アマゾンに対抗できる? セブン・アスクル連合のEC協業策――物流・集客スキームは? | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2017年8月17日(木) 07:00
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「欲しい商品が欲しい時間に100%購入できる新しいサービスの形を作りたい」。セブン&アイ・ホールディングス(7&i)は11月をメドに新たに生鮮品をメインとしたEC事業をスタートする。すでに展開中だが伸び悩むネットスーパー事業の“弱点”を意識した商品展開やサービス設計とし生鮮品ECの拡大の1つの起爆剤としたい考えのようだ。流通大手の7&iが期待を寄せる新ECの成功のための肝となるのが同事業のパートナーとして協働するアスクルの存在だ。同事業の勝算や行方は。また協働に合意した両社の思惑とは。

「LOHACO」側での配送代行とショッピングカートの開放が提携のカギ

7&iは11月末をメドに30~40代の有職女性や子育て中の女性などをメインターゲットとして、野菜や精肉、鮮魚などの生鮮品のほか、同社が展開中のプライベートブランド(PB)食品である「セブンプレミアム」といった冷凍食品や惣菜などを販売する新たな生鮮品EC事業「IYフレッシュ(仮称)」をスタートする。

アマゾンに対抗できる? セブン・アスクル連合のEC協業策――物流・集客スキームは? セブン&アイとアスクルはビジネスモデルが異なり経営資源が補完関係にある
セブン&アイとアスクルはビジネスモデルが異なり経営資源が補完関係にある(画像は編集部がセブン&アイHDの決算資料からキャプチャし追加)

これまでも傘下のイトーヨーカ堂が展開する「イトーヨーカドーのネットスーパー」で生鮮品のECを展開してきたが、各店舗から商品をピッキングして配送する仕組みが主流で、例えば雨が降った日には注文が増えるが店舗ごとに庸車しているため、そうした場合には車が足りなくなり、顧客が希望する時間帯に配送ができないなど販売機会の損失を起こすこともあったようだ。

また、ネットスーパーでは実店舗で購入できる商品をすべてネットで購入できるということをコンセプトに約3万SKUを販売しているが、「商品情報は日々、変わる。生産者を明記した野菜の場合、一週間で生産者が変わることもあるが都度、登録情報を変えなければならず、非常にハンドリングが難しい。販売商品を広げ過ぎた結果、お客様がサイトに訪問され、購入しようとした際に在庫がなかったなどの失望感を感じさせてしまったこともあった」(井阪隆一社長)という。こうした弱点がネックとなり、ネットスーパー事業の売上自体は伸びてはいるものの、期待通りの成長には程遠い状態となっていたようだ。

アマゾンに対抗できる? セブン・アスクル連合のEC協業策――物流・集客スキームは? イトーヨーカドーのネットスーパーとLOHACOの取扱商品について
イトーヨーカドーのネットスーパーとLOHACOの取扱商品について(画像は編集部がセブン&アイHDの決算資料からキャプチャし追加)

7&iでは生鮮品ECの拡大のために既存のネットスーパーが抱えていた弱点を踏まえ、品ぞろえやサービス設計を一新することした。しかも、そのためにこれまで頑なに守ってきた“自前”での展開を捨て、外のパートナーに協力を求めることで課題の打破を図ることにした。パートナーとはアスクルだ。

新たに立ち上げる「IYフレッシュ」のコンセプトは「確実にお届け可能な新しい食のサービス」だという。商品はイトーヨーカ堂の実店舗で販売するすべての生鮮品ではなく、加工肉やカット野菜、魚の切り身など「検討中だがネットスーパーに比べて3分の1程度(約1万点)」(井坂社長)とニーズの高い売れ筋に絞り込むことで欠品のないよう十分な在庫を持ちつつ、配送については注文日翌日以降、1時間刻みで配送時間を指定できるようにする

また、「働く女性の悩み事である日々の献立を考えるお手伝いができれば」(同)とし、当該料理に必要な食材一式をセットにした簡便キットやPBの冷凍食品や総菜などを活用して作ることができる料理のレシピを動画を用いて提案するなどの試みも行っていく。

