はじめてWEBエキスパート(専門家)コラム 写真撮影入門(全12回)

「絞り」と「シャッター速度」の密接な関係――ボケ味やブレをコントロールしよう(第6回)

第6回は、「撮影モード」。背景のぼかし方をコントロールする「絞り優先オート」と、被写体の動きをコントロールする「シャッター速度優先オート」について解説します。
※「はじめてWEB」は2020年10月13日をもってサービスを終了しました。

みなさんは、普段どのような「撮影モード」で撮影することが多いですか?
オートでしか撮影したことがないなら、ほかの撮影モードにチャレンジしてみましょう。
第6回では、背景のぼかし方をコントロールする「絞り優先オート」と、被写体の動きをコントロールする「シャッター速度優先オート」について解説します。

「オート」を卒業する日

オートで撮影したら、写真が次のような残念な状態になったことはありませんか。

  • 動きの速い被写体が、ブレてしまった
  • 背景をぼかしたかったのに、まったくボケていなかった
  • 全てのものに、しっかりとピントが合っていなかった

左:AUTO(オート)のアイコンで表示 右:シャッタースピード、絞り、フラッシュの全てをカメラが自動設定(青枠)

オートは、カメラが考えてくれるベストな設定です。「絞り」「シャッタースピード」ともに計算されており、確実な撮影への近道ではあります。しかし「動き」や「ピント」を優先した趣のある写真を撮りたい場合、オート以外の撮影モードをお勧めします。

絞り優先オートで「ボケ味」を美しく

背景が強くボケて、一番見せたい被写体がフワッと浮き出るような印象の写真が撮れた、それがきっかけで写真撮影が好きになり、腕がどんどん上達した、という人が多いものです。

背景のボケ味(ぼけあじ)をコントロールするのに一番適したモード、それが「絞り優先オート」です。

左:AもしくはAv(ApertureValueの略)のアイコンで表示 右:撮影者が設定するF値(赤枠)、自動設定されるシャッタースピード(青枠)
絞りとボケ味の関係
絞りとボケ味の関係

「絞り」とは、レンズから入ってくる光の量を調節する仕組みです。光を通す穴の大きさは、F値という単位で表されます。

特徴は数字が大きくなると穴は小さくなり、数字が小さくなると穴は大きくなります(一番小さい数字を「開放」ともいいます)。開放にするとピントが合っている範囲が狭くなり、手前にピントを合わせるとしっかり背景がボケるという仕組みです。

絞り優先オートはその名の通り、絞りを撮影者の思いのままに変えられるので、シャッタースピードはカメラの内蔵露出計が測光した露出(第4回「被写体が生きる明るさのコントロール」※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました
参照)になるように自動設定されます。

ピントが合っている範囲のことを、「被写界深度」といいます。撮影した写真を見て、被写界深度を深く(ピントが合っている範囲を広く)したい場合は、その設定から(絞りを)絞込みます。反対に被写界深度を浅く(ピントが合っている範囲を狭く)したい場合は、絞りを開けます。

絞り優先オートが生きる撮影

  • 静物・・・絞りを開け、花などの動かない被写体の前後をぼかす
  • 風景・・・絞りを絞り、近景から遠景までシャープに写す
  • ペットや子供・・・絞りを開け、速いシャッター速度でぶれないように撮影する

※絞りを絞ると文章で書くと違和感を感じるかもしれません。
口頭で伝える時は単純に「絞る」や「開ける」、「開く」といいます。

絞り優先オートは、ボケ味をコントロールして、写真を仕上げる撮影モードです。撮影時はカメラ背面の液晶モニターやパソコンの画面をしっかり確認しながら、目的に合った写真になっているかをチェックしましょう。

掲載されるサイズによっては(特に小さく取り扱われる場合)、被写界深度が浅く仕上がった写真なのに、思ったよりボケていないように見えてしまいます。F8→F5.6→F4と段階的に撮影をしてみて、「実際に使われるサイズ」で確認することで、適正なボケ味かどうかを判断することが重要です。

シャッター速度優先オートで「ブレ」をコントロール

ボケ味を調整する「絞り優先オート」に対して、シャッター速度を撮影者が調整するモードを「シャッター速度優先オート」といいます。連動する絞りの数値(F値)は自動設定されます。

左:SもしくはTv(TimeValueの略)のアイコンで表示 右:撮影者が設定するシャッタースピード(赤枠)自動設定されるF値(青枠)
シャッター速度とブレかたの関係
シャッター速度とブレかたの関係
(人物が懐中電灯を持ち、一定速度で動かすところを撮影)

「シャッター速度」とは、レンズの絞り穴を通じて光を取り込む「時間」のことです。単位は秒で、1秒よりも短い時間になると分数で表します。

シャッター速度優先オートは、速度を撮影者の思いのまま変えられるので、絞りはカメラの内蔵露出計が測光した露出になるように自動設定されます。

シャッター速度優先オートが生きる撮影

  • スポーツシーン、ペットや子供・・・高速シャッターにし、ぶれないように撮影する
  • 風景・・・低速シャッターにし、近景から遠景までシャープに写す
  • 星やろうそく等の弱い光・・・1秒前後かそれ以上の低速シャッターにし、明るく写す

