Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報

ROIを意識したサイト管理――書評『Web Design for ROI』第3章

Design for ROI: Turning Browsers into Buyers & Prospects into Leads

私は以前、「通りすがりを購買者に、潜在顧客を顧客にする方法――書評『Web Design for ROI』第1章&第2章」という記事で、ランス・ラブデイ氏とサンドラ・ニーハウス氏の共著による『ROIを念頭に置いたウェブデザイン:通りすがりの客を購買者に、そして潜在顧客を顧客化する方法』(この本の詳細はwww.wd4roi.comをチェックしてね)を読み始めたって書いたけど、今日は第3章の「ROIを意識したサイト管理」から、ポイント部分を紹介するわね。

※Web担編注 念のために説明しておくと、ROIとは費用対効果のこと。ウェブサイトのパフォーマンスを単純にページビューやユーザー数でとらえるのではなく、ビジネス上の利益にどれだけ貢献したかを考える方法論のようなものだと考えてほしい。

第3章「ROIを意識したサイト管理」には、最大限のROIを得るためのウェブサイト管理方法について、考慮しなければいけないことや著者たちからの提案が列挙されている。

(1) なすべきことを知る

  • あなたはウェブサイトで何を達成したいのか?
  • あなたはウェブサイトのデザインやユーザビリティにどれくらい満足しているか?

以下の質問に自分で答えてみて。

  • 「組織の目的を達成するために、サイトはどのように利用できるだろうか?」
  • 「競合相手と比較してウェブサイトが貧弱、あるいは平凡なために、自分たちはどんな機会を逃しているだろうか?」

この助言は簡潔だけど役に立つわ。

どうして自分たちにはウェブサイトが必要なのかということを真剣に考えもしないで、「うちにはウェブサイトが必要だ」って考える企業はとても多いの。ウェブサイトを作る利点は? 目標は? 何のためにウェブサイトが必要なの? よく考えてみて。

それから、競合相手に関する情報を集めることも、ものすごく大事よ。

  • あなたの業界で、自分よりも優位に立っているところはどこ?
  • その相手がやっていて、あなたのしていないことは?
  • その競合相手は無料のツールを提供しているかしら?
  • 値引きは?
  • それともカスタマーサポートが優れているとか?
  • イメージが魅力的なのかな?

競合相手のウェブサイトを分析して、彼らがどんなコンテンツを提供しているか、どんなキーワードにターゲティングしているか、どういうサイトからリンクを獲得しているか、などをチェックすることは必要不可欠よ。

(2) 訪問者を知る

サイトは自分のために設計するんじゃない。訪問者のために設計するのよ。さあ、次の質問に答えてみて。

  • どうして人は自分のサイトに来るのだろうか?
  • 訪問者は、そこで何を見つけたいと思っているのだろうか?
  • どうすれば、訪問者にとって使いやすいサイトになるだろうか?

ユーザーの視点から自分のサイトを見てみるというのは重要なことよ。自分のウェブサイトについて、何らかのユーザーテストを実施することも検討してみて。新鮮な目でサイトを見るというのは絶対に良いことだわ。自分が人に仕事の校正を依頼するとき、どこを重点的にチェックしてもらいたいか、あるいは、人からウェブサイトの評価を依頼されたときに、相手がどこを見てほしいと言ってくるかを考えるの。自分のウェブサイトについても同じことよ。あなたは、自分のサイトを毎日見て、毎日手を加えているけど、新しい視点を持った誰かが、あなたの見逃していたことを的確に捉えてくれるかもしれない。

(3) ウェブサイトを1つの事業所として扱う

ウェブサイトが、全体として自分のビジネスにどのように貢献するかを考える。サイトは、あなたのビジネスプランを補強するものでなければならない。

(4) ウェブサイトの戦略を策定する

サイト戦略を持つこと。明確な目標を定め、チームのメンバーと連絡を取り合って、その目標の達成に尽くすのよ。お薦めのウェブサイト戦略を以下に挙げておくわね。

  • サイトの目標をリストアップする
    目標と戦略を混同しちゃだめよ。目標は到達点であるのに対して、戦略はその目標を達成するための方法なの。目標は「何」で、戦略は「どのように」ということ。
  • 主要な訪問者(プライマリ・オーディエンス)と一般の訪問者(セカンダリ・オーディエンス)をリストアップする
    主要な訪問者というのは、最も大きなROIをもたらしてくれそうな相手で、一般の訪問者はその他全員のこと。訪問者の視点をより深く理解するために、ペルソナや訪問者のプロフィールを作成することも検討してみてね。
  • ユーザーがサイトを訪れたときに疑問を持ちそうなポイントをリストアップする
    たとえば、こんな感じ。
    • ここのサービス/製品にはどんな機能があるのか?
    • 費用はいくらかかるのか?
    • この製品を使ったら、どんな利点があるのか?
    • 印刷版のカタログのようなものは入手できるのか?
    • 提携相手の募集はしていないのか?
    といったような質問を列挙してみるの。中には、あなたのサイトでなきゃ出てこないような質問があるかもね。
  • 競合相手を分析する
    上にも書いたけど、競合相手のサイトは必ず調べておくこと。どうやってユーザーの行動を喚起してる? ランディングページは? などなど、しっかりチェックしておく。
  • サイトのトラフィック源を細かく分析する
    検索エンジン、検索連動型広告、Eメールマーケティング、バナー広告、ダイレクトナビゲーション、提携サイトなどについて、それぞれからどのくらいの割合でトラフィックを得ているかしら?

