マーケティングオートメーションの正しい導入と間違った導入
マーケティングオートメーションの正しい導入と間違った導入

失敗しないマーケティングオートメーション選定7つのポイント

MAの選定で押さえるべき7つのポイントを紹介
庭山一郎(シンフォニーマーケティング) 2014/11/12 8:00 |
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「A社のマーケティングオートメーション(MA)はどうですか?」このような質問をよく受けますが、MAは企業のマーケティング戦略があって、ようやく選定に移れるものです。私は、国内外でMAの導入に関する数々の成功と失敗を目にしてきました。これまでの経験から、MAの選定で押さえるべき7つのポイントを紹介します。

マーケティング戦略がなくては始まらない

日本でマーケティングオートメーション(MA)が本格的に注目されはじめたことは、これまでの連載で説明したとおりです。最近はよく「MAって良いですか?」という質問を受けます。ときには製品名で「○○というMAはどうですか?」と質問されますが、正直これが答えに困ります。

たとえば、車に詳しい人が「ポルシェ911ってどうですか?」と質問されたとしても「良い車です」としか答えようがありません。でも質問する人が「家族5人で山の湖にキャンプに行くのですが」という目的を言ってくれれば答えは違ってきます。「そもそも2人しか乗れませんよ。荷物も積めないし、車高が低いのでオフロードには向きません」と答えるでしょう。

何でもそうですが、一般論ではなく「目的に対して最適かどうか」ということが重要なのです。

自分の会社がどういうマーケティングがやりたいのか、やるべきなのか

MAの選定でも、まず目的を決めることが先決です。目的が決まれば、「そのマーケティングプランを実現できること」が最優先の要件になって道具の選定に入れるのです。

また、製品選定において重要なことは「だれが運用するのか?」という問題です。米国企業と違って、日本企業にはマーケティングの専門知識や経験を持った人は存在しないことが多く、その場合、高度なマーケティングツールであるMAを専門家の力を借りずに活用するのはかなり無理があります。

担当する人やチームのリソースやスキル、使うエリアや言語、格納するデータ数やデータマネジメントの方法、レベルなどの要件が揃ってから選定作業を進めるべきなのです。

これはSFA/CRMでも言えることですが、間違っても道具の選定が先ではありません。あくまでもマーケティング戦略の基本設計が先なのです。

マーケティングオートメーションの導入で考慮すべき7つのポイント

ここで、私の経験から、MAの導入に関して考慮すべき「7つのポイント」を説明しましょう。

  1. 自動化はできない
  2. 道具を買ってもマーケティングはうまくならない
  3. 導入は情シスではなくマーケティング・営業部門が行う
  4. 自社のコンプライアンスとの整合性
  5. 最初から求める成果を決めておく
  6. 価格で決めない
  7. 「とりあえず」で導入しない

1. 自動化はできない

オートメーションという言葉が独り歩きして、直訳である「自動化」と勘違いされていますが、BtoB企業のマーケティングは自動化なんてできません。それはSFAを使っても法人営業を自動化できないのと同じことです。

もし「シナリオ設計をしてステップメールの原稿さえ用意すればよい」と考えているなら、MAの導入を中止すべきです。なぜなら、この使い方だとスパムメールを量産することになり、営業の足を引っ張り、企業ブランドを傷つける結果にしかならないからです。

2. 道具を買ってもマーケティングはうまくならない

コンピュータを使って文章を書くときに、多くの人はワープロソフトを使います。ソフトのおかげで編集が楽になり、文字数のチェックや変更履歴の保存、英文のスペルや誤字のチェックもできて大変便利です。しかし、そんなワープロソフトも、「文章が下手」「目の前の状況をどう表現してよいかわからない」「ボキャブラリーが乏しくて適当な言葉で表現できない」という根本的な問題は解決してくれません。

MAも同じです。マーケティング活動を支援し、便利にはしてくれますが、あくまで道具ですからマーケティングを勝手にやってくれるわけではありません。住み心地がよい家を建てたいと思った人が、土地を用意して大工道具を購入すれば家が建つわけではなく、その道具を使う大工さんや、大工さんが家を建てるための設計図が必要なのと同じですが、どういうわけかMAに関しては、土地と道具を前にして「何で家が建たないんだろう」と落胆しているような人が多いのです。