シャッター速度優先オートは、被写体の動きをコントロールして写真を仕上げていく撮影モードです。絞り優先オートと同様、掲載サイズによっては、思ったほどブレていないように見えることがあります。1/60→1/30→1/15と段階的に撮影をし、「実際に使われるサイズ」で確認することで、適正な仕上がりになっているかどうかを判断することが重要です。

プログラムオート

左:Pのアイコンで表示 右:カメラがシャッタースピードとF値のみを自動設定(青枠)

プログラムオートは、絞りやシャッタースピードにこだわらない撮影にとても有効です。しかも、写真の明るさはそのままに絞りとシャッタースピードの関係をシフト(変更)できる、プログラムシフトという機能があります。

はじめに設定された値から、もう一歩こだわった撮影がしたい場合、シャッタースピードや絞りを変更できるので、慣れるととても便利です。

マニュアルモード

左:Mのアイコンで表示 右:撮影者がシャッタースピードとF値設定(赤枠)

マニュアルモードは、絞りやシャッタースピードを撮影者が決めて撮影します。他の撮影モードとは違い、カメラが判断した露出で撮影するという前提がありません。スタジオで照明機材(ストロボなど)を使い、撮影者が光量を調整する場合に使用します。

「絞り」と「シャッター速度」の離れられない関係

絞りとシャッタースピードは、常にシーソーのような関係を保っています。

背景までしっかりピントを合わせる目的の場合、「絞り優先オート」で絞りを絞る(F値の数字を大きくする)と、必ずシャッタースピードは遅くなります。「シャッタースピード優先オート」ではシャッタースピードを速くすると、絞りは開きます(F値の数字が小さくなる)。

いずれのモードも、撮影者が設定する相手側(シャッター速度優先の場合は絞り、絞り優先の場合はシャッタースピード)の変化にも気を配る必要があります。
特に絞りを絞る際は、シャッター速度が遅くなるので三脚を使用しましょう。カメラを固定でき、手ブレがなくなります(第1回「写真撮影の予備知識」※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました
参照)。

シャッター速度と絞りの関係
絞りシャッター速度
F161/30 秒
F111/60 秒
F81/125 秒
F5.61/250 秒
F41/500 秒
F2.81/1000 秒

絞り(F値)とシャッター速度組み合わせのパターン
(絞り:F8 シャッタースピード:1/125 という設定の場合)

絞りをF5.6に変えると、シャッタースピードが1/250に変わります。
シャッタースピードを1/60に変えると、絞りがF11に変わります。
※上の表の数値の組み合わせは、全て同じ明るさです。

レンズについて

いくら開放で撮影しても、レンズの焦点距離によってはボケにくくなります(レンズの「長さ」ともいいます。例えば18mmや50mm、200mmと記載)。

ボケ味は使用するレンズによっても変わってきます。「望遠(テレ)>広角(ワイド)」望遠レンズで撮影すると、同じF値でもボケ味が強くなります。

手ブレがおこる原因も、レンズの焦点距離に起因します。「1/焦点距離」以下の遅いシャッタースピードになると、手ブレをする可能性が高くなります。

現在はカメラ本体やレンズに「手ブレ低減機能」が付いていますが、なるべく三脚などを使用しましょう。

絞りやシャッタースピードのことがわかれば、このような写真は簡単な操作だけですぐに撮影できます。低速シャッターを試してみてください。

まとめ

撮影モードシャッタースピード絞り値
P(プログラムオート)カメラが決定カメラが決定
S(シャッター速度優先オート)撮影者が決定カメラが決定
A(絞り優先オート)カメラが決定撮影者が決定
M(マニュアル)撮影者が決定撮影者が決定

今回解説した撮影モードを選ぶポイントを、簡単にまとめます。

  • ボケ味を調整するには、「絞り優先オート」を使用すると便利です。
  • 被写体の動きをコントロールするには、「シャッター速度優先オート」を使用すると便利です。
  • マニュアルモード以外は、絞りとシャッター速度が必ず連動しています。絞りとシャッター速度の両方に注意しましょう。
  • マニュアルモード以外は、「露出補正」で明るさを調整しましょう(第4回「被写体が生きる明るさのコントロール」※「はじめてWEB」は
    サービスを終了しました
    参照)。

第7回は、ウェブサイトの看板となる「メイン写真の撮影」について解説します。

このコーナーのコンテンツは、KDDI提供の情報サイト「はじめてWEB」掲載の「エキスパート(専門家)コラム」の情報を、許諾を得てWeb担の読者向けにお届けしているものです。

※「はじめてWEB」のオリジナル版は掲載を終了しました

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