宅配便の値上げ問題、通販・EC企業はどう対応する? 【各社のコスト吸収策】 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2017年6月12日(月) 09:00
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宅配便事業者から運賃の引き上げ要請を受け通販企業が対応に追われている。ヤマト運輸が4月末に大口顧客1000社に対して値上げと荷受量の抑制などを要請する交渉に着手していくことを明らかにしたほか、佐川急便をはじめとした他の宅配便事業者も値上げの動きを強めている。

ドライバー不足が深刻化する輸送業界全般で労働環境の改善を進める動きが一層強まると見られ、運賃引き上げを飲まざるを得ない状況。通販企業は顧客へのコスト転嫁などの対応策を迫られることになるが、通販企業の動きについて通販新聞社が5月末に行ったアンケート調査結果などから見る。

ヤマト以外も値上げ要請、対応策は?

ヤマト運輸が4月末に運賃引き上げや荷受量の抑制などを内容とした「2017年度『デリバリー事業構造改革』」を発表した後、ニッセンは5月24日から5000円未満の購入の場合390円の運賃を徴収していたのを490円へと100円増額した。また別の大手総合通販企業も運賃の顧客負担額を増やす意向を示している。

ヤマト運輸は4月28日に行った記者会見で大口顧客約100社との値上げや総量コントロールの着手したことを明らかにした(ヤマトホールディングスの山内雅喜社長(写真左)とヤマト運輸の長尾裕社長)
ヤマト運輸は4月28日に行った記者会見で大口顧客約100社との値上げや総量コントロールの着手したことを明らかにした(ヤマトホールディングスの山内雅喜社長(写真左)とヤマト運輸の長尾裕社長)

大手通販企業のこうした一連の動きは他の通販企業にも波及するものと考えられ、顧客負担部分を増額し今回の宅配便運賃値上げに対応していく企業が増えることが予想できる。

通販新聞社が5月末に通販企業約30社へ送付し行ったアンケート調査の結果では、値上げ要請などを受けている企業が前回のアンケート調査時(3月中旬)より大幅に増えておりヤマト運輸以外の宅配便事業者も含めて各社が取引先との値上げ交渉を本格化し始めている状況が窺える。

ヤマト運輸から値上げ要請を受けた通販企業は運送コストの吸収を「値上げ幅が少ない場合は据え置き、大きい場合は(商品の)販売価格の見直し、送料無料のしきい値を変更」して対応する考えだ。佐川急便から要請を受けた通販企業は値上げ幅により判断することを前提として「企業内努力で吸収不可能と判断した場合は顧客への送料値上げも検討する」という。

宅配便2社のほかに日本郵便とも取引のある通販企業は「半分を顧客負担、残り半分を経営努力で吸収」する方向で検討を進めている。日本郵便へ配送を委託している別の通販企業からは「配送料無料サービスの廃止を検討する」との回答があった。

また佐川急便から値上げ要請を受けた別の通販企業はさまざまな対応策を検討しており「他の宅配便への変更や小サイズ配送などの併用、店舗受け取りや宅配ロッカーの活用」などを模索しているとし、宅配便3社すべてと取引のある通販企業の中にも同様の対応策を検討するというところがあった。

顧客転嫁や経営努力での吸収に関して、ヤマト運輸から値上げ要請を受けた通販企業の中には、定期購入の配送インターバルを長期化してコスト吸収することを検討するとの回答もあった。仮に2カ月に1回の頻度だったものを3カ月に1回、あるいは3カ月に1回を6カ月に1回の頻度に削減することでコスト吸収していくような取り組みとなるようで、同様の施策は他社でも実施するケースが出てきそうだ。

一方で値上げ要請がないとする企業も見受けられる。ヤマト運輸、佐川急便のそれぞれと取引がある通販企業からは、いずれも値上げ要請はないとの回答があった。ヤマト運輸に関しては採算面や荷物量のボリュームを検証してリストアップした約1000社を対象に交渉を着手している状況で、採算面で問題ないとヤマトが判断した大口顧客への値上げ要請はないと見られる。ただし、交渉は順次進めていくことと見られ、今後に値上げ対応する企業が多くなってくると見られる。

今回、宅配便の値上げは一般報道で数多く取り上げられたことから、一般消費者が事態を認識し一定の値上げに理解を示しているとも言える。これまで無料配送などを競争軸としたネット販売企業の攻勢が、今後の通販業界にどう影響をもたらすかにも関心が集まりそうだ。

ヤマト運輸は1000社との交渉を9月中に完了する考え。既に配送料金の改定を行っている通販企業も徐々に出始めてきたが、10月以降に多くの企業で配送料金の見直しを実施していくことになるだろう。

時間帯の変更や当日配送休止も

一方、各種の配送サービスの見直しの動きも始まっている。ヤマト運輸は6月19日から配達時間帯の指定枠を変更し、「正午~午後2時」の時間帯を廃止するほか、午後8~9時の指定枠を「午後7~9時」の時間帯に変更する。

このヤマト運輸側の変更に先駆け、カタログハウスは4月17日発刊の通販カタログ「通販生活」の夏号から配送ルールを変更した。正午~午後2時までの時間帯指定配送を受け付けないようにした。

