成功と失敗を分けるSEMの見極め力

第7回 グーグルとヤフーを、じっくり比較 ~違いから逆に見えてくる“SEOの一般法則”

SEMの見極め力タイトル

第7回 グーグルとヤフーを、じっくり比較 ~違いから逆に見えてくる“SEOの一般法則”

小林 範子(株式会社セプテーニ)

多くの企業が取り組み出したSEM(検索エンジンマーケティング)は、発展途上の分野でもあるため、確固としたセオリーが存在しない。SEMを行う上で担当者が直面するさまざまな判断・選択について、その見極めのポイントを専門家がアドバイスしていく。

代表的な3つの質問とその回答を
グーグルとヤフーで徹底比較

SEOについて“ブラックボックスでよくわからない”とか“検索エンジンとのいたちごっこ”という印象を持っている人が多いが、実際には、検索エンジンのサポートページにはSEOの基本的な方法が掲載されている。検索エンジンは、ユーザーのニーズにあった優良なサイトをしっかりと把握し、適切に検索結果に反映することが使命であるから、ウェブサイトの製作者にも適切なSEOを実施してもらいたいのである。せっかく優良なサイトであっても、ロボットがその良さを認識できないために上位表示されないのであれば、それは両者にとって、とても残念なことである。

せっかくの優良なサイトであっても、ロボットがその良さを認識できないために上位表示されないのであれば、それは両者にとって残念なことである。

というわけで今回は、グーグルとヤフーのサイト管理者向けヘルプに書かれている情報を確認しつつ、よくある代表的なSEOの質問について解答してみたい。

質問1:自動的に生成される動的なページは、
検索エンジンのデータベースに登録されるのか?

グーグル ウェブマスター向けヘルプ センターより

Google は .aspページ、.phpページ、URLに疑問符を含むページなど、動的なページも登録します。ただし、クロールの際に、問題が生じ登録されない場合があります。動的に作成されたページが登録されていないと考えられる場合は、これらのページの静的なバージョンも作成することをお勧めします。

動的なページ(URLに"?"が含まれているページなど)を使用する場合、検索エンジンのスパイダーによっては、静的なページと同じようにはクロールされない場合があることを考慮する。パラメータを短くしたり、数を少なくすると、クローラで見つけやすくなります。

ウェブマスター向けのガイドラインの「デザインおよびコンテンツに関するガイドライン」
ヤフー サイト管理者向けヘルプより

検索エンジン用ロボットがページを探すときにたどるのは、主に静的リンクです。ASP、shtml、PHPなど自動的に生成されるURLは登録されない可能性があります。データベースに登録されるためには、動的に生成されたリンクを利用しないことをおすすめします。

ヤフーは上記のように言っているが、実際には動的URLでもインデックスされているケースは多い。今どき“動的プログラムを使うな”というのはナンセンスだが、検索エンジンの性格上、どうしても複雑化されたURLへの対応が難しいのである。歩み寄りが必要なところである(図1)。

図1 静的なページと動的なページ
静的なページの場合、各ページは独立して存在しているが、いつでもアクセスできる。一方、動的なページの場合、リクエストに応じて初めてページが生成されるため、検索エンジンがインデックスできないページが発生する。

動的なページでインデックスされていないケースとしてよくあるのが、以下のパターンである。

  1. パラメータが複数ついている複雑なURL

  2. ロボットがうまく巡回できない導線になっている(例1:リンク経路が複雑で、何度もクリックしないとたどり着けない場合、例2:FlashやJavaScriptによるリンクが多い場合)

1.については、「(1)自動生成のプログラムを改修する」「(2)静的なページも作成する(グーグルの指示通り)」「(3)URLを書き換えるモジュールを利用して静的URLに見せる」などの対処方法が考えられる。2.については、「(1)サイトマップを適切に設置する」「(2)パンくずリンクなどを利用した静的なリンクを設置する」といった対処方法が必要となる。

ようはロボットが巡回してデータベースに登録してくれればよいので、状況に応じて対策内容を選択するとよい。お金をかけてシステム改修を行う必要がない場合もあるので、まずは手軽にできる「サイトマップの適切な設置」から実施してみるとよいだろう。

質問2:サイトのURLを変更した場合に、これまで蓄積した
検索エンジンの評価を引き継くことができるのか?

グーグル ウェブマスター向けヘルプ センターより

検索結果の URL を手動で変更できないため、サイトの移転をスムーズに行うには、いくつかの手続きを行っていただく必要があります。

まずは、新しいサイトにユーザーをリダイレクトします。 HTTP 301の(永久的な)リダイレクトを使用して、以前のURLから新しいサイトにリダイレクトするように設定すると、Googleのクローラが新しいURLを認識します。

ヤフー サイト管理者向けヘルプより

[ウェブ検索]の検索結果に表示されているページを移転してURLが変わるときは、移転前のページに「HTTP 301」を設定し、移転後のページへ自動的に転送されるように設定(リダイレクト設定)してください。検索エンジン用ロボットは、データベース更新の際、移転前のページからのリンクをたどって新しいURLのページを登録します。