3. 導入は情シスではなくマーケティング・営業部門が行う

私の経験では、SFAにしろMAにしろ、情報システム部門が主管して導入したものが最も稼働しません。理由は簡単で、情報システム部門は物理的にも、心情的にも社内で最も営業現場から遠いからです。しかも、互いに相手を異生物と認識しているので、導入や運用に必要な量と質のコミュニケーションが取れないのです。

さらに、手組みのメインフレームの時代から基幹システムを支えてきたエンジニアからすれば、クラウドソリューションの実装などは「開発」ではなく「設定」のレベルです。だから舐めて掛かります。しかし、これらマーケティング&セールスソリューションにとって、検収はゴールではなくスタートです。難しいのはテンプレートの選定でもパラメータの設定でもなく、「運用」です。

私は、たとえITのリテラシーが低くても、MAの導入はマーケティング部門または営業部門が主管するべきだと考えています。BtoBマーケティングのデータマネジメントやコンテンツマネジメントは、情報システム部門の人間が想像でデザインできるほど、簡単ではないのです。

4. 自社のコンプライアンスとの整合性

また、自社のコンプライアンスとの整合性も検討する必要があります。多くのMAはクラウドで提供されています。これはクラウド上に自社の顧客・見込み客の個人情報を置くことを意味します。導入が決まった後で、コンプライアンスの解釈を巡って法務部門と導入主管部門が対立して運用が始まらない、という例をいくつか見ています。

日本の個人情報関連の法令は、ややこしいうえに整合性に乏しく、法令順守がやっかいです。企業の法務部門は基本的にリスクを避ける性質がありますから、保守的に社内ルールを決めてしまい、それに縛られてマーケティングができない、という例をよく目にします。

たとえば、Web上のプライバシーポリシーに、「当社は個人情報の第三者への開示・譲渡は一切行わない」と勇ましく書いてある企業がありますが、これを守ると郵便すら出せません。日本郵政は民間企業であり、宛名の住所や名前は紛れもなくなく個人情報です。守れないルールは作ってはいけないのです。

5. 最初から求める成果を決めておく

デマンドジェネレーション(営業案件の創出、詳細は第2回)は、費用対効果をしっかり数値化しなければ意味がありません。「どのレベルの営業案件を何件創出するのか」という目標と、その実現のためのプロセス設計を最初にしなければなりません

「まずはメール配信から始めます」という企業は何年経ってもメール配信にしか使えません。メール配信だけならば、国産で安くてすばらしいソリューションがいくらでもあります。

6. 価格で決めない

どのMAを選択しても、ひと昔前のERPやCRMのように二桁億円単位の投資などありません。また多数の営業担当にIDを配布する必要があるSFAと違い、多くのライセンスを購入する必要もありません。そういう意味でMAはとても安価ですから、価格だけで決めるのは愚かな選択です。

せっかく操作を覚えた頃に、選んだMAでは自社が行うべきマーケティング戦略が実現できないことに気がついても遅いのです。大騒ぎしてリプレースするという時間の無駄は避けるべきです。

7. 「とりあえず」で導入しない

「とりあえず導入して、使い方は追々考える」そんな風に導入されたSFAやMAで、まともに役に立った例を見たことがありません。

どの製品をどのターゲットに対して、どういうマーケティングを展開するのか。そのリードはどう収集し、何をキーに名寄せを行い、企業情報にはどんな情報を付与するのか。そして、どんなコンテンツでナーチャリングし、それをどうスコアし、どうやって営業部門に見込み客情報を渡すのか。

始めにも説明したように、こうしたマーケティング戦略を設計してから、それを実現できるプラットホームとしてソリューションを導入しなければ決して売上には貢献しません。とりあえずの導入なら今すぐ中止すべきでしょう。

◇◇◇

さて、最終回の次回はいよいよ運用について語ろうと思います。どんな導入ならうまくいくのか、何をしてはいけないのかを私の経験から書いてみようと思います。

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