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メディア業界の教訓をSEOの施策アイデアに応用する――パブリッシャーができること(後編)

筆者がメディア企業に提案したいと考えているいくつかのアイデアを紹介しよう。

この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。メディア企業の成長戦略を紹介した前回に引き続いて、今回は、筆者がメディア企業に提案したいと考えているいくつかのアイデアを紹介しよう。→前編をまず読んでおく

メディア企業が成長に向けて何を試みているかのイメージがつかめたところで、まだ言及していないアイデアやチャンスを簡単にまとめておく。

このリストには、他業界から拝借したアイデア、一般常識、そして、こうありたいという希望が少なからず含まれている。

では、メディア企業ができるだろうことを紹介していく。

①グーグルのサービスを取り入れる

グーグルの製品群の幅広さには驚かされる。メディア企業としてはどう選んでどう使えばいいのか混乱しかねない。これに対応するため、グーグルは「Google Media Tools」を作った。数ある製品を一個所に集め、注目の検索やトレンドからGoogle EarthGoogleクライシスレスポンスまで、あらゆる製品をパブリッシャーたちがどのように利用しているかの参照例などを説明する利用価値の高いサイトだ。

たとえば、NBC TodayはGoogleトレンドを活用して、週末の注目トピックを月曜日ごとに提供している。2014年1月に開催された「Google For Media Summit」では、参加者たちがBBC NewsにGoogle+のハングアウトが統合されたことについてツイートしていた。

BBC Newsがグーグルのハングアウトを統合している。実にいいね。

しかし、ただ使えばいいというわけではないこともある。次に紹介する「BBC News」での検索結果のスクリーンショットでは、検索結果で「2001年2月1日」と示されてしまっている。実際には2013年8月22日のものだ。

これが古いニュースだってことは分かってるけど、なんだかなあ……今日のBBCの検索結果ときたら、2001年2月1日付けになってる。

確かに、グーグルのサービスをうまく実装するのは難しい場合があるのかもしれない。けれども、諦めてはいけない。グーグルの検索結果に各種のグーグルサービスからの情報が現れることが増えるにつれて、純粋なオーガニック検索はページの下の方に追いやられるだろう。検索結果の最初のページに居続けるチャンスを最大限にするために、グーグルのサービスを取り入れよう。

ここから得られたことオーガニック検索での順位を追及すればよかった時代は終わった(これまたドクター・ピートの言葉だ)。新しいものに挑戦し、新しい製品をエンドユーザーに提供するという精神をもって、目の前にあるグーグル製品を取り入れるようクライアントに働きかけよう。

あなたにできること専門知識を提供する。「検索」「ニュース」「ローカル」「トレンド」など、グーグルの製品群の違いをちゃんと理解している人は少ない。インターネットの検索エンジンに関することなら何でもあなたの専門領域だ。

次にあなたにできることトレーニングを提供する。

クライアント企業や所属ライターたちに、こうした新製品の使い方を教えよう。経験豊富なコンサルタントとして、これまでに使ったトレーニング用のスライド資料や「ベストプラクティス」ガイドといったものを多少は持っているはずだ。指導者としての態度であなたに知識があることを示し、クライアントが新しい製品を使い始めるときにサポートしよう。

上述のBBCの例で見るとおり、即効性はないかもしれないが、いずれは実を結ぶ。

②変化に備える

技術の変化のペースは衰えることはない。今を、変化が連続している状態ではなく、2つの時代の過渡期と捉えるのは間違いだ。

―― リチャード・ギングラス氏(グーグル ニュース&ソーシャル製品担当シニアディレクター)

The New York Timesはこのアドバイスをしっかりと受け止めたようだ。というのは、サイトのデザイン変更を進めるなかで、最も重要なことはバックエンドを変えるという決断だからだ。私はこれを、未来に対する約束の証だと解釈している。

この柔軟な姿勢は賞賛に値する。Fast Co Labsもこのデザイン変更について次のように紹介している

新しいシステムはよりダイナミックだ。「一気に新しい形にする必要はなく、変化していくトレンドを見ながら、何度でもサイトに手を加えられる」ということなのだから。

ここから得られたこと変化は絶え間ない(これは、メディア業界で使われている技術に限ったことではなく、どこでもそうだろう)。

あなたにできることこれは、この記事で紹介しているなかで、企業の意思決定者を説き伏せるのが一番難しいものだろう。投資利益率(ROI)の保証なしに、バックエンドシステムに投資する重要性を理解してもらうのは大変だ。