アマゾンに対抗できる? セブン・アスクル連合のEC協業策――物流・集客スキームは? 「IYフレッシュ」の取扱商品イメージ
「IYフレッシュ」の取扱商品イメージ(画像は編集部がセブン&アイHDの決算資料からキャプチャし追加)

これらを展開するにあたって非常に重要となるのが特に配送面だ。商品についてはこれまで7&iが培ってきたMD力を活用すればどうにでもなることだろうが、配送はそうはいかない。

時間とコストを投入すればそれも可能だろうが「自前にこだわって時間を掛けて作っていたのではお客様は離れてしまう。スピードが大事」(同)とし、日用品の通販サイト「LOHACO(ロハコ)」を運営し、また、都内や大阪など一部地域限定ながら自社配送で1時間刻みの時間指定が可能な配送サービス「ハッピー・オン・タイム」を展開し、ECサイトの運営ノウハウを持ち、EC配送力にも長けたアスクルと業務提携を結ぶことした。

「IYフレッシュ」の仕組みはこうだ。アスクルが運営する「ロハコ」が昨秋から実施している他の事業者が出店して商品を販売できる「マーケットプレイス」に7&iが出店する形となる。

ただし、今回のケースは7&iの井阪社長とアスクルの岩田社長によるトップ同士の話し合いによる肝煎りの試みであることから“特別対応”となっており、他の出店者にはいまだ提供しておらず、当面はその予定もない模様の「出店者向けフルフィルメントサービス」を初提供している。それが「『ハッピー・オン・タイム』による配送代行」と「ショッピングカートの開放」だ。

アスクルはネット販売で1つの課題となっている購入商品の受け取りのための“待つ時間”を軽減し、利便性向上を図る狙いから、昨夏から同社の物流子会社、アスクルロジストの配送員などが直接、配達を担い、実施する「ハッピー・オン・タイム」を展開。

顧客は専用アプリで午前6時~深夜12時まで1時間単位で配送時間を指定でき、かつ配送日の前日(当日配送の場合は当日昼)までに30分単位で配送時刻をアプリ上のプッシュ通知で顧客に知らせ、また、配送10分前にも再度通知するというきめ細かい配送サービスを展開しているが、これまでは同社が在庫を持つ直販商品のみを配送してきた。

この配送サービスを初めて、他社に開放し「IYフレッシュ」の商品の配送を代行する。「ハッピー・オン・タイム」の配送員がイトーヨーカ堂が東京・荒川区内に構えるネットスーパー専用店舗「ネットスーパー西日暮里店」に受注商品を取りに行き、保冷剤などを使いながら鮮度を保ちつつ、他の同社の直販商品と一緒に配送する流れとなるようだ。

なお、こうしたスキームは11月の開始時点の構想であり、今後はアスクルの配送拠点内に温度管理の仕組みを入れることなども検討している模様で、異なる様々なスキームも検討・模索しているようだ。

配送代行ほか、「ショッピングカート」についても特別な対応を行っている。通常、「ロハコ」に出店する事業者の商品はアスクルの直販商品とは別のショッピングカートとなり、もちろん、配送も別となる。「ロハコ」上で販売する商品であっても販売主が異なるためだ。しかし、今回の「IYフレッシュ」ではショッピングカートはアスクル直販商品と別ではなく、共有している

それゆえ、「ロハコ」の顧客にとっては、よりスムーズに買い物が可能になるほか、日々、使う日用品が多いアスクル直販商品と注文額が合算されるため、送料が無料となる「送料無料ライン」(※現状、「ハッピー・オン・タイム」では1回注文3000円以上で送料・手数料無料=1時間枠指定配送の場合)を越えやすくなり、そのために注文時のハードルが下がるという利点も出てくるようだ。

また、「IYフレッシュ」の大きな“売り”とも言える調理手順を示したレシピ動画の制作などを含めたサイトの運営も出店者である7&iではなく「動画制作も含め、サイト全般は当社が担当する」(アスクル)という。なお、レシピ動画の制作料金については制作料およびそもそも制作料を徴収するかどかについても現状、未定だとしている。

