォプレナーの営業方法は頷かせるのではなく、頷く人を探すことなのです。

昭和の頃、営業マンは客をなだめすかして説得して契約をとっていました。

インフォプレナーは頷く人だけを相手にします。説得はしません。名簿やDMリストを買い集め、分母を大きくして絶対数を積み上げます。仮に頷く人が1%いるなら、1万人で100人ということです。

説得ではなく、多くの人に知らしめることにエネルギーを割くのです。ダイレクトメール、電子メール、インターネット、商業出版が利用されていることもあります。

ネットの世界にインフォプレナーが大繁殖したのは、メルマガやブログを使えば分母を大きくするコストを低く抑えることができ、頷く客だけを相手にする営業手法にマッチしたからです。

裏を返せば、説得型の「昭和の営業」はネットの世界では不向きだと いうことを教えてくれます。

“囲い込み”こそが「成功法則」のビジネスモデル(?)

誰でもできる「成功法則」の実力を計るには、自称成功者書き下ろし書籍の発行部数と彼らの紹介する「成功者」の割合を計算すると見えてきます。成功しなかったのは一所懸命さが足りなかったといわれればそれまですが。

実はインフォプレナーの真の「成功法則」とは宗教型ビジネスモデルで、自分を教祖とあがめる信者を増やすことが肝なのです。信者を集めればお布施のように会費をとってもいいですし、絵馬の代わりに「教材販売」だってできます。

9900人に相手にされなくても、集まった100人は心酔しているという点が重要なのです。

集まった100人が年収8桁への道を開いてくれるのです。

宗教やっている人はみんな優しい

20年ほど前「道場に行かない?」と誘われました。「帰りにお寿司でも食べようよ」と女性にいわれて粗忽な若者に断る理由はありません。

行った先は「あなたの幸せ祈らせてください」という活動をしているところ。知人に相談すると「染まりやすい性格だから距離を置いた方がいい」といいます。おごって貰った恩義から「優しい人たちだ」と反論すると、知人は「宗教をやっている人はみんな優しい」と静かにいいました。

信心は人それぞれ。教祖の元に集った100人は名刺交換で互いの成功を励まし合う仲間となります。100人の大人が成功を願って集まれば某かの取引が成立することでしょう。もちろんこれも教祖のおかげ。

祈れば幸せになれる、教祖の教えに従えば成功できる。みんな一所に、しかも簡単に。

もちろん、誰にだって簡単に成功できます。一所懸命な集中力さえあれば。

♪今回のポイント

頷く“信者”を増やせば本当に儲かる。好意的な人の前向きな勘違い。

2週連続企画、次回はインフォプレナーの儲けの仕組み。

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