ウェブサイトに必要なものは「香り」と「説得力」/ジョン・クワルト-ヴァン・ティベイダー

Future Now, Inc.ジョン・クワルト-ヴァン・ティベイダー氏
講演レポート&インタビュー

コンバージョン率0.86%→54.1%を実現したカリスマコンサルタントが語る
お客志向のウェブマーケティング改善術

米国のコンサルティング会社Future Now,Inc.は、宝飾卸業者のコンバージョン率を0.86%から54.1%にまで向上させた実績で注目を集めている。その立役者となったのが、同社のカリスマコンサルタントであるジョン・ティベイダー氏だ。

そのティベイダー氏が2006年11月9日、デジタルフォレスト主催のイベント「第2回 WebマーケティングROI Day」において、「お客様志向のWebマーケティング品質改善」と題した講演を行った。驚異的なコンバージョン率の向上を実現したその秘訣とは何か、講演の内容とともに同氏への特別インタビューと併せてお届けする。

TEXT:編集部
写真提供:デジタルフォレスト

コンバージョン率の向上はWeb担当者にとっての使命

ジョン・クワルト-ヴァン・ティベイダー氏
Future Now, Inc.

どのような企業ウェブサイトであれ、必ず何らかの目的を持っている。多くの場合その目的は、サイト訪問者に何らかのアクションをとってもらうことだ。商品購入、資料請求、プロフィール登録などさまざまだが、このアクションの数を増やすことがビジネス的な成果へとつながる。

アクションの数を増やすには、まずサイトのアクセス数向上が必要なのは言うまでもない。それと同時にもう1つ重要な要素として、訪問者のうち何人がアクションに結びついたのかという「コンバージョン率」がある。

「アクションの数=アクセス数×コンバージョン率」なので、「アクセス数」と「コンバージョン率」のいずれか、またはその両方を向上させることが、Web担当者のミッションだと言える。しかし、特にコンバージョン率は、上げようと思ってもなかなか思い通りにいかないのが現実で、多くのWeb担当者の悩みの種でもある。

アクセス数の向上については、従来型の広告、SEOやSEM、メールマガジンなど、数多くの手法が存在しており、ウェブサイトを立ち上げたらまず行う施策として広く知られている。一方、コンバージョン率の向上は、ウェブサイトのアクセス解析や訪問者のプロフィール分析、ユーザビリティ改善などさまざまな要素が複雑に絡み合うため、アクセス数の向上ほど単純にはいかない。また、アクセス数が成功の指標としてわかりやすく、他人(たとえば上司)にも説明しやすい数字であるのに対して、コンバージョン率は正しく理解すること(させることも)が難しく、おろそかにされがちという現実もある。

コンバージョン率とはお客を説得する能力

そんなコンバージョン率だが、「常にお客の視点で考えれば、おのずとコンバージョン率も着いてくる」と主張するのが、米Future Nowのジョン・クワルト-ヴァン・ティベイダー氏である。

同氏は講演の冒頭で「コンバージョン率」という言葉を次のように定義した。

コンバージョン率とは、サイト訪問者に対して、こちらが望む行動(たとえば商品の購入)をとってもらえるように説得をする能力でありその指標

さらに、企業が商品を買ってもらうという目的を達成してもらうには、まず訪問者にとっての目的を達成してもらう必要があるという。

必ずしも「訪問者の目的=商品の購入」というわけではないのだ。訪問者の目的が何かを考えることがまず前提としてあり、それに関連したものを提供できることをしっかりと伝えることができるかが、同氏の提唱する「お客志向」の根底にある哲学だと言える。

ここ数年、EC(オンラインショッピング)の市場は成長しているが、コンバージョン率は、2~3%の間を行ったりきたりしているだけというケースがある。期待通りにコンバージョン率が上がらず、がっかりしてしまうこともある。一方、アクセス数を上げるためのコストは、年々増大している。SEMに費やされるコストは、2005年に比較して80%増加しており、キーワード広告の入札額は高騰し、企業間の競争もよりいっそう激化している。結果として、1アクセス当たりのコストが増加し、各社はアクセス獲得コストのインフレに苦しんでいるのが現状だ。