これについていいアイデアがあればコメントに書き込んでもらいたいところだが、それでもやらなければならないということはわかってほしい。

これまでの経験上でベストな方法は、The New York Timesのようなサイトをケーススタディとして利用することだ。つまりは、新しいアイデアを迅速に提供できれば、プレスの注目を(おそらくはリンクとともに)集めて、より多くの読者をも集められるという論理だ。

The New York Timesのサイトに新たに登場した製品に注目し、Searchmetricsのようなツールを利用して検索における露出度を追っていけば、トラフィックの伸びがわかるだろう。そうしたデータを提案に含めるといいだろう。

嬉しいことに、The New York Timesのサイトを毎日自分でチェックする必要はない。Mediagazerの無料ダイジェストメールを申し込んでおけば、新製品の開発情報を知らせてくれる。

③ペイウォール(有料コンテンツの壁)モデルを理解する

ペイウォール(有料コンテンツの壁)モデルとは、オンラインコンテンツを有料購読者でなければ読めないようにする仕組みだ(基本的に無料で見られるようにしておき、一部を有料にする場合もある)。情報を出す側は、そうした手法で収益を得たりマーケティングに情報を活用したりすることが現実的になってきている。

「有料コンテンツの壁」(ペイウォール)が機能し始め(PDFファイル)、競合相手がそれをどのように活用しているかに注目する企業が増えてくるだろうことは、あなたにもわかるはずだ。コンサルタントとして、今あるペイウォールの種類やその実装方法を理解しておくことが重要だ。

手始めとしては、SEO BookMashableの記事が素晴らしいリソースになる。

グーグルも、「First Click Free」の使用について限定情報を公開している。これは、コンテンツを有料化しながら検索結果にも表示させたいと考えるメディア企業に向けたソリューションだ。

ここで目標とするのは、ペイウォールについての見解を深め、競合相手の活用のしかたについての最新の(そして、成功しているかどうかの)考察を進めることだ。

ここから得られたことペイウォールが実際に成果を上げ始めている以上、これについて尋ねられることもある。

あなたにできること前もって備える。事前調査しておけば、質問された(まず確実に質問される)ときには準備ができている。

④コンテンツを機能させる

メディア企業は必然的にたくさんのコンテンツを扱う立場に置かれる。ここで問題となるのが、こうしたコンテンツをうまく機能させる方法だ。いくつかアイデアを紹介しておこう。中には多少リスクを伴うものもある。

ⅰ)新しいページタイプを作る

新しいページタイプの作成は、昔ながらのトラフィック増加術だ。クライアントがこれを考えているなら、コンテンツの分類を別の角度から考えてみよう。

サラ・ウォッチャー=ボッチャー氏が著書『Content Everywhere』の中で言及しているように、BBCのFood(料理)ページは2011年に、コンテンツをレシピ別と材料別に整理したページを導入することで、このアプローチに挑戦した。その結果、オーガニック検索からのトラフィックが15万も増加し、全体のトラフィックもそれまでの倍の130万ビジターになった。

ここから得られたこと新しいページタイプはトラフィックの増加をもたらす。

あなたにできること標準的な情報アーキテクチャのベストプラクティスに基づいて、新しいページタイプを考えるという、創造的な作業を行う。

非凡な才能を持つ情報設計者、アビー・コバートは、この点をうまく説明して、「整理の仕方は5つある」と語る。クライアントのコンテンツの分類を考えるとき、これはよいスタート地点になる。

これで考えると、特にニュースメディア企業の場合は、コンテンツを郵便番号でタグ付けするのは良い方法だと思う。旅行者や、ある地域で賃貸物件や売り物件を探している人、歴史研究者、学校にも役立つリソースになるはずだ。特に重要なニュースを既存の地図製品と結びつけることができれば、携帯デバイスでの利便性がさらに高まるだろう。まあ、これはちょっと先走りすぎだろうけど。

ニュースサイトの中には、すでに新しいページタイプにトライしているところがある。実際APは、アーカイブページでおもしろい実験を進めている。歴史の転換点となった瞬間を後世に伝えるため、自社が保有する画像や記事を使って物語を構成しているのだ。

