DMPで内外のIDを統合し、ステージごとのマーケティングを実現した新日本製薬

DMPの実践で見えてきた“気付き”と“課題”とは
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広告配信を行う際に、広告事業者が言うデモグラフィックデータだけを頼りにしていないだろうか。どんなユーザーが自社サイトを訪問し、商品を購入しているのか、それが把握できればもっと効果的な広告配信が行えるはずだ。2013年夏、新日本製薬は、従来行っていたサイト内分析や広告分析に加えて、DMP(Data Management Platform)により内外のIDを統合し、より高度なデータ分析への取り組みを開始した。DMP導入により見えてきたさまざまな“気付き”と“課題”とは?

外部データと内部データを同一IDで統合

新日本製薬株式会社
ダイレクトマーケティング事業本部
EC戦略課
マネージャー 大木順一氏

新日本製薬は、「ラフィネシリーズ」などの化粧品をはじめ、ダイエット食品や健康食品、医薬品といった多様な商品によって顧客の“美と健康をサポートする”製薬会社である。

同社のデジタルマーケティングに対する意識は高く、以前からWeb解析ツールの「Adobe Analytics」を利用したサイト内分析や広告分析、コンテンツ最適化ツールの「Adobe Target」によるA/Bテストなどを行って、サイトや広告配信の最適化に取り組んできた。そんな新日本製薬が2013年夏、この取り組みをさらに進めようと導入したのが「プライベートDMP(Data Management Platform)」である

新日本製薬株式会社 ダイレクトマーケティング事業本部 EC戦略課 マネージャーの大木順一氏は、ソフトバンク・テクノロジーのユーザー会に登壇し、「Adobe Analytics、Adobe Target 活用事例~分析×施策×DMPの組み合わせから高度なリマーケティング実現を目指す~」と題して、実際に同社がDMPを導入した効果について語った。

DMP導入を決定した理由について大木氏は、「DMPではサイトの来訪者にIDを付与し、そこに属性データや嗜好性データといった広告配信先のデモグラフィックデータと自社の顧客・販売データなどを紐付けることができると聞いた。それを利用すれば、まだ購入をしていない来訪者を可視化でき、来訪者のセグメントを多角的に扱えるのではないかと気づいた」と説明する。

イメージ/外部データ/属性データ/嗜好性データ/自社データ/アクセス分析データ/購買データ/広告分析データ/アンケートデータ/属性データ/各データをDMPで統合(同一ID)/データをセグメント クラスタ化する
新日本製薬の「プライベートDMP」の仕組み

DMPのイメージはこうだ。まず外部データとして、DMP(Data Management Platform)の持つ属性や嗜好性データなどを取り込む。また、自社データとして、アクセス分析、広告分析、会員属性、購買情報、アンケートなどを取り込む。これら複数のデモグラフィックデータ(性別、所得、職業などの属性データ)を同一IDで管理できるのがポイントだ。あるユーザーが、どのような属性でどのような嗜好を持っているか、自社サイト内でどう行動したか、どのようにして購入に至ったかといった情報すべてをひとつのIDに紐付けることにより、自社サイトへの来訪者を可視化することができるのだ。

  • どのような属性を持つ人が来訪するのか、しないのか
  • どのような属性を持つ人が顧客になるのか、ならないのか

これらが明らかになると、“顧客になりそうな人”の属性がわかる。そこから、顧客になりそうなユーザーをたくさん持っている広告もわかるようになるのだ。

広告を配信する際には、IDごとのユーザーをセグメント分けし、クラスター化して配信することで、広告配信の最適化や効率化を実現できるというわけだ。

さまざまなデータの組み合わせで広告を評価

大木氏は、DMPによる分析の結果、来訪者が見えてきた実例として、同社のオールインワン美容液ジェル「パーフェクトワン」を挙げた。

「パーフェクトワン」は30代からの年齢肌に悩む女性向けの化粧品である。そのため従来は、「40代以上」というデモグラフィックデータを持つ広告に出稿していた。しかしDMPを導入し、その広告からの来訪者の属性データを見ると、6割から7割が「パーフェクトワン」のターゲット外である男性だった。そこからの来訪者のコンバージョンレートが上がっていないこともあり、その広告への広告出稿は取りやめたのだという。DMPを利用することで、DSP事業者や広告代理店の言うデモグラフィックデータだけを頼りにするのではなく、自社の持つデータと組み合わせ、配信先を効果的にフィルタリングできたのである

また、自社のデータと組み合わせることで、その来訪者が新規来訪者なのか再来訪者(リピーター)なのかが把握できる。「新規来訪者が多い広告」、「再来訪者が多い広告」、それぞれに適した最適化ができるというわけだ。

来訪者を可視化したことで、それまで考えていたこととのさまざまなギャップが見えてきた。“40代女性に向けて広告配信していたつもりが、その広告配信先には男性が多かった”というのもそのひとつだ。さらに詳しく分析していくと、男性であっても、化粧品を女性へのプレゼント用に購入するケースや、家庭内でパソコンを共有しているケースなども見えてきた(大木氏)