真の目的はアクセス数ではなく利益に結びついたかどうか

ティベイダー氏は、ここで改めて「アクセス数が欲しいのか、結果が欲しいのか」を考えてほしいと言う。

テレビやラジオ、新聞といった従来の広告と比べたときに、現在のウェブにおけるコンバージョン率は妥当なのだろうか。一般にダイレクトメールではコンバージョン率が2%あれば成功だと言われているが、ウェブにおいても2~5%が一般的だ。

テレビやラジオでは、企業側は一方的に情報を発信するが、ウェブを使えば逆にお客のほうからドメイン名や検索エンジン、メール、リンクなど、さまざまな顧客情報を提供してくれる。そういった違い(「利点」と言えるだろう)があるにもかかわらず、果たして2~5%という数字は妥当なのか。

多くのメディアでは、さまざまな会社のウェブビジネスにおける成功事例を紹介し賞賛しているが、それらはすべてアクセス数を基準に判断されているものだ。アクセス獲得のためのコストがいくらかかったのか、そして最終的にいくらのお金が残ったのか、つまり“結果”については考慮されていない。EC市場全体の著しい成長によって、その問題が影を潜めてしまっているのだ。

アクセス数を上げるためのコストが増加している今、適正なコンバージョン率とは何かについて見直す必要がある。

今のアクセス解析の実態は「解析のための解析」でしかない

コンバージョン率を上げるための試みとして、アクセス解析が注目されている。離脱ページの特定、ページごとのアクセス分析、経路分析、シナリオ分析レポート……。確かに、これらのレポートには多くの詳細な情報が含まれている。しかし、“人”についての情報は含まれていない。

米国では、「ツールさえあれば、売ることができる」「アナリスト(分析の専門家)を増やしさえすれば、もっと利益を出せる」という考えが蔓延していて、大事なことが見逃されているという。ティベイダー氏は、「コンピュータを使えば、いくら売ることができたのかが1セント単位で計算できる。しかし、本来はどれくらいまで売れる可能性があったのかまではわからない」という、ウォルマート創業者サム・ウォルトンの言葉を紹介した。つまり、ツールを使うだけでは、適正なコンバージョン率までは知りえないということだ。

さらに、サイト訪問者を「ユーザー」と呼ぶ習慣についても異議があるとした。「“ユーザー”という呼び方はシステムの一部を連想させるから」というのがその理由だ。たとえば、マイクロソフトのツールを使って仕事をしなければならない場合、そのツールを使わなければ目的を達成できないので、そのツールのユーザーでありシステムの一部となる。ところが、買い物という行為は、その人の自発的な意思によるものだ。自分が買いたいから、ウェブサイトを訪れて、商品を探して、購入する。「お客志向」を実践するには、ユーザーと呼んでしまう概念自体から変える必要があるということだ。

冒頭のコンバージョンの定義とその前提となった、「まず訪問者にとっての目的を達成してもらう必要がある」という言葉を改めて考えたい。

ウェブユーザビリティの権威ヤコブ・ニールセンによれば、「ユーザーはウェブページを見て、自分の目的に関係がなさそうだと感じたら、すぐにバックボタンをクリックする。ナビゲーションには目もくれない」のだという。

ウェブサイトに必要なものは「香り」と「説得力」

コンバージョン率を上げるために必要なものは何か。ティベイダー氏は、それを「匂い(scent)」と「説得力(persuasion)」という言葉で表現した。これらはそれぞれ、「お客が探しているものがページに含まれていて存在感を放っているか(=関連性)」「商品の購入までにいたるストーリーの提示」と言い換えられる。

「お客はウェブページを開くと、まずキーワードを探そうとする。それを見つけるとクリックして進む。その過程でだんだんと、自分が欲しいものが見つけられそうだという自信と確信を持つようになる」(ティベイダー氏)

新車を探しているのであれば、「新車」をクリックする。さらに次のページで、特定の車種に決めているなら、その名前をクリックする。

「お客が最終的に目的を達成させられるかどうかは、探していたキーワードが最初のページに現れるかにかかっている。目的のものを見つけられた場合の72%は、そのキーワードが最初のページに記されていた。一方、見つけられなかった場合では、最初のページにキーワードが記されていたのは6%であった」という調査結果を紹介した。

