初代編集長ブログ―安田英久

ウェブには編集力が必要だ - 御社には“価値あるコンテンツ”を作る人がいますか?

企業内において「コンテンツ」を作る役割のスタッフや体制作りに関する話題です
Web担のなかの人
ウェブには編集力が必要だ

今日は、企業サイト・マーケ・広報・ソーシャルメディアなど幅広く関係する話を。企業内において「コンテンツ」を作る役割のスタッフや体制作りに関する話題です。

御社では、顧客や見込み顧客に対してどんなメッセージを発信していますか? そして、そのコンテンツはだれが作っていますか?

そもそも、「価値あるコンテンツ」とは何でしょうか。それは、企業が自ら発信する、売り込みのためではない情報だと考えてください。

いまの消費者は、企業が売り込みのために伝えたいことを発信するだけでは、反応してくれなくなっています。また、マスメディアを通じた情報発信も信頼されづらくなっていますし、情報が洪水のようにあふれている時代にはマスメディアの効果も(相対的に)下がっています。そもそもネットでは、価値のあるコンテンツでなければ見てもらえません。

そのために、自社サイトやソーシャルメディアなどの場で、受け取る人にとって役に立つ情報や、感情に働きかけられるコンテンツを作ることの重要性が高まっているのです。それが「価値あるコンテンツ」です。

では、今の企業では、だれがそういった情報を作っているのでしょうか?

  • 事業の責任者が熱意をもって作る(小規模な企業ならば社長が自ら)
  • その筋のプロに頼む(広告代理店など)
  • 広告の担当者などが事業部から素材をもらって作る
  • 素材(のようなもの)を代理店や制作会社に渡して作ってもらう

といったところでしょうか。

しかし実際のところ、うまくいくのは(1)や(2)の一部に過ぎず、ほとんどは、売り込みのためのメッセージに終始していたり、会議用資料やプレゼン資料から抜き出した要素の箇条書きに近いものになっていたりする場合が多いのではないでしょうか。

現時点では、価値の高いコンテンツを作れる人を確保している企業は非常に少なく、少なくとも、企業はそういった意識で人材を考えてはいないようです。

世界的に有名なPRコンサルティング会社のエデルマンは、BBCディレクタのリチャード・サンブルック氏を、「CCO(最高コンテンツ責任者)」として5月から採用することを発表しました。サンブルック氏の役割は、エデルマンの顧客がオリジナルのストーリーを伝えるコンテンツを作って顧客に伝えていくことを助けること。代表のリチャード・エデルマン氏によると、サンブルック氏は顧客のニーズに合わせてニュースやコンテンツを作り、ソーシャルな技術を利用することに長けているとのことです。

書籍『マーケティングとPRの実践ネット戦略』の筆者であるデビッド・マーマン・スコット氏も、企業にとって今後重要性を増すものとして、興味深い情報や価値あるコンテンツを作って消費者を教育したり情報を伝えたりする「ブランド・ジャーナリズム」を提唱しています。そして、興味深いコンテンツを作るための人材として、既存のマスメディアで働いていたジャーナリストを雇うことを勧めています。

ここでは「ジャーナリスト」「ジャーナリズム」という表現が使われていますが、私はここで語られているの「編集者」の資質だと考えています。編集者というと文章を編集する役割だと思われがちですが、実は違います。編集者の本質は、対象となる市場や読者を知り、読者を惹き付けるために情報を集め、取捨選択して整理してコンテンツを作ったり仕上げたりすることです。

私は昔から「ウェブには編集力が必要だ」と言っています。もちろん自分が編集者だからというのもありますが、ソーシャルメディアの時代だからこそ、「編集」というスキルを見直すといいのではないでしょうか?

  • だれでも歌を歌えますが、プロのシンガーは聴く人の心を動かします。

  • だれでも料理を作れますが、料理のプロは、いつでもどんな材料でも、食べる人にとって魅力的な料理を仕上げます。

  • だれでも絵は描けますが、デザイナーによる「デザイン」は「絵」とは次元が違う役割や効果を発揮します。

  • だれでも広告文は作れますが、コピーライティングの専門家ははるかに効果的な見出しを作れます。

  • だれでも文章を書けますが、「編集」の専門家の手を経た文章はメッセージの伝達力や魅力が大きく変わります。

たとえばWeb担当者Forumで記事広告を作る場合は、広告主さんから得た情報をもとに、どういった切り口で情報をまとめるべきか、何を訴求するべきかを編集部がコミットして進めます。ときには広告主さんが当初考えていたものとまったく違う内容になることもありますが、得てしてそういう場合のほうが成果は高くなるものです。

オールアバウトの江幡社長も、昔から「ウェブには編集力が必要だ」としていた記憶があります。そのものズバりのソースは確認できませんでしたが、最近の取材でも「もうひとつの特徴としては、われわれが編集にこだわっている、ということです」と語っています。

ユーザビリティの権威であるヤコブ・ニールセン氏も、2000年の時点で「ウェブには独特の文章作法が必要であり、オンライン・コンテンツを熟知した専門のウェブ編集者を雇うべきなのだ」と書いています。

さて、御社では喜んで読んだり見たりしてもらえる「価値あるコンテンツ」を作り出していますか? また、価値あるコンテンツを作る仕組みを、組織のなかにしっかりともっていますか?

もしそういうスキルを社内に抱えておこうと考えるならば、不況で多くのマスメディアが人材整理を進めている今がチャンスなのかもしれませんよ。

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