7&iが自前主義を捨て、これまでの弱点を克服できるノウハウや仕組みを有するアスクルと連携することで実現させる「IYフレッシュ」はまず今年11月末から都内の新宿区と文京区の2区に絞り、テスト展開を始める。その結果を踏まえて、来年5月ころをメドに東京23区の西部および北部に拡大。来年中には23区全域、2020年には首都圏に拡大させたい考えだ。

アマゾンに対抗できる? セブン・アスクル連合のEC協業策――物流・集客スキームは? 「IYフレッシュ」の展開計画
「IYフレッシュ」の展開計画(画像は編集部がセブン&アイHDの決算資料からキャプチャし追加)

お互いが持っている“強み”はかぶらない補完し合える関係だ。アスクルは物流インフラ、システムなど素晴らしい資産を持ち一方、私どもは長年培ってきたメーカーとのチームMD、食の安心安全が担保できるサプライチェーンがある。これをしっかり組み合わせてお客様に安心で便利で美味しい食品をお届けしたいという2社の熱い想いがある。

まずはスモールスタートだが、だんだんと大きくしていきながら、『IYフレッシュ』はもちろん、ECサイトやEC物流の共同運営、場合によってはアスクルさんのBtoBビジネスの中に私どももご一緒できるようなことが描けたらという想いもある」(井阪社長)とし新たな生鮮品ECへの期待にとどまらず、アスクルとのより踏む込んだ協業の可能性についても言及した。

実際、生鮮EC以外の協業についても、「IYフレッシュ」が稼働する11月末と同じタイミングで7&iが運営するECサイト「オムニ7」と「ロハコ」で相互送客を開始「オムニ7」「ロハコ」の両サイトの商品検索結果に互いの商品を掲載する形だ。例えば「ロハコ」の検索結果に「オムニ7」の商品が表示され、顧客が当該商品ページをクリックすると「オムニ7」での当該商品の詳細ページが立ち上がり、「オムニ7」での商品購入に誘導するもの。

「現時点では、相互のサイトに表示させる対象商品に関する詳細は未定」(アスクル)としており、詳細は不明だが、自社サイトで品ぞろえが薄いジャンルの商品を互いに掲載するなどしていく模様だ。

生鮮品ECや相互送客などをきっかけに日本を代表するGMS大手である7&iとECや物流に高いノウハウを持つアスクルが強力にタッグを組むことになれば、まさに現在、EC市場を席巻するECの巨人、アマゾンに対抗し、凌駕し得る存在になれる可能性を秘めている。

ただし、客観的にみれば少なくとも現時点では両社のトップの「強い言葉」とは裏腹に両者間の関係は業務委託の域を出ていない。7&iにとっては自社にはない優れた配送サービスやECノウハウを持つアスクルに新規事業の一部の業務を委託。一方、アスクルにとってはもちろん今回の連携は競合であるアマゾンが強化している食品販売に対抗するため、自前で展開するよりも迅速に取扱いが可能となるという戦略的な面も当然あり、それゆえ様々な“特別待遇”をとっているものの、「ロハコ」の「マーケットプレイス」に出店している大口で重要な存在ではあるが1出店者に過ぎない。

相互送客も言ってみれば互いに検索連動型広告を貼りあう程度の単純な連携であろう。それが良い悪いということではなく、すべては11月から始まる予定の事業の結果次第だということだろう。

仮にECサイトや物流の共同開発や共同運営、アスクルの本丸の事業であるBtoB事業でも連携を進めるということになれば、アスクルの筆頭株主であるヤフーとの関係や採用する共通ポイントの違いなどなど乗り換えなければならない問題は多いはず。

「IYフレッシュ」が一定の成果を見せ、そして諸問題を解決してでもなお、強固なタッグを結ぶことに両社が意味を見いだせるか。「IYフレッシュ」の進捗も含めて両社の連携がどの程度の深度を今後、見せていくのか注視したい。