そして、これはまさにグーグルがキーワード広告で実践しいることだという。

ページの中で「匂い」を発する。確かにグーグルの検索結果には、ページへのリンクにも概要にも検索語が含まれていて、太字になっていることに改めて気づく。

最後にティベイダー氏は、悪い例としていくつかのキーワード広告とそのリンク先のサイトを紹介した。

ソニーのプラズマテレビを検索したのに、ソニー製ラジオのページに飛んでしまうもの。デジタルビデオを検索したのに、カメラ製品のないページやデジタルカメラのページに飛んでしまうものなど。中でも印象的だったのは、スーパーボウル中のテレビCMでウェブサイトへの誘導を促したものだ。女性のセクシーな映像が流れて「続きはウェブで」と出る。ところが、サイトのほうはまったく異なる雰囲気で、CMの女性はどこにもいない。代わりに、レンタルサーバーやドメイン登録などのサービスが並ぶ。訪問者に対する匂いも説得力も皆無で、「セクシーな女性」を目当てにやってきたであろうほとんどの人は、バックボタンをクリックすることになるはずだ。

これらのサイトには、やってきた人々に対する説得力とその勢いがないとティベイダー氏は言う。

OneStat.comによる調査では、ページの離脱率は1ページ目9.52%、1-2ページ目54.60%、2-3ページ目16.56%という結果が出たそうだ。お客の求める「いい匂い」を発し、関連性のあるものをきちんと提供できれば、ページを進むごとにこの割合は低くなる(結果としてコンバージョン率は上がる)という。

講演では、コンバージョン率向上のための具体的な手法や各論については触れられなかった。これは、何か決まったやり方があるわけではないということの裏返しだろう。サイトごとにその目的も異なれば、最適なアプローチも違ってくる(だからこそティベイダー氏のようなコンサルタントが必要とされる)。しかし、講演を通して示された「お客志向」の考え方とサイトに「説得力」と「匂い」が必要だという話は、言われてみれば当たり前のことではあるが、多くの示唆を与えてくれるものだ。ウェブにおいては、お客の行動は“数字やデータ”として見えてくる。それがウェブの特徴であり利点なのだが、とはいえサイトにやってくるのは“人”なのだ。何の目的でウェブサイトにやってくるのか。ページを見てどんな印象を持つのか。ウェブサイトの運営においても、その視点と想像力は忘れてはならない。

ウェブマーケティングのカンファレンス
第2回 WebマーケティングROI Day
1000人の定員が満席となった基調講演の会場
ニューズ・ツー・ユーの神原弥奈子氏
多くの人が詰め掛けた展示会場
写真提供:デジタルフォレスト

2006年11月9日、デジタルフォレスト主催によるウェブマーケティングカンファレンス「第2回 WebマーケティングROI Day」が、東京ビッグサイトで開催された。同イベントは、国内外でネットビジネスやマーケティングにかかわる専門家を講師として招き、さまざまな手法や費用対効果の改善、未来像などについて講演や対談を行うというもの。前回は450名が参加したが、今回は1000人の定員に対して1500人の参加申し込みがあったという。

基調講演では、米Future Nowのジョン・ティベイダー氏のほか、ネットエイジグループ社長の西川潔氏、サイバーエージェント社長の藤田晋氏による「Webマーケティングの未来像」と題した対談などが行われた。また、デジタルフォレストによるアクセス解析やツールの解説、ニューズ・ツー・ユー社長の神原弥奈子氏による「ネットPRの可能性」、ビルコム社長の太田滋氏による「CGMを活用したネットPR」など、多様なテーマのセッションが行われた。セッションのほかに展示会場も用意され、各社の出展ブースで製品やサービスの解説が行われた。第3回は、2007年8月1日に東京国際フォーラムで開催し、2000人の来場者を予定している。