セブン&アイ・ホールディングスもグループ統合のオムニチャネルポータルサイト「オムニ7」の配送時間帯指定を変更。正午~午後2時の指定枠はイトーヨーカドーの通販で5月25日に廃止し、6月9日は他の4社の通販でも廃止する。また午後8~9時の時間帯は全ての通販で6月19日から午後7~9時の時間帯にする。

これまで時間帯指定が顧客サービスとして重要なサービスとの位置付けから内容変更には難色を見せる通販企業が比較的多かった。しかし、ここに来て一般消費者へ宅配便業界の人手不足問題についての認識が広まっていることもあり、今後は柔軟な姿勢を見せ始める通販企業も少なくない。

ある通販企業はアンケートで「配送サービスレベルの低下については一時的にやむを得ない」ことと回答し、顧客への説明をしっかりと行っていくことで対応していくという。一方で「顧客の解約リスクがある事象と捉えており、カスタマーサポートによる個別の顧客対応を行う」との通販企業もあり、時間帯指定やリードタイムなどのサービスレベル低下を依然懸念するところも存在している。

時間帯指定に加えヤマト運輸が長時間労働の要因ともする当日配送を展開してきた通販企業の中には同サービスを取り止める動きも出始めた。

アスクルは個人向け通販サイト「ロハコ」での当日配送を5月16日午後6時から休止した。ヤマト運輸の要請に応じたもので、再開のメドは立っていない。ただし、自社便により対象地域で当日配送も実施している小刻み時間指定配送サービス「ハッピー・オン・タイム」のエリア拡充を検討しているという。

同社のほか、アパレルのネット販売企業での当日配送中止の動きが目立つ。スタートトゥデイは6月12日からファッション通販サイト「ゾゾタウン」の即日配送サービスの内容を変更し、関東エリアで実施してきた当日配送を中止する。同社では今回の措置について「ヤマト運輸の配送時間の変更に伴って」(秘書広報部)と説明している。

同社の即日配送サービスは利用手数料350円(税込)で通常配送よりも早く届くというもので、関東・関西・中部・中四国の4エリアをサービス対象エリアとしている。当日配送はこのうち関東エリアでのみ対応してきたが、これまでは午前0時から午前8時59分までの注文は当日に商品を届けており、それ以外の時間帯の注文は翌日に届けていた。変更後は午前6時から午後7時59分までの注文については翌日に届ける。それ以外の時間帯は即日配送の受け付けを停止する。また、関東以外の3エリアでも受付を停止する時間帯や翌日配送に対応する時間帯を変更している。

6月12日からファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の即日配送サービスの内容を変更するスタートトゥデイの案内
6月12日からファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の即日配送サービスの内容を変更するスタートトゥデイの案内

アパレル通販事業などを手がけるクルーズも5月24日に運営するアパレル仮想モール「SHOPLIST(ショップリスト)」での当日配送サービスを廃止。同社は以前より、毎日午後1時までの注文で最短翌日に商品を届ける「スピード便」を展開。昨年4月からは東京、神奈川を対象に「スピード便」の対象商品であれば朝8時までの注文については最短で当日午後6時以降に届ける当日配送を開始していた。

今回の当日配送廃止の理由については「元々対象エリアも限定的で利用率も低かった。様々なユーザーのニーズに対応するための施策のひとつでもあったが、実益に伴っているようなレベルでもなかった」(同社)と説明。見直しの契機となったヤマト運輸の配送時間の変更については「交渉をして無理に続けるという状況でもなく、当日配送を止めても(今後のサービスレベルに)影響はないと言い切れるものだった」(同社)とした。

なお、従来からの最短翌日配送の「スピード便」については今後も継続する方針。
当日配送についてはヤマト運輸が最大の荷主と見られるアマゾンジャパンとの交渉を進めている模様。ただし、アマゾンは他の輸送事業者などへ当日配送の委託をシフトしているとの報道もあり、同社は今後とも当日配送を堅持していく公算が強いと見られる。

荷受量抑制への対応はこれから

ヤマト運輸は宅配便の総量コントロールを目的にした荷受量の抑制についても荷主側との交渉を進めている。今回の通販新聞社のアンケート調査結果では荷受量抑制に対して明確な考えを示す回答が少なく、これからの課題となると見られる。

ある通販企業はアンケートで「サービスレベルを担保するために必要なことと捉えている」とした上で、出荷量を可能な限り均一化することで波道を減らす出荷体制に取り組むことも検討するという。

ヤマト運輸は年末などのほか、仮想モール大手が行うセール時の荷物量が一時的に急増する際の対応にも苦心するとしている。それだけにセール時への荷受量の抑制で通販企業に協力を要請することもありそうだ。

総量コントロールでヤマト運輸は、17年度の宅配便の取扱個数について16年度(約18億6756万個)より8000万個程度(約4.3%)削減する考えだが、荷受量の抑制は今年度下半期から本格化すると見られる。市場拡大が続くネット販売市場にとって、その受け皿を用意することも早急に求められることになる可能性は高い。

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