「互いがベストパートナー」

セブン&アイ・ホールディングスとアスクルが業務提携を結び、生鮮品ECや互いのECサイトの相互送客に乗り出す。7&iの井阪社長、アスクルの岩田社長に今回の提携の狙いや内容、今後の方向性について聞いた。(7月6日開催の記者会見での本紙を含む報道陣との一問一答を要約・抜粋)

アマゾンに対抗できる? セブン・アスクル連合のEC協業策――物流・集客スキームは? セブン&アイHDの井阪隆一社長(写真右)とアスクルの岩田彰一郎社長
セブン&アイHDの井阪隆一社長(写真右)とアスクルの岩田彰一郎社長

――両社が提携したきっかけは。

井阪「アスクルの物流倉庫の火災が発生した際に、会合や会食で何度もご一緒した岩田社長にお見舞いさせて頂いたが、岩田社長からお礼に伺いたいという申し出があり、そこで何か互いにできることはないかとお話させて頂くようになったのがきっかけだ。5月12日の3度目のミーティングで『一緒にやるならどうせなら、今までない商品・サービスをお届けできたらいいね』ということで、当社が得意とする食品でちょうど話題となっていた食材キットのようなものを作ってお届けできたらどうかという話になり、品質管理の問題もあり、新しい食材キットを作るには数カ月かかるという話に対して、岩田社長から『セブンプレミアム』といったPB商品を組み合わせてメニューを提案できたら、働く女性の悩みである『日々のメニューを考える』ということのお手伝いができるのではないかということになった。その後すぐアスクルさんは主婦の方へのグループインタビューやPBを使ったメニューのアイデアなどを盛り込んだレシピ動画を作って見せて頂いた。私はこのスピード感に感銘を受けて一緒にやりましょうということになり、前のめりになってお話を進めてきた」

――例えばECで言えば楽天などモール運営者もいるが、他社と連携しようとは考えなかったのか。

井阪「一番シナジーが発揮できるところはどこかと考えるとアスクルだった。機能や商品がオーバーラップせず、お互いの良さを補完し合えるこういう点でベストパートナーだと考えた」

――7&iではこれまで単独でオムニチャネル戦略を進めてきたわけだが、何が弱かったのか。また今回の提携でそれをどう克服できるのか。

井阪「今までどちらかというと、Eコマースサイトを充実させる方向だったが、ふと立ち止まって考えると、私どもの強みはやはり2200万人のお客様のリアルでの買い物だと気がついた。そういう意味でもう一度、オムニチャネルの再定義をしたいと考えていたところ、今回の話を頂き、まず『食』が、私どもの強みをダイレクトにお客様に感じて頂ける点ではないかと考えた。また、スピードも大事だ。自前にこだわって時間をかけていてはお客様は離れてしまうという思いがあり提携させて頂いた

――倉庫の火災の影響で物流は立て直しの最中だが、「IYフレッシュ」で増す物量に対応できるのか。

岩田「現在はまさに物流の立て直しの最中だが、9月には回復する。最初はスモールスタートで流通をコントロールしながらPDCAを回しノウハウを蓄積してその後はできれば一気に拡大していきたい」

――「IYフレッシュ」の売上目標は。

井阪「実は設定していない。それよりもまず我々がやってきたネットスーパーの不便点を徹底的に解決したモデルを岩田さんと一緒に作りたい」

――「IYフュレッシュ」の送料は。

井阪「検討の最中だが、現在のネットスーパーよりも少しお手軽にしたいと思っている」

――今後の提携の方向性は。

井阪「色々な広がりや拡張性があると思っている。最初はBtoCだがBtoBのビジネスについても連携の可能性があると思っている。例えば我々のセブンミールサービスの弁当をオフィスに販売していくなどだ。様々なアイデアがあるので岩田社長とキャッチボールをしながら膨らませていきたい。領域を狭めず、可能性をすべて考えていきたい」

――現在、ECはアマゾンが席巻している。今回の提携は対アマゾンの日本連合と言えるが、意気込みは。

岩田「アマゾンは本当に素晴らしい企業だが、世の中にアマゾンしかないという状況は生活者にとってよくない。きちんとした選択肢をセブンさんと力を合わせて提供していきたい」

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