株式会社デジタルフォレスト 「WebマーケティングROI Day

ジョン・クワルト-ヴァン・ティベイダー氏インタビュー
お客を一番良く知っているのは営業の人々
その言葉に耳を傾けなければならない

●編集部  マーケティングにおいて、ウェブとリアルの最大の違いは何か。

ジョン・クワルト-ヴァン・ティベイダー
(John Quarto-von Tivadar)
米Future Now, Inc.のCTO(Chief Thinking Officer:最高考案責任者)。同社は、北米を中心にオンライン/オフラインのマーケティングのコンサルタントを行っている。
http://www.futurenowinc.com/

●ティベイダー オフラインのマーケティングは、営業の側面が強い。営業というのは何千年も前からあるから、人にどうやって物を売るかは多くの人が理解している。リアルで販売経験のある人に対して「すべてのお客に同じやり方で物を売るか」と質問すると「そんなことはありえない」という答えが返ってくる。ところがウェブの場合は、お客はみんな同じという姿勢で臨んでいるケースが多く見受けられる。リアルでの販売経験があれば、それは間違いだと知っている。オンラインであろうとオフラインであろうと、人自体は変わっていないのだから。ただし、オンラインはまだまだ熟成しつつある時期にあるという違いはある。

●編集部 コンバージョン率の価値とは。

●ティベイダー コンバージョン率というものは成功の尺度であり、それを高めることで、ビジネスの成長の糧となる。たとえば、コンバージョンが2%から3%になったら、たった1%の上昇だが売り上げは50%増加することになる。そしてそれは継続される。キャンペーンは、終わってしまうとまたお金を使ってやらなければならない。したがって、最初にコンバージョン率を上げ、その次にアクセス数を上げることを考えるべきだろう。コンバージョン率が上がるというのは、その企業において何かが埋め込まれた(ビルドインされた)ということ。ものを食べて消化して、また食べなければいけないというものとは違う。

また、人は数字を気にしがちだ。まわりの競合を見て、「あそこは2%、こちらは2.1%、うちは3%」と数字の比較を行う。そして、他社を打ち負かしたということで、それだけで自信を持ってしまう。本質的な問題は、「本来のあるべきコンバージョン率がいくつか」ということだ。本来得られるのは10%かもしれない。それに比べると3%というのは不十分ということになる。

コンバージョン率の最適化はアクセス解析で可能だが、お客の意向を知るための洞察は、人間でなければできない。現在のウェブマーケティングにおけるアプローチは、まず測定して、自分の願っている数字に最適化することになってしまっている。

それに対してわれわれが提唱するのは、測定の前に本来あるべき形の計画と設計をして、それから測定、最適化するという手法だ。

●編集部 サイトの訪問者に対してそれぞれが求める「匂い」を出す必要があるというが、それはつまりLPO(ランディングページ最適化)のことか。

●ティベイダー LPOは数ある方法の1つでしかない。マーケティングの結果として得られるのがLPOだ。ランディングページまで来たら、そこでマーケティングは終わる。そこから先は販売の話になる。販売の経験があればわかることだが、お客は一人ひとり異なる。販売の段階になっても、常にモチベーションを探り続けなければいけない。

次の3つのことを常に自分に問いかけ続けなければならない。1つがお客は何を達成したがっているのか、2つ目は誰がそのアクションを取ろうとしているのか、そして3つ目は彼らが実際に行動に移すためにはどういった情報が必要なのかだ。

●編集部 最後にWeb担当者へ向けたメッセージを。

●ティベイダー まず、営業の人の言葉に耳を傾けること。常にお客と接しているのは営業の人々だからだ。ウェブサイトによっては、見栄えも良くないしコピーもいまいち、ユーザビリティだって最悪だけど、コンバージョン率は非常に高いというケースもある。それは、そのサイトがお客の目的や要望を正しく把握しているということだ。

これは、オンラインかオフラインかは関係ない。オフラインで営業力のある会社なら、オンラインになっても同じように力を維持できる。そのときは、営業の人からさまざまなインプットが必要だ。逆に、オフラインでのサービスが悪い会社はオンラインでも良くない。なぜなら、彼らはお客を理解していないし、人を見ていないからだ。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.4』 掲載の記事です。

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