配信先のデータだけでなく、自社や外部のデータを組み合わせることで、その広告からの来訪者を可視化できるようになった点が、DMP導入の大きな効果なのだ。

顧客獲得数が多い広告が良い広告とは限らない

同社がDMPの導入によりもうひとつ気づいたことは、「顧客獲得数が多い広告が良い広告とは限らない」ことだ。新日本製薬は前述した通り、特定のユーザー向けに特化した製品を多く取り扱っている。そのため、別の年代の人が使った場合は満足感が得られない可能性がある。ある広告でサイト来訪者や購入者をたくさん得られたとしても、もしそのユーザーがターゲット層と異なっていて、満足感が得られなかったとしたら、最終的にユーザーは離反してしまう。一時的に売り上げが上がったとしても、リピーターが期待できないとすれば、良い広告とは言えない。特定のユーザー向けに広告を配信する場合、配信先のデータだけに頼らず、自社と外部のデータを組み合わせることで最適なクラスターを作り、配信先を限定する作業が必要となるのだ。

ただし、ターゲットを絞り込むことだけが最適化につながるわけではない。例えば、「男性から女性へのプレゼント需要」といった新たなニーズを発見し、配信先を広げた例もある。いずれも、可視化することによって、広告配信先の善し悪しについてこれまでとは異なる結果が出るという好例だ。

日常の行動の中での接触機会を捉える

また、嗜好性が同一ID上で紐付けられて、ユーザーのライフスタイルが把握できることから新しい広告出稿先を発見した例もある

大木氏は「サイト来訪者や顧客がどのような嗜好性を持つかをDMPで分析したところ、レシピ(グルメ)、ペット(犬・猫)、育児関連といったキーワードが多かった」と語る。この結果を受けた同社は、新たな広告出稿先として、それらに関連する広告を追加した。特にレシピ系はそれまでは気付いていなかった分野であり、新たに出稿したことで、目標とするCPO(Cost Per Order)の半分以下で顧客を獲得するという成果を出している。

また、小物・着物といったファッション系の配信先も増やした。化粧品を探している人が、常に化粧品のサイトだけを閲覧しているとは限らない。日常生活の行動の中で、接触機会の傾向を導き出し、新しい出稿先を見つけることができたのは大きな成果である。

新たな出稿先を試した場合も、それが成功だったか失敗だったかをデータで明らかにできる。例えば、配信先からは「女性がターゲット」と説明を受けていた広告が、DMPで検証すると実際には男性の比率が高かった。そのため、そこへの出稿は打ち切ったというケースもある。

ユーザーのステージごとに適したマーケティングを行える

ユーザーには、「見込み顧客(新規来訪、再来訪)」「優良顧客(頻繁に購入)」「ケア顧客(購入から日数が経過)」といったいくつかのステージがある。DMPを利用すると、ステージが変わっても、個々のユーザーをIDで識別し、同一ユーザーとして認識できるようになる。新日本製薬は今後、IDベースの行動リターゲティングを行うなど、顧客がどのステージにいるかを認識して、ステージごとに適したマーケティングを行う取り組みを目指していく。

また、既存顧客に対するコミュニケーションは、これまで主にメールマガジンやダイレクトメールで行っていたが、DMPにより再来訪者を可視化したことで、既存顧客に向けて再来訪を促すようなネット広告の配信も可能になるだろう。デジタル広告業界では、広告配信は「枠」から「人」へ変化してきていると言われているが、新日本製薬では、DMPの導入でそれを実現できつつあるという。

一方で大木氏は、DMPに取り組んで見えてきた課題についても説明した。

実行して見えてきた課題/IDの一致率の問題/一致率(母数)が少ない部分は傾向値を掴む/急速拡大しているスマホ(アプリ)の領域に関する問題/クッキー主体の限界。でも早急に整備する必要有り/自社システム(基幹、コマース)との連携/取得/連携するデータ量と箇所の整理と改修/社内やパートナー企業との体制/運用/分析の整理(管理コードやフォーマット)
DMPを実行して見えてきた課題

まず挙げたのはIDの一致率の問題だ。同一IDに紐付け可能な外部事業者のデータがまだ少ないのである。これは、今後事業者側のデータ量が増えていくことを期待するしかない。新日本製薬では現状、母数が少ない場合は傾向値をつかんで仮説検証をするようにしているという。

また、データの紐付けをCookieに頼っているという問題もある。ブラウザーによる閲覧についてはCookieによるデータの紐付けが可能だが、スマートフォンアプリによるアクセスの場合はそれができない。「技術的な解決方法が出てくるよう期待している」(大木氏)という。

その他、DMPと基幹系やEコマースなど自社システムとの連携時にどのようなデータを取得するかの検討を、部署をまたいで日常的に行うことが必要であり、それなりの手間がかかることに留意しなければならない。自社で持つべきマーケティングの機能と、ソフトバンク・テクノロジーのようなデータ分析を得意とする第三者が持つ機能を分業する場合の管理体系なども検討する必要がある。

これまで、広告代理店にほぼ丸投げで広告予算の配分を行ってきたという企業も多いだろう。その体制に変化が起きている。大木氏は「新日本製薬ではさらにOne to Oneマーケティングの成果を上げていきたい」と意気込みを述べて講演を締めた。

セミナー風景

新日本製薬オンラインショップ
http://www.shinnihonseiyaku.co.jp/

ソフトバンク・テクノロジー
https://www.softbanktech.jp/

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