あれから50年――大統領の死:
APがとらえた1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の日

ⅱ)新しい企業と提携する

ほかの企業と提携することは、成功が保証されるわけではないので、危険視されがちだ。選択肢の1つとしては、市場にある新手のコンテンツ制作サービスと手を結ぶことが考えられる。

LinkedInがこのほど買収した「Pulse」は、LinkedInのプロフィールをベースにして、その人物が興味を持ちそうなニュースを集めて提供するサービスだ。

あるいは、「Kennedy」も気になる。これはiPhoneユーザー向けで、メモを取ったり考えごとを書きつけたりしたりしたときの状況を自動的に記録するアプリだ。

ここから得られたこと企業のコンテンツは、フォーマットを変えて生き残ることができる。

あなたにできることさまざまなアイデアをクライアントに紹介する。メディア企業にとって、チャンスはニュースフィードとなりそうなものに加わることにある。それがブランディングの貴重な機会だからだ。こうした製品にコンテンツを提供することで、売り上げを生み出せるかもしれない。

⑤メディア業界内の他のニッチに目を向け、そこにある最高のアイデアを採用する

教育機関向けの電子書籍パブリッシング業界は、基礎的な電子書籍を超えてはるかにエキサイティングで機能性に富んだ電子書籍の領域へと進むなかで、急激な変化を迎えている。業界がこれから取り組むべきテーマには次のようなものがある。

  • 双方向性
  • ソーシャルネットワークでつながった集団
  • 適応型の電子書籍

双方向性

電子書籍向けのインタラクティブ・コンポーネントを作っている会社はたくさんある。ウェールズにあるBookryもその1つだ。同社は、電子書籍のユーザーがデータテーブルを自在に操作できるようにするウィジェット作りを専門にしている。このウィジェットがあれば、ユーザーは正の相関係数がどう見えるか、データが変化した場合にグラフがどう変化するかを見ることができる。

データを自由に操作できることで、ユーザーが素材そのものを考える機会が生まれる。一番わかりやすい用途は教育用リソースを改善することだが、どんなメディア企業ももっと幅広い応用ができるはずだ。

ソーシャルネットワークでつながった集団

この背景には、「電子書籍のパブリッシャーは、教材に対するコメントや教材との双方向のやり取りを奨励しようとしている」という考え方がある。

すでに何らかの形でソーシャルな共有を提供するメディア企業は多いが、そこから一歩踏み出し、コメントやメモ、質問事項をすべてクラウドに保存して、1か所にまとめる製品を開発しているところもある。これにより、ユーザーは自分が何に反応したかがわかるようになるだけでなく、教師が生徒の反応の質や量に応じて成績を評価するのにも役立つ。

ユーザーにとっては、すべてのコメントややり取りをそれぞれのサイトに行かなくても1つの場所で追跡できるので、大変有益だ。

適応型の技術

マグロウヒルは昨年、「スマートブック」と呼ばれるものを世に出した。スマートブックは、読者が教材をどれだけ理解したかを評価し、テーマに関する知識の度合いに基づいて内容を調整するように設計されている。

また、ニューヨークに本拠を置くKnewtonは、適応技術を専門とし、教育関係のパブリッシャーに読書体験をパーソナライズする機会を提供している。生徒の試験の合格率への影響は非常に大きく、ユーザーの理解度に応じてコンテンツを調整することで記憶力が上がるという考え方の正しさを裏付ける結果が出ている。

幅広い年齢層にまたがる大勢のオーディエンスを対象に作品を提供したいメディア企業やコンテンツ制作サイトにとって、こうした製品開発は興味深いものかもしれない。

ちなみにここで紹介したものは、1月13日~15日にニューヨークで開催されたDigital Book World Conferenceで紹介された内容からだ。電子書籍出版の分野におけるいくつかの製品開発のうちで最高レベルのものだけをピックアップして紹介した。

ここから得られたこと関連業界での製品開発を利用して、クライアントを刺激する。ここで取り上げた電子書籍出版の例のように、業界のリーダーたちは、新しくてエキサイティングで、没入できるタイプの電子書籍という方向へ進んでおり、こうした発想を顧客のコンテンツに合わせて調整する。

あなたにできること専門家としてのキュレーション技術を活用する。時間を惜しまず業界のトレンドを幅広く理解すれば、最適なアイデアを的確に拾い出し、こういうチャンスがあるとクライアントに提案できる。業界の発展を担おうという意気込みを持つなら、クライアントの時間と知恵を節約し、あなたの影響範囲も拡大する。

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