サーバーの移転やコンテンツの再構築にともなって、今まで利用していたドメインやURLを変更しなければならない場合がある。こうしたケースでは、古いURLにアクセスしてきたサイト訪問者を誘導するために、旧URLから新URLへと自動的に切り替えが行われるように設定しておくのが一般的である。これが「リダイレクト(転送)」だ。

ページを自動的に切り替える方法はいくつもあるのだが、SEOの観点から言うと、グーグルとヤフーの両者が述べているように「HTTPステータスコード301」を設定することが非常に重要である。この転送方法は、検索エンジンに対してサイトのURLが移転したことを通知するものであり、これが設定されていれば、検索エンジンは旧URLから新URLへと評価を引き継ぐ。そうすれば、スムーズに検索結果も切り替わるし、順位も維持されやすい。

「HTTPステータスコード302」や、メタリフレッシュを利用したページ移動でも、ユーザーにとっての見た目は変わらないが、検索エンジンはこれらを異なるものとして扱うので注意してほしい。これは非常に基本的なことであるが、意外なほどに多くのウェブサイトが誤った転送方法を使っている。

一方でヤフーでは、“異なるドメインにリダイレクトする場合は「HTTPステータスコード302」であってもリダイレクト先のURLが登録される”といった内容の説明も掲載されているが、実際のところ「HTTPステータスコード301」以外の方法でリダイレクトされているサイトは順位が不安定になる傾向が強い(図2)。

リダイレクトのパターンイメージ
あるドメインのトップページから別のドメインのトップページへ、永久に/一時的にリダイレクト
→リダイレクト先が登録される
あるドメインのトップページから、同一ドメインの下層ページへ、永久にリダイレクト
→リダイレクト元が登録される
あるドメインの下層ページから、同一ドメインの下層ページへ、永久にリダイレクト
→リダイレクト先が登録される
あるドメインの下層ページから、同一ドメインの下層ページへ、一時的にリダイレクト
→リダイレクト先が登録される
図2 リダイレクト元URLとリダイレクト先URLの階層が異なる場合
ヤフーにおけるリダイレクト元URLとリダイレクト先URLの階層が異なる場合の処理方法(「Yahoo! Inc.のリダイレクトに関するガイドライン」より)

質問3:Flashは使わないほうがいい?

グーグル ウェブマスター向けヘルプ センターより

Macromedia Flashを使用しているページはGoogleのインデックスに登録されます。 ただし、GoogleのクローラがFlashページをインデックスに登録する際、問題が生じる場合があります。Flashコンテンツが原因で、サイトに対してGoogleのクロール機能がうまく動作していないと思われる場合は、Lynxなどのテキスト ブラウザを使用してサイトを表示してください。Flashなどの機能が原因で、テキスト ブラウザにサイトのすべての内容が表示されない場合は、検索エンジンスパイダーがサイトをクロールするときに問題が生じる可能性があります。

検索エンジンは基本的に、サイト内のテキスト情報を読み取って、キーワードの配置や出現率、キーワード同士の関連性などを分析してサイトのテーマ性を認識している。しかしFlashで作成されたコンテンツは、テキスト情報ではないため、検索エンジンが内容を認識することが非常に難しい。Flashの中にいくら文章やリンクがあっても、検索エンジンはそれを読み取れないので、そこには何もないのと同然の扱いとなってしまう。そのためFlashを多用したサイトは、情報量の少ないサイトという認識になってしまう。またFlashの中のリンクもロボットが認識できないため、クローラビリティの面でも不利となる。

テキストブラウザでページを表示すると、テキスト情報のみが表示されるので、検索エンジンの認識するものに非常に近い状態を確認できる。

テキスト ブラウザでの表示を再現するには、グーグルの検索結果に表示されるキャッシュページから「テキストのみのキャッシュ ページ」を利用すればいい。一度チェックしてみるといいだろう(図3)。

Google検索結果の「キャッシュ」

テキストのみのキャッシュ ページ
図3 検索エンジンへの見え方は「テキストのみのキャッシュ ページ」でチェック
大部分をFlashで構成しているページであれば、びっくりするほど簡素なものが出てくることが多い。検索エンジンにはこのように見えていると考えると、Flashの使用は部分的に収めておいたほうがよいという判断になる。
ロボットが見たとき
人間の目で見たとき

人間の目で見たとき
ロボットが見たとき

ただし、決してFlashの利用自体を否定するものではなく、検索エンジンの導線も考慮してページ構成を考える必要があるということである。

見極めのポイント

  1. 動的なページの場合、URLが複雑化しないよう工夫し、ロボットのクローラビリティに考慮することで、検索エンジンはデータベースに登録してくれる可能性が高い。
  2. サイトのURLを変更した場合は、「HTTP 301」(Moved Permanently)を使ったリダイレクトがもっとも確実。検索エンジンは旧URLから新URLへと評価を引き継ぐ。それ以外の方法では順位が不安定になる傾向が強い。
  3. Flashは部分利用であればまったく問題ない。テキストブラウザで確認した際に、①しっかりとコンテンツ内容が認識できるか、②リンクをたどってサイト全体を巡回できるか、をチェックしてみよう。
用語集
ASP / Google / JavaScript / PHP / SEM / SEO / URL / インデックス / キャッシュ / クローラビリティ / クロール / スパイダー / リダイレクト / リンク / ロボット / 検索エンジン / 訪問者
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