    サイトのデザインに変化をつけて、トラフィックのソースごとにランディングページを作成することも考えてみてね(ランディングページについては、第4章でもっと深く掘り下げているわ)。

  • 戦略を磨く
    目標を再検討し、その達成に向けて特に必要な戦略を強化する。
  • 戦略の成否を測るには、どの測定方法が適切かを見きわめる
    そしてこれが、次のセクションへと続く……

(5) 適切な測定法を見つける

このセクションでは、一部の測定法だけに頼り過ぎて、他の測定法を無視してしまうことの危険性を警告している。ラブデイ氏とニーハウス氏は、ウェブ報告(分析)ツールに関する問題点をいくつかリストアップしているわ。

  • データが多すぎる
    データが示す意味や、なぜそのような数字になっているのかもロクに考えず、数字だけを取り上げて神経質になるサイトの所有者があまりにも多い。
  • 完璧ではない
    分析プログラムが異なれば、それが示す統計結果のデータも変わってくることは多くの人が知っているわ。異なるプログラムで矛盾するデータが示されたからといって、心配したり、驚いたりする必要はないのよ。キーワード調査ツールのように、データを相対的に見ることが必要なの。単に数値が100%正確だとは思えないからといって、分析を信用しないというのはよくないわ。
  • コンテキストが欠如している
    分析結果の数字だけを見て、「今日は5000人のビジターがあった」なんて言ってちゃだめ。5000人は良い結果なの? それとも悪い結果なの? より大きな流れの中で数字を見て、統計を全体として捉えること。分析情報からその意味を読み取る方法を知っておかないとね。

ウェブサイトの成否を測るときの重要な原則を以下に挙げておくわ。

  • 人々の発言と実際の行動の違いに気をつける
    どうやって自分のサイトでその商品を見つけるつもりなのか、ユーザーに尋ねてもうまくいかない。実際に彼らが商品を探す行動を観察するほうがうまくいく。
  • サイトの成否は金額で考えること
    「コンバージョン率が2.7%に上昇した」と言うのと、「コンバージョン率の上昇により、売上が20万ドル増えた」というのと、どちらがわかりやすいかしら?
  • 傾向に注目する
    測定結果の数値が上がったのが、長期的なものなのか、たまたまその日だけのものなのかを確認する。長続きなどしない短期的な浮き沈みにとらわれないようにね。
  • 正確性よりも整合性が重要
    さっきも書いたとおり、分析結果は100%正確じゃない。だから、数値そのものよりも、測定値の整合性に注目すること。
  • さまざまな測定結果を組み合わせてサイトを見る
    できれば、顧客の行動を最初から最後まで追跡できる方がいいわ。

重要な測定データとしては、企業測定データ(企業の経営幹部などが成功を判断するために使う)、サイト測定データ(サイトのアクセス解析結果など)、ユーザー測定データ(ユーザーのフィードバック)があるわ。

さほど重要視しなくていいのは、次のようなデータかしら。

  • トラフィック
    ビジター数は多いのにコンバージョン率が低い場合、トラフィックをチェックしてもあまり意味がない
  • サイトの滞在時間および平均ページビュー
    傾向を捉えるにはすぐれたデータなんだけど、解釈を間違いやすいのよね
  • ヒット数
    今は1997年じゃないんだから!
  • ユーザーアンケート
    質問自体が主観的なことがあるし、本気でユーザーの意見を取り入れようとしても、文章が雑駁で役に立たない回答が多い

(6) サイト設計の手順をうまく考える

たいていの人は、次のような順序でウェブサイトを設計するでしょ。

トップページ

カテゴリページ

詳細ページ

オーダーフォームと精算ページ

ランディングページ

でも、ROIの観点から見ると、サイト設計で重要なのは、次のような順番になるわ。

オーダーフォームと精算ページ

ランディングページ

詳細ページ

カテゴリページ

ホームページ

SEOmozのサイトについて言えば、ランディングページやサインアップページの最適化にあまり時間を費やさないで、他のところにたくさんの時間をかけ過ぎていた、ってことが言えるわね。今、ランディングページやサインアップページを改良してるところよ(それから、サイトのデザイン、レイアウト、機能もすべて一新する計画もあるの。リリースは今秋中を予定してるわ)。


私ったら、この本が本当におもしろくてたまらなくなってきたわ(断っておくけど、これはスポンサー付きレビューじゃないわよ)。最初の2つの章はほんの導入部だったけど、この第3章はとても役に立ったわ。第4章も読み終わっちゃってるんだけど、第4章ではランディングページについて論じていて、SEOmozのランディングページにも使ってみたいと思うようなすばらしいヒントがいくつもあったわ。来週はその第4章について書くわね。では、それまで、頑張ってROIの向上に励んでちょうだい!

用語集
ROI / アクセス解析 / コンバージョン率 / サイトの目的 / ナビゲーション / ヒット / フィード / ページビュー / ユーザビリティ / ユーザーテスト / リンク / 検索エンジン / 検索連動型広告 / 訪問者
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

ユーザビリティテスト
ユーザビリティテストとは、Webサイトやアプリなどのユーザビリティ上の問題点を見 ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]